【司法書士】令和6年 特別研修のスケジュール・内容・費用を解説!
by フラタニティ司法書士事務所 志村直也
代表司法書士
こんにちは。司法書士業界に特化したキャリア支援を行う「リーガルジョブボード」です。
本記事では、フラタニティ司法書士事務所 代表司法書士の志村先生に監修いただき、
などについて解説します。司法書士合格者の方や、特別研修について知りたい方はぜひご覧ください。
この記事の目次
司法書士の特別研修とは?
司法書士特別研修とは、司法書士が「簡裁訴訟代理等関係業務」を行うにあたって必要な能力を習得することを目的に実施されます。講義やゼミナール、実務研修(法廷傍聴)、模擬裁判、グループ研修などで構成されており、比較的実践的な研修と言えるでしょう。
特別研修の修了後に認定考査に合格すると、「認定司法書士」となり、簡易裁判所で取り扱うことができる民事事件(訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件)等で代理業務を行えます。
ちなみに、2023年4月1日時点で、司法書士登録者のうち78%にあたる18,027人が「認定司法書士」です。
【最新】司法書士の特別研修 スケジュール・概要
日本司法書士連合会によると、令和6年(2024年)の特別研修のスケジュール・概要は以下の通りです。
申込受付期間 | 令和6年3月6日(水)~3月14日(木) |
実施期間 | 令和6年5月22日(水)~6月30日(日) |
会場 | 札幌、仙台、東京、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、広島、福岡 |
認定考査 | 実施日程は未定です。 なお、前回は令和5年9月10日(日)に実施されました。 |
Zoomを利用したオンライン形式が中心で、一部集合形式で実施されます。
約20日間の特別研修のうち、10日ほどが集合形式とのこと。集合研修の会場は全国10か所に設けられており、居住地にかかわらず選択できます。それぞれ定員が定められていますのでお早めにお申し込みすることをおすすめします。
司法書士特別研修の費用・申込方法
特別研修の受講料は、14万5,000円(※振込手数料別)です。
受講料には、教材費(1万6,000円)、副教材費(2,000円)、修了証明書発行手数料(2,000円)が含まれます。研修期間の交通費や宿泊費、食事代、必読・参考図書費、考査受験料などは自己負担です。
受講申込は、日本司法書士連合会の研修管理システムで行います。添付する書類は以下の4点です。
- 司法書士となる資格を有することを証明する書面の写し
合格証書・認定証書など。 - 住民票
交付日より1ヶ月以内。記載の氏名と住民票の氏名が異なる場合、予め連合会に連絡。 - 受講料の納付を証明する書面の写し
「振込依頼書の振込金受取書」「ATMの利用明細票」 「インターネットバンキングからの振込内容がわかる書面」のいずれか。ない場合、申込受付は不可。 - 証明写真
データ容量20MB以下。 サイズは参考として、800×600縦横比4:3の比率を推奨。
司法書士特別研修の内容
特別研修には、講義やゼミナール、実務研修(法廷傍聴)、模擬裁判、グループ研修などの様々なプログラムが含まれます。「第22回司法書士特別研修 募集要項」の記載内容をもとに、以下で詳しく解説します。
基本講義
基本講義は、特別研修の基礎となる内容です。動画を視聴する形式で行われます。
時間 | 12時間 |
目的 | 訴訟代理人としての自覚を醸成する科目や、これ以降の研修で必須となる課目の習得 |
内容 | 憲法、要件事実の基礎、簡易裁判所における民事事件に特有な事項、事実認定、立証等に関する講義 |
方式 | 専用サイトで配信される動画を視聴 |
講師 | 大学教授、弁護士、裁判官または裁判所書記官、司法研修所教官 |
グループ研修
特別研修のプログラムの中で、最も多くの時間を占めるのがグループ研修です。ゼミナールや模擬裁判に向けた内容で、10名~15名程度のグループでチューターを中心とした研修を行います。
時間 | 37時間(グループ研修Ⅰが21時間、グループ研修Ⅱが16時間) |
目的 | 事例課題・提出起案の作成について、ゼミナール、模擬裁判・総合講義を効果的に受講するための予習 |
内容 | 【グループ研修Ⅰ】訴状・答弁書の作成 【グループ研修Ⅱ】準備書面・証拠申出書、和解条項等の作成や倫理等の事例に関する討議など |
方式 | 【グループ研修Ⅰ】オンラインで実施 【グループ研修Ⅱ】各会場で集合形式で実施 |
講師 | チューターとして認定司法書士 |
ゼミナール
ゼミナールは、実践的な知識・能力を身につける目的で実施されます。双方向形式の講義のため、講師から指名されて回答する場面があります。
時間 | 18時間 |
目的 | 簡易裁判所で訴訟代理人として活動するために必要な実践的知識・能力の習得 |
内容 | (要件事実に関する講義を踏まえ)不動産訴訟・金銭訴訟に関する事例研修など |
方式 | グループ研修のグループ2つが集合し、オンラインで実施 |
講師 | 弁護士 |
具体的な内容として、以下のようなものが含まれます。
- 訴訟や弁論主義といった基礎的な概念
- 要件事実の意味(抗弁事実・再抗弁事実・請求原因事実など)
- 攻撃防御の基礎構造(主張、立証)
実務研修(法廷傍聴を含む)
実務研修は、簡易裁判所に係属する実際の事件に関する研修です。法廷傍聴と講義で構成されています。
時間 | 16時間 |
目的 | これまでの研修で得た知識や能力をより実践的なものにする |
内容 | 法廷傍聴、簡易裁判所での基本事務や簡易裁判所特有の法廷活動等に関する講義など |
方式 | 【法廷傍聴】地方裁判所本庁所在地の簡易裁判所で実施 【講義】東京・埼玉・千葉・横浜・大阪会場はオンライン、その他の会場は各会場で実施 |
講師 | 裁判官または裁判所書記官 |
法廷傍聴では「代理人」を意識的に観察しましょう。代理人となった際の振る舞いを学ぶことができます。具体的には、以下のような点を注意深く見ておくのがおすすめです。
- 法廷時の挨拶
- 原告・被告の位置
- 訴状などの書面の陳述の仕方
- 裁判官とのやりとり
模擬裁判
模擬裁判では、実際に訴訟代理人や裁判官等の役割を体験します。グループ研修の2つのグループを、原告側と被告側に分けて模擬裁判が展開されます。
時間 | 13時間 |
目的 | 訴訟代理人としての実践的な知識・能力の習得 |
内容 | 金銭訴訟・不動産訴訟に関する模擬裁判など |
方式 | グループ研修のグループ2つが集合し、各会場で実施 |
講師 | 弁護士 |
これまでの研修・学習で基礎知識を頭に入れ、落とし込んでいないと、どのような訴訟行為をしなければならないのか分かりません。まずは、基礎知識をしっかりと習得しましょう。
総合講義
総合講義では、裁判事務に関する司法書士法、民事訴訟法、民事保全法、司法書士倫理知識について学びます。綱紀事件を起こさないためにも、知っておくべき内容です。
時間 | 4時間 |
目的 | 訴訟代理人としての重要な倫理・専門家責任・司法書士の権限の習得 |
内容 | 法律専門家としての倫理、専門家の責任(債務不履行責任・不法行為責任)、訴訟代理人として注意すべき倫理的な論点に関する講義 |
方式 | 総合講義のための動画を各自で視聴後、各会場で講師からの質問に受講者が応答する方式で実施 |
講師 | 弁護士 |
ここまで解説した特別研修のすべてのプログラムの受講時間を足すと、計100時間になります。特別研修が「100時間研修」と称されるのはこのためです。
特別研修は働きながら受けられる?就活との両立は?
結論としては、司法書士事務所などで働きながら特別研修を受ける方も、特別研修と並行しながら就職活動を進める方も例年いらっしゃいます。
特別研修のゼミナールや模擬裁判、総合講義は土日に行われます。そのため、講義動画視聴の時間確保、平日に研修が入ってしまった場合に仕事を休むことが可能ならば、働きながらでも特別研修を受けられるでしょう。
しかし、働きながらの特別研修をハードに感じる方もいらっしゃるかと思います。そのような場合は、就職先への入職時期の調整、休ませてもらえるかの確認をしてみてください。
また、特別研修と就職活動を両立できるか不安な方は、情報収集から始めるのがおすすめです。司法書士の求人・転職情報や、業界・同期の動向について知りたい方は、「リーガルジョブボード」をご活用ください。
情報収集・相談のみでも、お気軽にご利用いただけます。
特別研修は受けないとどうなる?
特別研修を受けないと認定考査が受けられず、認定司法書士になれません。
特別研修の受講は必須でないため、受けないという選択も可能です。債務整理・簡易裁判業務に携わらないのであれば、認定司法書士でなくても仕事はできるでしょう。
しかし、債務整理に携わらない場合も、裁判関係の相談を受けることがあります(建物明け渡しの相談など)。お客様からすれば、繋がりのある司法書士に裁判関係の相談もできた方が良いでしょう。
また、合格年度に特別研修を受けないと、特に民事訴訟法等の知識が抜けやすいです。個人的には、合格後すぐに特別研修を受けておくことをおすすめします。
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特別研修までにやっておきたいこと(予習・課題)
特別研修のために、民法と民事訴訟法を復習しておくことをおすすめします。
新人研修やブロック研修と異なり、特別研修は講師に質問を投げかけられ皆の前で答えさせられます(答えられないとちょっと恥ずかしい気持ちになります…)。
特別研修は筆記試験の合格から3~4ヶ月経った頃で、民事訴訟法の知識が抜け始めている可能性があります。特別研修では予習と課題が必須のため、そういった意味でも民法と民事訴訟法の復習をしておくのが良いでしょう。
課題の注意点
特別研修のテキストは、研修開始の1ヶ月以上前に届くことが多いので、予習期間は十分にあると言えます。
しかし、以下のような課題は、特に時間がかかるので早めに取りかかるのがおすすめです。
- 貸金等請求事件の訴状を作成
- 答弁書を作成
特別研修の前に予習をしておくことで、研修内容をより理解することができ、知識を習得しやすくなるでしょう。
特別研修におすすめの参考書
特別研修にあたり、日本司法書士連合会から必読図書・参考図書が提示されています。その中でも、特におすすめの参考書を紹介します。
『司法書士 簡裁訴訟代理等関係業務の手引-令和5年版-』
特別研修・認定考査における司法書士倫理はこれ一冊あれば十分です。
認定考査に関しては、この本から出題されているのでは?と思うほど、この本に記載されている事例がよく出ます。そのため、特別研修だけでなく、認定考査対策としても必須で買っておいた方がよい書籍です。
『要件事実の考え方と実務』(第4版)
いわゆる「カトシン本」です。これ一冊で要件事実の基礎や考え方が身に付きます。ただ、受験用のテキストではないので、人によっては向き不向きがあるかもしれません。
【番外編】『認定司法書士への道』
必読図書・参考図書には含まれていませんが、「道」の愛称で親しまれているテキストです。[入門編][理論編][実践編]の3冊構成で、伊藤塾の講師が執筆しているだけあり、認定考査対策に非常に役立ちます。
特別研修の参考テキストとしても使用でき、実際に「カトシン本」より「道」の方が使い勝手が良いという人も多い印象です。
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認定考査対策の予備校講座について
認定考査は司法書士試験と異なり、落とすための試験ではありません。認定考査の1~2ヶ月前から1日1~2時間、継続的に勉強できれば十分合格が目指せるでしょう。
そのため、予備校講座は無理に受講する必要はないかと思います。むしろ、講座を受講しないと勉強のペースが掴めない方こそ、あえて予備校講座に頼らず自力で勉強するのも一つの手ではないでしょうか。
実務に出ると自力で学習する力が求められるため、予備校に頼らずに勉強をする良い機会になるでしょう。
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