外資系法律事務所への就職・転職で必要なスキル|業務内容や他事務所との違いも解説
by LEGAL JOB BOARD 増田
コンサルタント
- 担当職種:
こんにちは。弁護士の転職エージェント「リーガルジョブボード」の増田です。
本記事では、「外資系法律事務所への就職・転職で求められるスキル」について解説します。
その他、外資系法律事務所の業務内容や年収・特徴・激務かどうか・新卒でも就職可能か、などについてもまとめています。外資系法律事務所への転職を検討している方は、本記事をご覧ください。
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この記事の目次
外資系法律事務所とは
まず、外資系法律事務所とは、
- 海外に拠点がある事務所の日本支部
- 海外の事務所と提携した国内の法律事務所 ※共同事業をするなども含める
のことを指します。
業務内容は、基本的に「国際的な法律の案件」を受け持つことが多いです。
一般的な法律事務所の業務内容は、一般民事と法人向けの企業法務に分かれますが、外資は国際系の企業法務の案件を扱います。
案件数が限られるので、外資系法律事務所の母数や求人枠は少ないでしょう。
国内法律事務所との違い
外資系事務所の業務内容は、大手事務所と共通する部分も多いです。
しかし、海外の文化が根付いた環境ですので、働き方や給与などに違いがあります。
働き方の違い
国内の大手事務所に比べると、外資系事務所は比較的早く退勤できるなど、プライベートの時間を持てる傾向があります。
例えば、国内大手は深夜1時~2時まで働くことも多々あると言われていますが、外資系だと20~23時には上がれるでしょう。もちろん繁忙期は、上記時間よりも多少勤務時間が増えますが、国内の五大事務所よりは忙しくないはずです。
ただし、事務所の海外オフィスや国外クライアントとのミーティング等があると、時差の関係で打ち合わせが夜中や朝方に入ることもあります。その点においては、タフに頑張れる人材が良いでしょう。
年収や給与の違い
グローバル基準(世界一律)の報酬体系で1ドル=100円とした場合、1年目の年収は1,300万円~1,500万円がメジャーでしょう(※フルタイムが前提条件)。
グローバル基準ではなく日本独自の報酬制の場合、年収の例は以下の通りです。
- 1年目:1,400万円〜1,500万円
- 3年目:1,200万円~1,700万円
- 5年目:1,500万円~2,000万円
- 10年目:1,500万円~3,000万円
外資系法律事務所の中でも、グローバル基準の報酬体系の事務所は給与が高くなる傾向があります。もちろん、日本独自の報酬制であっても年収は高く、大手法律事務所にも引けを取りません。
また、基本的に弁護士の世界は実力主義ですが、外資系だと特にその色が強くなります。
専門性を高めてパートナー弁護士になれば、かなりの年収になります。しかし、評価は世界基準で、各国オフィスの優秀な弁護士がライバルになるので、パートナーになるのは国内法律事務所に比べて狭き門です。
弁護士の給与形態で賞与が含まれるケースはほぼありません。業務委託での雇用契約のところが多いため、基本的に年収を12分割した額が月収となります。事務所によっては、年に一度、頑張った人に賞与を出すところもあります。
個人受任に関しては国内事務所よりもシビアで、利益相反となるリスクや、売り上げ単価の低い案件は経営効率が悪いという観点でNGのところがほとんどです。
ワークライフバランスの違い
国内大手の事務所よりも、ワークライフバランスが整っているところが多いです。
もちろん繁忙期は例外ですが、前述のとおり、大体20~23時頃には帰ることができるでしょう。
日本の士業業界は、ワークライフバランスの浸透や実現に遅れをとっている傾向にありますが、海外は体制を整える動きが早い印象です。制度や体制は事務所によって異なるため、気になる方は転職エージェントにご相談ください。
弁護士のワークライフバランスについて、以下の記事で解説しています。気になる方はご覧ください。
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大手の外資系法律事務所
大手の外資系法律事務所をいくつかご紹介します。
下記の法律事務所は人気が高く、採用倍率も高い傾向にあります。
ベーカー&マッケンジー法律事務所
ラッセル・ベーカー(Russell Baker)とジョン・マッケンジー(John McKenzie)により、1949年に設立された事務所です。
47か国・全77ものオフィスがあり、4,200人以上の法律家が所属しています。
主に扱っているのは、一般的な企業法務、国際取引、M&A、ファイナンス、証券、紛争、独禁などの分野です。
さらに、環境・気候変動問題、知財・情報通信、大型海外プロジェクト(資源、鉱業、インフラストラクチャ)、税務といった専門分野にも幅広く対応しています。
モリソンフォースター外国法事務弁護士事務所
1883年にカリフォルニア州サンフランシスコで設立され、アメリカ、ヨーロッパ、アジア地域に拠点を持つ国際的な法律事務所です。
世界各国16か所の事務所に、1,000名を超える外国弁護士が所属。
特に、ハイテク、製薬、ファイナンス分野において、知識・経験を有しています。
日本国内のクライアント基盤が他の外資系法律事務所よりしっかりしており、訴訟などの企業間紛争解決においても支援実績が比較的多いのが特徴です。
>>モリソンフォースター外国法事務弁護士事務所のホームページ
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
クリフォードチャンス法律事務所は、世界22か国・32か所に展開するクリフォードチャンスの東京事務所として、他オフィスと密接に連携してグローバル案件を扱う法律事務所です。
現在、東京事務所には約50名が所属し、日本法の弁護士がうち約3分の2を占めています。
東京事務所では、コーポレート、ファイナンス、キャピタルマーケットの3部門にわけて案件を扱っています。
>>クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業のホームページ
ポールヘイスティングス法律事務所
東京オフィスであるポールヘイスティングス法律事務所・外国法共同事業は、1988年に開設されました。
世界各国・全22オフィスの連携により、グローバルにビジネスを展開する企業に、常に最新のビジネス事情や政治情勢に基づいた質の高い法務アドバイスを提供しています。
スクワイヤ外国法共同事業法律事務所
スクワイヤ・パットン・ボッグス(Squire Patton Boggs)は、アメリカ、ヨーロッパ、中東、アジア、豪州地域に拠点を持つ国際的な法律事務所です。
現在では 20か国・45か所のオフィスを展開。1,500名の法曹プロフェッショナルを擁し、世界の主要法律事務所のトップ20に入るグローバルな法律事務所です。
スクワイヤ外国法共同事業法律事務所は、米国スクワイヤ・パットン・ボグズ(US)LLPの日本の拠点となります。
開設当初から日本企業の海外進出案件に重点的に取り組んでいましたが、最近では日本企業のクライアントを中心にM&A案件、金融案件、海外訴訟案件、国際仲裁案件、行政争訟案件、知的財産案件などを中心に法的サービスを提供しています。
求められる英語力の基準
外資系では必須の英語力ですが、『ビジネスレベルで英語が使える』ことを基準とする求人が多いです。
具体的には、TOEICは最低でも900以上、TOEFLでは100以上くらいのスコアがあれば、外資系への就職・転職で強みになるでしょう。TOEFLの方が世界基準で使われている試験であり、スピーキングも点数に含まれるため、より評価が高いです。
また、数年単位の留学経験者や帰国子女も、歓迎される傾向があります。
事務所によっては英語での面接があるため、入る前から意思疎通がスムーズにできるレベルの英語力が求められます。入社後は、研修や日々の業務を経て、リーガルレベルの議論ができるようになるまで上達する必要があります。
外資系法律事務所に新卒で就職することは可能か?
新卒で外資系法律事務所へ就職することも、もちろん可能です。
その際に重要視されるポイントは、
- コミュニケーション能力
- 人柄
- 英語力
- 学歴やロースクールでの成績
- 司法試験の成績500位以内にいれば概ね良好
の5つで、これらがバランスよく評価されます。
転職とは違い、弁護士実務の経験がないため、高いポテンシャル(英語力や司法試験の結果、ロースクールでの成績)が求められます。
司法試験が転職活動に与える影響について、以下の記事で解説しています。ぜひご覧ください。
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外資系法律事務所への転職で求められるスキル・条件
前提として、国内外を問わずどの求人に応募する場合でも、
- どういった事務所に在籍し、どのような層のクライアントを対応していたのか
- 転職を希望する事務所と業務分野が合っているのか
の2点を基本的にはチェックされるので、事前に整理しておきましょう。
では、外資系法律事務所の場合、特に見られることを解説します。
①英語力
外資系法律事務所では、英語力がより一層求められます。
未経験・経験者関係なく、ハイレベルな英語力が必要です。日常会話レベルよりもアカデミックで、実用性の高い英語力を身につける必要があるでしょう。
前述のとおりですが、TOEICは最低900以上、TOEFLは100以上程度が基準となります。
②経験分野やその密度
「今までどのような分野をやってきたのか」「これからどういったことがしたいのか」など、実務経験の分野のほか、今後のキャリアパス・展望を聞かれます。これらは、弁護士としての経験年数・期と照らし合わせて質問されます。
また、「密度」についても聞かれるでしょう。密度とは「年数と経験の密度」を指します。
若手(3年以内)であれば、専門分野がなくとも実務経験と英語力があれば大丈夫です。
しかし、年次が長くなると、ファイナンスや不動産といった専門分野、MAなどの経験、もしくは上場企業のクライアント対応経験の実績がないと転職が難航する可能性が高まります。
面接で聞かれる内容・見られているポイント
続いて、外資系法律事務所の面接についてです。
論理性や頭のキレ、誠実さ、そして以下の「弁護士として働く上で重要なポイント」を重点的にチェックされます。
- 転職内容と退職理由に整合性があるか(論理性)
- どういう弁護士になりたいか(将来性)
- どういった業務をやりたいか(専門性)
また、面接は2度あることが一般的で、2度目は事務所のメンバーとの会食です。
そこでは、「事務所のメンバーと合う人柄なのか」と「品格や素養」が見られます。会食ではあるものの、一つの「選考」と捉え臨むようにしましょう。
以下の記事で、法律事務所の面接対策について解説しています。あわせてご覧ください。
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外資系法律事務所に向いている人
外資系法律事務所に向いている人の特徴を解説します。
仕事にフルコミットしたい人
外資系法律事務所は、他の職種・事務所よりも忙しい傾向にあります。
一方で、外資系ならではのスキルアップや実務経験が可能で、弁護士としての資産や知見が構築されることは間違いないでしょう。弁護士としての市場価値を上げ、仕事に注力したい方には向いています。
補足として、外資系法律事務所は五大法律事務所よりは勤務時間が少なめです。
五大法律事務所の特徴・転職に必要なスキルなどは、以下の記事で詳しく解説しています。五大法律事務所への転職も検討している方はぜひご覧ください。
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英語が得意な人・留学を見据えている方
英語が得意な方は、外資系法律事務所で活躍できます。前述したような高い英語力が求められる分、見返りや報酬・待遇も良いのが外資系法律事務所の特徴の一つです。
また、数年キャリアを重ねた後に海外事務所への留学を検討している方にとっても、各国オフィスがある外資系事務所であれば、海外での経験を積める可能性がよりアップするでしょう。
高い英語力のある方は、外資系法律事務所への転職も選択肢の一つとなります。
クロスボーダーのM&Aをやりたい人
M&Aに携われるのは外資系法律事務所だけではありませんが、外資の方が事業規模が大きく、かなり良い経験が積めるはずです。
4大や5大に並ぶ規模の国際案件に携わることができるのは、外資系法律事務所の強みです。M&Aの経験自体はもちろん、国際的な案件であることも大きな付加価値となります。
テレビやネットニュースに載るような規模のM&Aに携わりたい方は、外資系法律事務所を目指すのも一つの手でしょう。
将来は日系・外資問わず法務部で働きたい人
法務部で働きたい方に、外資系法律事務所がおすすめの理由は2つあります。
一つ目は、法務部で英語力が評価されるからです。
外資系法律事務所で働きながら、イギリスやアメリカのクライアントを持った経験があると、法務部で働く際にもクライアントに実務レベルの英語で接することができ、信頼を得やすくなるでしょう。
特にメーカーは国際的な取引をする企業が増えてきているので、外資での実務経験があれば評価はより高まるかと思います。
二つ目は、国際案件を外資系法律事務所と進めていく際の流れや業務内容の理解が深まるからです。
外資系法律事務所で働くと、その文化や内部の動かし方が分かるようになり、法務部で働く際に業務をスムーズに進行できるようになります。
企業では国際案件を外資系法律事務所と連携し、進めることが良くあるので、外資出身だと内部事情を理解しているため連携がとりやすいのです。
外資系法律事務所に就職・転職するメリット
外資系法律事務所に転職するメリットを解説します。
企業法務の専門的なスキルを習得できる
外資系法律事務所は企業法務の案件がほとんどなので、企業法務の専門的な知識が身につくでしょう。
民事系の案件もありますが基本的には企業案件が多く、大企業や海外の企業との経験を積めるため、最終的に企業法務をやりたい方におすすめです。
そこで得た経験を活かせば、インハウスローヤーへの転職にも有利に働くほか、大手事務所への転職も実現できる可能性があります。
英語力を習得できる
転職をする際、英語力があれば一定の信頼度に繋がります。
大きな事務所ほど、実務レベルの英語力が求められるため、外資系法律事務所での経験が非常に役立つでしょう。
世界の法律事情に詳しくなれる
外資系法律事務所に所属することで、世界の法律事情に詳しくなれるでしょう。
海外オフィスの弁護士とのやり取りが必然的に多くなるので、文化や価値観などを理解できるからです。
世界の法律事情への理解が深まると、将来的にインハウスローヤーになった際など、外資企業との折衝やコントロールが円滑に行えるようになります。
ワークライフバランスと年収のバランスが取れる
国内の事務所に比べて、外資系法律事務所は休みが取りやすい傾向にあります。
年収が近しい企業法務系の事務所と比べると、20時~23時頃に帰れるのは早い方です。国内の事務所だと、年収1000万円超えで夜中2時まで働くこともあります。
育児休暇やその他の制度に関しては、国際的な基準や事務所の方針にもよるため、個別に確認しましょう。
外資系法律事務所に就職・転職するデメリット
では、外資系法律事務所に就職・転職するデメリットはあるのでしょうか?
国内クライアントの開拓が難しくなる
将来的に独立し、国内のクライアントを持ちたい場合は少し不利になるかもしれません。
もちろん所属する外資系法律事務所にもよりますが、国外クライアントや国内の大手企業との付き合いが多く、国内の中小企業との関係性は薄くなる可能性があります。
国内では付き合いのある不動産会社の紹介で顧客を獲得することもありますが、外資で働くとそういった繋がりは少なくなるでしょう。
パートナーになることが難しい
外資系法律事務所の場合、世界各国に多くの優秀な弁護士がいます。その競争を勝ち抜き、パートナーになるのは狭き門でしょう。
もしパートナーにならなくても、国内のパートナー(企業法務系)で働く場合の平均年収と同じくらい稼げるため、そこまで問題はないと思います。
- 外資系法律事務所のアソシエイト:平均年収1700万
- 国内の企業法務系のパートナー:平均年収1500〜2000万
外資でパートナーを目指す場合、評価基準の違いや英語力、経験年数なども壁になります。その壁を超えてパートナーになれば、年収2500万も夢ではありません。
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