司法書士

司法書士の特別研修の内容と必読図書3選|研修受けないとどうなる?

by 司法書士法人グラティアス 志村直也

代表所長 司法書士

担当職種:
  • 司法書士

こんにちは。司法書士専門の転職エージェント「リーガルジョブボード」です。

本記事では、司法書士の特別研修の必読図書や概要についてご紹介します。

  • 必読図書って全部買わなきゃいけないの?
  • どんな内容の研修なのか?
  • 特別研修を受けないとどうなる?

といった疑問をお持ちの方は特にご覧ください。

ちなみに、特別研修を受けるほとんどの司法書士の方は、すでに司法書士事務所への就職が決まっているかと思います。

もしまだ就職先が決まっていない場合は、早めの就職活動をおすすめします。司法書士の合格者を募集する事務所はまだまだありますので、紹介を受けたい方はご相談ください。

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特別研修の概要

まず、特別研修の概要をお話していきます。

日程

今年である2022年の特別研修日程は未定です。

日本司法書士会連合会では

令和4年2月下旬から3月上旬を目途に,日司連研修総合ポータル(本ページ)で第21回特別研修募集要項を公表する予定です。

と記載があるので、もう少しで日程が公開されるのではと思われます。

特別研修の日程は例年1月上旬から3月下旬の約1ヶ月間だったのですが、コロナの影響により2020年から特別研修の日程がずれ込んでいます。前回(2021年)の実施日は2021/5/29〜2021/7/4でした。

主に土~月曜日の間にありますが、研修にある簡易裁判所の傍聴は平日の13~16時に行われます。

特別研修の前に執り行われる、連合会の中央新人研修・ブロック研修の時期は1月上旬から下旬ですので、司法書士合格後に研修が始まれば、目が回る忙しさです。

※ちなみに、特別研修が始まるまでには就職先を決めておくことをおすすめしています。研修が始まる時期は、合格者を採用したい事務所がほとんど埋まっている可能性があり、「求人がない」状態になってしまう恐れがあるからです。就職先が決まっていない場合は、早めに就職活動を開始しましょう。

費用

特別研修の費用は145,000円です。

司法書士の研修は特別研修だけではなく、中央新人研修・ブロック新人研修があります。

費用の内訳は下記になります。

  • 中央新人研修 43,200円
  • ブロック新人研修 32,400円
  • 特別研修 145,000円

上記の他に、交通費・宿泊費も自身で用意が必要です。

特別研修の具体的な内容

下記で、特別研修の具体的な内容をお話していきます。

集合研修

約12時間、集合研修をおこないます。内容は、民事訴訟法、基本法令、裁判実務の基礎知識。

集合修習の講師は、学者・裁判官・弁護士・裁判所書記官で、予め録画させている講義DVDを大教室で試聴します。

【集合研修の特徴】

講師は、専門的な用語を当たり前に使用します。

しかし、研修受講者は用語を知っていたとしても、意味を深く理解していないことも多く、講義内容を自身に落とし込むのに時間がかかってしまうという声をよく聞きます。

講義は長く、講義DVDの試聴なので、ついつい眠気が襲ってくることもありますが、居眠りの無いようしっかりと受講しましょう。

グループ研修

グループ研修は、約36時間あります。講師は司法書士(チューター)です。

「売買」「消費貸借」「建物明渡し」の事案を中心に、具体的事案(設例)を解いていき受講者15名のグループで討議します。

【グループ研修の特徴】

ゼミ形式の学習です。討議したり、指名されて答えを求められることもあるので、予習をしておいた方がよいでしょう。

集合研修と比べ、活発に学習が進められるので、実力をつけ、同期と差をつけたいのであれば、積極的に討議することが重要です。

ゼミナール

ゼミナールは約18時間あります。グループ研修の効果を確認することが、この研修の目的です。

  • 訴訟や弁論主義といった基礎的な概念
  • 要件事実の意味(抗弁事実・再抗弁事実・請求原因事実など)
  • 攻撃防御の基礎構造(主張、立証)

上記のような、民事訴訟の基礎的な内容の学習をします。

グループ研修の2グループで構成された、合計約30名を1組とし、講師の弁護士から講義を受けます。講義は「双方向形式」をとっており、講師から指名され答えを促されます。

【ゼミナールの特徴】

弁護士が直接講義をおこなうため、履修内容について質問できる機会です。

しかし、ゼミナール受講者は約30名と多く、じっくり質問できる時間を確保するのが難しい雰囲気です。すぐに質問できなくても、空いた時間を見つけて質問できるよう、質問をストックしておきと良いでしょう。

模擬裁判

模擬裁判は約12時間用意されており、具体的事案について、実戦形式で訴訟を実演します。

模擬裁判の講習では、法廷のプロである弁護士が講師として登板。グループ研修の2つのグループを、原告側と被告側に分け、訴訟を展開していきます。

グループのメンバー全員、原告本人役・被告訴訟代理人役など、何かしらの役割を与えられます。

【模擬裁判の特徴】

実戦形式の訴訟をおこないますが、これまでの研修や学習で基礎知識を頭に入れ、落とし込んでいないと、どのような訴訟行為をしなければならないのかがわかりません。

裁判自体、現役の司法書士でもなかなか慣れていないと難しいもの。まずは、基礎知識をしっかり消化することが大切です。

法廷傍聴

法廷傍聴の研修では、約6時間が用意されており、実際の訴訟事件を、法廷の傍聴席で傍聴します。

司法書士(チューター)が引率者となっており、グループ研修の1グループを半分にわけ、7、8名で法廷に入ります。

【法廷傍聴の特徴】

初めての傍聴の受講者も多いため、どのように傍聴を見学して学んだらいいのかがわからない方が多いようです。

傍聴をする際は、「傍聴人」ではなく「代理人」の立場を意識すると、今後に役立ちます。代理人としてどのように振舞えばいいのかを注意深く見ておきましょう。

例えば、出頭したらどうするのか(出頭カードの記載)

  • 法廷時の挨拶
  • 原告・被告の位置
  • 訴状などの書面の陳述の仕方
  • 裁判官とのやりとり

1度経験すると、スムーズにいく簡単なものですが、経験がないとスムーズにいかずに依頼人を不安にさせるかもしれません。

司法書士倫理、簡裁代理権の範囲

裁判事務に関する司法書士法、民事訴訟法、民事保全法、司法書士倫理知識についてを約4時間学習します。講師は弁護士で、執務上の心構えなどの講義を行います。

【司法書士倫理、簡裁代理権の範囲の特徴】

司法書士として、してよいこと・してはいけないことの峻別ができる基本的な心構えを学習します。

綱紀事件を起こさないためにも、最後の研修として司法書士倫理を学ぶことは重要です。

もし、綱紀事件を起こしてしまうと、自身だけではなく、依頼人の損害も大きいですので、意識を高く持ち司法書士として業務をおこなえるよう、最後の研修をすすめましょう。

特別研修の必読図書(参考書)3選

日本司法書士会連合会から必読図書として推奨されている本が多すぎて、すべて買った方が良いのか、何を買うべきなのか悩みませんか?

もちろんすべて購入できるほどのお金の余裕と読む時間があれば良いのですが、なかなか難しいと思います。

そこで、これだけあれば特別研修はもちろん、認定考査も十分カバーできる必読図書(参考書)を3つご紹介します。

①要件事実の考え方と実務

▶要件事実の考え方と実務〔第4版〕

いわゆる「カトシン本」です。要件事実はこれ一冊あれば十分です。これ一冊で要件事実の基礎や考え方は身に付きます。

ただ、受験用のテキストではないので、人によっては合う合わないがあるかもしれません。

②認定司法書士への道[入門編][理論編][実践編]

▶認定司法書士への道[入門編]

必読図書ではないですが、「道」の愛称で親しまれているテキストです。[入門編][理論編][実践編]の3冊構成になっています。

資格予備校の伊藤塾の講師が執筆されているだけあって、認定考査対策として非常に使い勝手が良いです。

もちろん特別研修の参考テキストとしても使えますし、実際に「カトシン本」より「道」の方が使いやすいという人は多い印象です。

③司法書士 簡裁訴訟代理等関係業務の手引

▶司法書士 簡裁訴訟代理等関係業務の手引 令和5年版

特別研修・認定考査における司法書士倫理はこれ一冊あれば十分です。

認定考査においては、ここから問題出しているんじゃないか?と思うくらいに、この本に書いてある事例がよく出ます。

そのため、特別研修だけでなく、認定考査対策としても必須で買っておいた方がよい書籍です。

以上、3選です。特別研修を受ける方は、ぜひご参考になさってください。

予習や対策・事前準備など

特別研修は、必ず予習が必要と言われています。テキストは、特別研修が始まる1ヶ月以上前に届いていることが多いので、予習できる期間はあります。

しかし、特別研修の前に行われる、ブロック研修や中央新人研修中にテキストが届くこともあり、ついつい予習は後回しになってしまいがちです。

また課題も出され、ブロック研修を受講した場所によるかもしれませんが、「特別研修が始まるまでに、課題を10個全部やるように!」と言われるようです。

内容は下記のようなもの。

  • 貸金等請求事件の訴状を作成
  • 答弁書を作成

どれも、時間がかかってくるのでなるべく早めに取りかかります。課題をし、予習をしておくことで、特別研修の内容をより理解することができ、しっかり消化することができます。

認定考査対策の予備校講座は受講すべき?

認定考査は、司法書士本試験と異なり、落とす為の試験ではありません。認定考査の1~2ヶ月前から1日1~2時間、継続的に勉強できれば十分合格できます。

なので、予備校講座は無理に受講する必要はないでしょう。むしろ、講座を受講しないと勉強のペースが掴めないという人こそ、あえて予備校講座には頼らずに自身で勉強するのも良いかと思います。

実務に出ればすべて自分で勉強しなくてはならないため、予備校に頼らずに勉強をする良い機会になります。

特別研修を受けないとどうなるか?

特別研修を受けないと、認定考査試験が受けられません。

認定考査試験を受けると、140万円以下の民事訴訟案件を対応できる認定司法書士として活躍の場を広げられます。

債務整理系の事務所にいきたい場合は、特別研修および認定考査が必須です。基本的に、8割〜9割の司法書士の方は特別研修を受けています。

認定考査を受けるメリット・デメリットは下記の記事でまとめています。

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司法書士の新人研修は全て受けるべき?

結論から言えば、受けた方が良いです。中央研修、ブロック研修は受けるけど、特別研修については登記の仕事以外はする予定がないので、受けなくても良いかなと考える人が少なくありません。

確かに、一昔前に比べれば、簡裁訴訟案件(特に過払い金請求)の受任率は低下しています。

しかし、登記の仕事だけしていたとしても、意外と裁判関係の相談はあるものです(建明けの相談など)。お客様からすれば、登記で繋がりのある司法書士に裁判関係の相談もできた方が良いでしょう。

また、合格年度に特別研修を受けておかないと、特に民事訴訟法等の知識は抜けてしまいます。

裁判関係の仕事をするかしないかに拘わらず、できれば合格年度の特別研修を受けておくことをおすすめします。

就職・転職活動のタイミング

試験合格後に司法書士として働く予定の方は、合格見込みのうちに就職・転職活動を始めるのがおすすめです。

筆記試験に合格していれば、口述試験も合格する確率が高く、この時点で内定を出す司法書士事務所は多くあります。

また、このタイミングで動くことによって、採用担当者と早い段階で接点を持つことができ、ライバルが少ない中で就職活動を進めることができます。

合格後の就職・転職活動について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

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司法書士の就職には“エージェントの活用”がおすすめ

司法書士としての就職を成功させるためには、自己分析やキャリアパスの策定、事務所選び、応募書類の準備など、“やるべきこと”が多くあります。

しかし、試験や研修がある中で、就職活動を一人で完璧に進めるのは簡単ではありません。

就職活動に少しでも不安のある方は、司法書士専門の転職エージェント「リーガルジョブボード」をぜひご活用ください。

司法書士業界に詳しい専門エージェントが、

  • ヒアリングによる自己分析のお手伝い
  • 希望に沿った求人のご紹介
  • 応募書類の添削やアドバイス
  • 面接対策・面接同行

など、転職活動を手厚くサポートいたします。

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また、就職活動が本格化する前から登録しておくと、求人への応募・選考をスムーズに進められます。

まずは業界に精通するエージェントと話し、業界理解を深めたいというご相談でも結構です。お気軽にご登録ください。

ちなみに、転職エージェントを介して求人に応募すると、内定の可能性がグッと上がることをご存知でしょうか。理由は以下の記事をご覧ください。

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この記事の執筆者

司法書士法人グラティアス 志村直也

代表所長 司法書士

担当職種:
  • 司法書士

司法書士法人グラティアスの代表所長・司法書士有資格者。司法書士事務所を複数経験しており、業界に関する知識やトレンドを発信中。以前は主に家族信託をメインに生前対策や認知症対策に従事し、現在は売買、相続、民事信託などの不動産登記を中心に、商業登記、裁判業務など幅広く注力。

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