
企業法務弁護士とは?年収や業務内容・なり方|就職・転職方法も

by LEGAL JOB BOARD 増田
転職エージェント
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こんにちは。弁護士の転職エージェント「リーガルジョブボード」の増田です。
本記事では、「企業法務弁護士」について解説します。具体的には、以下のような内容です。
- 企業法務弁護士の業務内容
- 年収
- なり方
- 企業内弁護士との違い
また、企業法務弁護士に就職・転職するための方法や条件にも触れますので、企業法務弁護士への就職・転職を考えている方は必見です。
転職してから「イメージと違った」と後悔しては遅いので、本記事で企業法務弁護士について理解を深めた上で、転職を検討しましょう。
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この記事の目次
企業法務弁護士の役割
まず、企業法務弁護士の役割について解説します。
民事事件や刑事事件を担当する一般的な弁護士に対し、企業法務弁護士は法律事務所に所属しながら「企業を相手とした法律業務」を担い、リーガルアドバイスや予防法務、また紛争対応などを行います。
顧問弁護士として企業からの相談を受けながら、法的観点からのアドバイザーとなり顧問料をいただくというモデルです。
企業内弁護士(インハウスローヤー)との違い
企業法務弁護士と混同しがちなのが「企業内弁護士(インハウスローヤー)」です。
企業内弁護士は「企業に所属して・社員として」、その企業の案件のみを処理します。
一方で、企業法務弁護士は「法律事務所に所属して・顧問弁護士として」、複数の企業と顧問契約を結び、業務を引き受けます。
企業法務弁護士はあくまで外部アドバイザーであり、企業内弁護士は内部の人間として事業や新規プロジェクトを法的観点から前進させていく役割です。
企業法務弁護士は基本、同時に複数の企業を担当しますが、企業内弁護士は所属する企業にのみアサインすることになります。他の企業の法的業務を引き受けることはありません。
また、業務や役割以外に、年収やワークライフバランス(残業)にも違いがあります。
企業法務弁護士は法律事務所に所属するので、「高年収でハードワーク」なケースが多いです。
一方、企業内弁護士は企業に属するので、「福利厚生が充実しており、ワークライフバランスも整っている」ことが特徴です。
どちらにもメリット・デメリットがあるので、あなたが実現したい働き方や待遇をもとにキャリアを選択しましょう。
企業法務弁護士の業務内容
では、企業法務弁護士の業務内容を具体的に解説します。
企業法務弁護士として就職・転職した場合、以下のような業務を担うことになります。
M&A
企業法務弁護士の業務の一つに「M&A」があります。
M&Aとは、企業の合併や買収のことです。株式譲渡や株式移転、合併などの様々なパターンがあり、企業の利益が発生する手段を選ぶ必要があります。
M&Aを行うにあたり、買収先の価値や経営状況などを調査することが企業法務弁護士のミッションです。
その他スケジュール管理、交渉項目の整備など、M&Aを無事成立させるためには専門知識が必要な多くの仕事があります。
知的財産
知的財産は、企業が独自に作り上げたモノ(アイディアや技術、サービスなど)を指します。
知的財産は他社や競合に奪われないよう、守らなければなりません。そのために必要となるのが知的財産に関する業務です。
特許権・商標権・著作権など、その内容は多彩で、特許権に関しては理系の知識が要求されるなど高度な専門性を有します。
具体的な業務としては、企業の持つ権利を侵害された場合の訴訟などが想定されます。
銀行・金融
銀行やノンバンク・リース会社等が、企業として運営していくにあたり必要となる分野です。
金融規制法(金融商品取引法、銀行法、保険業法等)や金融庁その他の行政庁の策定する監督指針、ガイドライン等など金融法務に関する幅広い知識が求められます。
金融機関での実務経験がある場合、有利に働くでしょう。
キャピタルマーケット
法人が有価証券を国内外の市場に発行して行う資金調達、株式公開買い付け、ストックオプションなどに関わる業務です。
企業が成長するために非常に重要な業務ですが、どの業務もコンプライアンスに十分に配慮して進める必要があり、専門性が高い分野です。
危機管理・不祥事対応
企業で重大な事件や不祥事が発生した場合、迅速かつ的確な対応をとって影響を最小限にしなければなりません。
第三者委員会設置やマスコミ対応などがその一例です。
SNS隆盛の時代、このような対応の経験が豊富な弁護士のニーズは高まっています。
不動産取引
不動産の売買や賃貸などの基本的な取引から、大規模施設の開発や不動産投資・ファイナンスなど、業務は多岐にわたります。
特に法律関係が複雑に絡んだようなケースでは、専門知識を有する弁護士が必要となることが多いです。
ジェネラル・コーポレート
企業法務としては最も基本的な業務ですが、企業が日常的に運営していくなかでおろそかにできないものばかりです。
例えば、各種契約書の作成・確認、労務対応、株主総会運営、コンプライアンス対応などがあります。
法的知識はもちろんですが、クライアントのニーズに沿った提案力・問題解決力が必要でしょう。
企業法務弁護士の年収
企業法務弁護士の平均年収は、約1,000万円です。
五大弁護士事務所など、大手事務所に所属する場合は、新人でも年収1,000万円を超えるでしょう。
実務や海外留学などの経験を積み、役職がつくとさらに昇給し、中堅クラスで2,000万円~3,000万円前後の給与になると言われています。それよりもさらに高年収の弁護士もいます。
一方、中小規模の法律事務所に所属する場合、平均年収は600万円~1,000万円前後となります。
ちなみに、年収は必ずしも事務所の規模に比例するわけではありません。キャリアを積みクライアントを増やしていければ、中小規模の事務所でも平均年収を大きく上回ることは可能でしょう。
企業法務が経験できる職場
続いて、企業法務が経験できる職場を解説します。
五大法律事務所
五大法律事務所は、個人の民事事件や刑事事件よりも企業の法務を中心とした業務を行っています。
一般民事事件のスキルを習得できないデメリットはありつつも、クライアントは大企業が多いので難易度の高い案件に携われ、企業法務の専門的スキルが身につくでしょう。
大手企業のM&A案件やプロジェクト案件等に関与できる機会に恵まれています。
就職・転職には狭き門を突破する必要がありますが、今後のキャリアを強くするでしょう。
五大法律事務所は次のとおりです。
- 西村あさひ法律事務所
- アンダーソン・毛利・友常法律事務所
- 長島・大野・常松法律事務所
- 森・濱田松本法律事務所
- TMI総合法律事務所
それぞれの事務所について、以下で簡単に解説していきます。
西村あさひ法律事務所の得意領域は、銀行・金融、不動産取引、M&Aなどです。
弁護士数は598名(パートナー/法人社員 166名、オブカウンセル 7名、カウンセル/法人カウンセル 56名、アソシエイト 365名、フォーリンアトーニー/法人フォーリンアトーニー 49名)です。
国内最大手の法律事務所であり、渉外系事務所としてもトップクラスです。
高度な専門知識を持った弁護士が在籍し、どの分野でも高い法律サービスを提供しています。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所の得意領域は、銀行・金融、キャピタルマーケット、危機管理・不祥事対応などです。
弁護士数は488名(パートナー 158名、スペシャル・カウンセル 18名、アソシエイト 286名、顧問 13名、客員 3名)で、シニア・フォーリン・カウンセル 7名(内、外国法事務弁護士 6名)、顧問/外国法事務弁護士 1名、外国弁護士 32名 (内、外国法事務弁護士 1)です。
元々、アメリカ人のジェームス・ビュウェル・アンダーソン弁護士が設立した事務所ということもあり、海外から最も高い評価を受けています。
外資系企業が日本に進出する際に業務を依頼されることも多く、渉外面では他の大手事務所と一線を画しています。
長島・大野・常松法律事務所の得意領域は、銀行・金融、キャピタルマーケットなどです。
弁護士数は501名(日本弁護士461名、外国弁護士40名)です。
国際案件も多く、案件ごとに弁護士・スタッフが緊密な連係をもって対応にあたり、一体感をもって取り組むことが特徴です。
弁護士の個の強さよりもチームで安定した業務処理を行っている、堅実な事務所だと評判です。
TMI総合法律事務所の得意領域は、特許・商標・著作権などの知的財産権分野です。
弁護士人数は449名で、外国法事務弁護士7名、外国弁護士28名です。
1990年設立の比較的新しい事務所ですが、所属弁護士が増加して大手事務所の仲間入りを果たしました。
知的財産権に関する業務では「知財のTMI」と呼ばれるほどの経験・実績を有し、クライアントも多数抱えています。
森・濱田松本法律事務所の得意領域は、銀行・金融、M&A、キャピタルマーケットなどです。
弁護士数は246名で、外国弁護士11名です。
他の大手法律事務所が国際的な渉外案件で成長したのに対し、森・濱田法律事務所は前身が国内系法律事務所ということもあり、訴訟問題など裁判関連の業務では国内随一の実力をもっています。
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準大手法律事務所
準大手法律事務所も、企業法務弁護士を経験できます。
準大手法律事務所は、以下のとおりです。
- シティーユーワ法律事務所
- 大江橋法律事務所
- 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業
- ベーカー&マッケンジー法律事務所外国法共同事業
それぞれの特徴を簡単に解説します。
シティーユーワ法律事務所の得意領域は、訴訟紛争、不動産ファイナンス、M&A分野です。
弁護士数は157名で、外国弁護士が4名在籍しています。
業務を堅実に行うと評判の伝統的な事務所です。
大江橋法律事務所の得意領域は、幅広い企業法務を扱いながらもコーポレート、M&A分野です。
弁護士が131名、外国法事事務弁護士が5名、外国弁護士が1名、在籍しています。
大阪4大事務所の一つであり、西日本最大の事務所です。
渥美坂井法律事務所・外国法共同事業の得意領域は、ファイナンス(アセットファイナンス、ストラクチャードファイナンス等)、キャピタルマーケッツ、プロジェクトファイナンス、インフラ・エネルギー・資源、PPP・PFI、ファンド、M&A分野です。
弁護士119名、外国法事務弁護士10名、外国弁護士5名が在籍しています。
ベーカー&マッケンジー法律事務所外国法共同事業の得意分野は、M&Aです。
弁護士105名、外国法事務弁護士19名、外国弁護士12名が在籍しています。
外資系法律事務所
外資系法律事務所とは、外国法律事務所の傘下にある法律事務所のこと。
クランアントは、日系企業・外資系企業どちらもあるのが一般的です。9割の依頼が外資系企業という事務所もあれば、半数が日系企業からの依頼という事務所もあります。
この比率により、習得できるスキルが異なるでしょう。
例えば、外資系企業のクライアントが多い場合は、M&Aでもアウトバウンド案件が多くを占めるため、日本国内法が適用されます。そのため、国内法の知見や実務経験を積めます。
インバウンド案件の経験を積みたい場合は、日系企業の案件が多い外資系法律事務所がおすすめです。実務レベルの英語を頻繁に使用するため、ビジネス英語のスキルが磨かれるでしょう。
ブティック系法律事務所
ブティック系法律事務所とは、特定分野に強みを持って業務を行う法律事務所のことです。
五大法律事務所などの大手法律事務所は、金融・知的財産・M&Aなどを幅広くカバーしています。
一方で、ブティック系法律事務所は得意分野を専門で取り扱うことで、大手事務所に劣らないリーガルサービスを提供しています。
就職・転職の面からみると、五大法律事務所よりも難易度は高くなく、企業法務が未経験でも入所可能な事務所もあります。
専門的な知識を身につけてキャリアアップできるほか、五大出身の弁護士が独立して立ち上げた事務所も多く、業務の質の高さは大手法律事務所に劣らないため、転職希望の弁護士からも人気です。
中堅・中小法律事務所
弁護士10名~99名以内までの規模を一般的に中堅法律事務所と呼びます。
五大・準大手・外資系法律事務所と違って部署制ではないので、多様な案件(さまざまなタイプのクライアント)に関与できる機会に恵まれている事務所が多いでしょう。
顧問先も商社・製造・金融・サービス・ITなど幅広く、東証一部上場会社から小規模な会社まで、規模感も様々です。
また、企業法務のみを行う事務所もあれば、民事・刑事など様々な分野に携われる事務所、個人受任OKという事務所もあります。
幅広い業務を経験したい弁護士の方は、こういった法律事務所に転職すると良いかもしれません。
企業法務弁護士に求められる条件やスキル・実務経験
企業法務弁護士に求められる条件やスキル、実務経験について解説します。
ビジネス的な視点を持っていること
企業法務弁護士はクライアントが企業のため、会社にとって最善の提案、問題解決をしていかなければなりません。
交渉力や提案力、コミュニケーション力を持ち合わせていることが、かなり重要です。
ただ法律に詳しいだけでなく、ビジネス的な観点から案件を処理する能力が求められます。
正確かつ迅速な業務ができること
あらゆる業務をミスなく正確にこなすのはもちろん、企業法務の案件では、圧倒的にスピードが要求されます。
企業を取り巻く状況は刻一刻と変化するため、契約書のチェックが遅れれば契約不成立となってしまうこともあるのです。
数多くの企業の案件を抱えつつも、スピーディーかつ正確に業務を進める能力が必要でしょう。
専門的な法務知識
業種によって、日々の法律相談は異なります。
金融系企業では、金融商品取引法に関しての法律相談がメインでしょう。一方で、IT企業では個人情報保護法・著作権・商標法・プロバイダ責任制限法に関する法律相談がメインとなります。
様々な分野の法律知識が必要なうえ、常に最新の知識を取り入れなければなりません。
企業法務弁護士のメリット
企業法務弁護士のメリットは、
- 民事や刑事では経験できないビジネスサイドの業務が幅広くあること
- 自分の強みとなる専門分野を持てる可能性があること
などでしょう。
企業法務弁護士としてキャリアを積んでおくと、企業内弁護士(インハウスローヤー)への転職にも有利に働きます。
そのため、法律事務所だけでなく企業へのキャリアステップにも融通がきくようになります。
企業は法律事務所に比べてワークライフバランスが整っており、福利厚生も充実しているので、働き方をプライベート重視にシフトしたい場合はおすすめです。
企業内弁護士を採用したい企業は数多くあるので、企業法務弁護士のキャリアを積んでおくことで将来的な転職先の幅が広がることでしょう。
企業法務弁護士のデメリット
企業法務弁護士の業務内容自体は幅広いですが、担当する範囲が限られてくると、広く実務経験を積むことは難しいです。
しかし、担当する範囲が広がりすぎるとハードワークになり、プライベートとのバランスが取りにくくある傾向にあります。
企業法務弁護士に限らず、法律事務所に所属する場合はワークライフバランスが整いにくい傾向にあり、時には体力的・精神的に追い込まれてしまう可能性があるでしょう。
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