
働きながら司法書士を目指す!無理なく試験合格するために必要な年数と合格体験談

by 司法書士事務所グラティアス 志村直也
代表所長 司法書士
- 担当職種:

こんにちは。司法書士の転職エージェント「リーガルジョブボード」です。 今回は、現役司法書士の私から「働きながら司法書士資格を取得できるのかどうか」について解説します。具体的には
- 働きながら資格取得を目指せる理由
- 働きながら司法書士を目指すメリットやデメリット
- 実際に働きながら合格した体験記
- 働きながら勉強するなら司法書士事務所に就職するのが良いのか?
以上の内容についてまとめています。実際の体験や、現在司法書士として働きながら得てきた知見をもとに解説しているので、参考になるかと思います。
ちなみに、無理なく試験合格を目指すために、司法書士補助者として働きながら受験勉強を進める方法もございます。ぜひ求人を参考にしてみてください。
この記事の目次
働きながら司法書士を目指せる理由
冒頭でお話した通り、働きながら司法書士資格の取得は可能です。その理由は以下です。
受験資格を問われないから
司法試験は受験資格がありますが、司法書士試験の場合は受験資格に一切の制限がありません。学歴も、法律知識の有無も問われません。「司法書士を目指そう」と思いついたその日から、すぐに受験勉強に取り掛かれます。
実際に司法書士として活躍されている方の中には、大学進学していない方もいらっしゃれば、前職が異業種だった方もいらっしゃいます。今どんな仕事に就いているとしても、司法書士を目指すことは可能なのです。
受験可能回数に制限がないから
司法書士試験は、何回でも受験することができます。試験によっては受験回数が限られていることがありますが、司法書士試験は無制限です。例えば司法試験は「5年以内に3回まで」という制限があります。
これもまた、働きながら司法書士資格を目指せる理由の一つです。
補足ですが、合格までの受験回数は平均で4回前後と言われています。もちろん生活スタイルなどによっては1回で合格する方もいらっしゃれば、10回目でようやく合格というケースもあります。
年齢制限がないから
司法書士試験は年齢制限がありません。40代でも、50代でも、60代でも受けられます。
例をあげると、平成31年度(2019年度)の司法書士合格者の最低年齢は20歳、最高年齢はなんと72歳でした。さまざまな年代の方が、司法書士試験にチャレンジされています。
司法書士合格者の平均年齢や、現役司法書士の平均年齢について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧いただくとより理解が深まると思います。
司法書士の年齢に関する記事はこちら
「働きながら目指している人」「働かずに目指している人」の割合はどれくらい?
正確な数値は出せませんが、司法書士合格者のうち「働きながら司法書士に合格した人は8割」で「専業(仕事を辞め、受験勉強だけに専念)で司法書士に合格した人は2割」くらいです。多くの方が、働きながら司法書士に合格されています。
※「働いている人」の定義は「正社員」と「アルバイト」を含みます。
例を挙げると、司法書士合格者のうち、大体の方が以下のような状況で受験勉強をしていました。
- 企業に正社員として勤めながら受験勉強をしていた人
- 仕事を辞め、実家暮らしで受験勉強だけに専念していた人
- 司法書士事務所で補助者としてアルバイトをしながら受験勉強していた人
- 派遣社員やアルバイト等で最低限の収入を得ながら受験勉強の時間を確保していた人
ただし、ラストスパートをかけるために最後の1年は仕事を辞め、受験勉強だけをし始める方も結構いらっしゃいます。ある程度合格が見込める状況になったら、仕事を辞めつつ専業での受験を検討しても良いかもしれません。
働きながら司法書士を目指している人の現職や仕事
働きながら司法書士を目指している人は、どのような仕事に就いている(就いていた)のでしょうか?
ほとんどの方は「業務上で司法書士と密接に関わる職種」に就いていることが多いようです。もしくは「司法書士事務所」など、実務と関係のある場所で働く方もいます。例えば以下のような職種です。
- 不動産関係(賃貸、販売、マンション管理など)
- 金融関係(銀行員、信用金庫)
- 法律事務所(パラリーガル、補助者)
- 一般企業(将来のために資格を取って仕事の幅を広げたい)
- 保険会社(相続等)
もちろん、現在これらの職種に就いていなければ司法書士になれない、ということではありません。前述したように、司法書士試験に受験資格はないですし、誰でも目指せる資格なので現職を気にしすぎる必要はないです。
働きながら目指すことのメリットとデメリット
次に、働きながら司法書士資格を目指すことのメリットやデメリットをまとめます。多くの方は働きながら司法書士を目指していますが、だからと言って「働きながら目指した方が受かりやすい」と一概には言い切れません。これから紹介するメリットとデメリットを踏まえて、どのような受験勉強スタイルがご自身にとって適切なのか、見極めてみてください。
メリット1:資格取得後の転職活動が有利になる
働きながら司法書士に合格した場合、司法書士資格を取得した後の就職・転職活動が有利になります。社会人経験があると、司法書士事務所から歓迎されやすくなるからです。
司法書士は仕事の性質上、クライアントやお客様とコミュニケーションと関わる場面が多いです。そのため
- ビジネスマナー
- 対人折衝力
- 営業力
こういったコミュニケーション能力が求められます。「社会人経験があれば上のようなスキルは最低限身についている」と自然に理解されるので、働きながら合格された方は就職活動や転職活動で有利になるというわけです。
補足ですが、「社会人経験の長さや深さ」は、年齢が高ければ高いほど重視されます。社会人経験のない時間が長ければ、採用側(司法書士事務所側)も「この人を採用して本当に大丈夫なのか」と慎重になるからです。
正社員に限らず契約社員、派遣社員、アルバイトなどすべてが社会人経験としてみなされるため、社会人経験歴に不安がある方はちょっとしたアルバイトから始めてみるのも良いでしょう。
メリット2:金銭的余裕ができる
働きながら司法書士を目指すメリットの二つ目は「金銭的余裕ができること」です。
資格勉強をする際、人によっては教材費がかかります。テキストの購入だけでなく、通信講座や塾に通う場合は費用がさらに大きくなります。
また、司法書士試験合格後に受ける必要がある研修があり、約10万円弱かかります。そのためお金を稼ぎながら資格取得の必要経費にあてる方も多いです。
デメリット1:学習時間の確保が難しい
一方で、働きながら司法書士資格を目指すデメリットの一つに「学習時間の確保が難しくなる」ことが挙げられます。
司法書士試験合格に必要な勉強時間は約3000時間と言われています。例えば専業受験生として受験勉強をスタートした場合、1日約8時間~9時間の勉強時間を確保すると、1年で3000時間に到達します。
逆に働きながら受験する場合、1日に確保できる勉強時間は4時間と仮定すると、専業受験生の約2倍(つまり2年間)はかかると言えるでしょう。
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デメリット2:本業による支障が出る
本業での人間関係や仕事の疲れ、ストレスなどは常に生じます。その中で勉強を継続することは決して容易くはないでしょう。勉強量や知識量を培う必要がある一方で、精神力や忍耐力も求められることになります。
気合いや根性が求められます。勉強と孤独に向き合い続けられるかが問われます。
働きながら「独学で」司法書士試験に合格できるか?
司法書士試験に合格するための方法は基本的に
- 予備校に通う
- 独学で勉強する
の2通りです。昔は独学の選択肢はあまりなかったですが、今はYouTubeで試験対策を配信している方もいますし、オンラインのカリキュラムも充実しているので、一見独学で問題ないように思える部分もあります。しかし独学で受験勉強を進めるにあたり、懸念される点もいくつかあります。
独学に必要な目標設定と自己管理
独学で一番大事なのは「目標設定」と「自己管理」に尽きるでしょう。
まず目標設定についてですが、具体的には
- いつまでに合格するのか?
- そのためにいつまでにどこまで勉強を進める必要があるのか?
- そのために1日何時間の勉強が必要になるのか?
といった、合格までの逆算を設定することが大事です。
目標がはっきりしていないと最終的な司法書士試験のスケジュールに合わせて勉強を終えることが出来ませんし、少し遅れるとどんどん遅れてしまって、結局は間に合わないなんてことになりかねません。
また自己管理についてですが、独学は前述したように「己との戦い」です。誘惑に負けず毎日机に向かうことができるかが試されます。生半可な覚悟では到底突破できないでしょう。
独学は予備校に比べて勉強時間が長くなる傾向にある
予備校などに通わず、独学で勉強した方は、予備校に通って合格する方に比べて「合格するまでの期間が長くなっている」傾向にあります。
予備校に通った方は1年-3年程度で合格される方が多いですが、独学で勉強した方はそれ以上かかってしまう場合が多いです。もちろん例外もあるので一概にそうとは言い切れませんが、モチベーションを保ち続ける・短期間で合格するといった目標を達成するには、予備校に通った方が期間も短く済みそうです。
働きながら合格した方が実際にやっていたこと
働きながら資格取得するのは決して簡単ではありません。なのでここからは、働きながら受験勉強をしていた方々が、合格するために実践していたことを紹介します。勉強法や時間の使い方など、参考になる部分があるはずです。
隙間時間を上手く使う
隙間時間をとにかく活用して合格した方がいらっしゃいました。
- 早起きして朝1時間だけ勉強時間を確保する
- 往復の通勤電車の中で参考書を読む
- 昼食の休憩時間に勉強する
など、勉強に取り組める時間を捻出し、上手く活用しながら合格したそうです。日常生活の隙間時間に勉強時間を取り込み、習慣化できると良いですね。
ハードワークな職場を避ける
勉強時間を確保するために、なるべく残業がない職場を選んだ方がいらっしゃいました。本業で体力が奪われすぎると、帰宅後や休日は体力回復に時間が費やされ、勉強することが難しくなってしまいます。
ちなみに「受験勉強を応援する司法書士事務所」で司法書士補助者として働くのも一つの手段です。受験勉強に理解がある事務所で働くと、残業なしで帰らせてくれたり、融通がきくような働き方を提供してくれたりします。そのような司法書士事務所を見つけるには、司法書士の転職支援サービス「リーガルジョブボード」に相談されると良いでしょう。
睡眠時間を十分に取る
睡眠時間を意識的に取って、合格された兼業の方がいらっしゃいました。
睡眠時間は非常に大切です。記憶の定着は睡眠中に行われるからです。睡眠不足は勉強効率を悪化させるので、意識的に睡眠をとる必要があります。兼業だとどうしても夜に無理をしてしまいがちなので、なおのこと大事です。
その方は、「土日は夜更かしをしても良い日」「平日は6時間の睡眠を取る」と決め、勉強を継続していたようでした。
週末は携帯の電源をOFFにする
週末は携帯の電源OFFを徹底していた方がいらっしゃいました。週末は勉強時間を大きく確保できるタイミングであるため、誘惑を断ち切るような環境を作っていたとのこと。
中でもスマホは時間を奪われやすいので、電源を切って学問に集中していたようでした。
目標設定を明確にする
働きながらであろうと働かずに勉強をしている場合でも「いつまでに受かる」といった具体的な目標設定が一番重要です。働きながらだと時間が取れないのではないかと思われるかもしれませんが、意外と働きながら勉強している人の方が時間が限られている分、スケジュールの組み立て方がうまく早期で受かりやすい傾向もあります。
「いつまでに取得したい」という目標設定をし、逆算していつまでにこの部分、いつまでにこの内容といったように、合格までのスケジュールを明確にして取り組んでいくこと、併せてモチベーションを継続させ続けること、この二つを意識していくのがベストです。
働きながら司法書士試験に合格した実際のエピソードや合格体験記
ここからは、兼業で合格した実際のエピソードを掲載します。
司法書士の合格体験記①男性/30代/元公務員/受験回数4回
大学卒業から公務員として長年勤務していました。
公務員といっても部署によっては多忙な時期もあり、40~50時間程残業をしていたこともあります。
勉強を始めた当初は1歳の子供がおり、妻に協力してもらいながらも朝食など、家の手伝いは多少なりともしながら勉強をしていました。
4回の受験で、なかなか合格できないもどかしさを抱えつつも、家族に協力してもらいながら隙間時間を効率的に使い、勉強時間をどうにか捻出してきました。
通勤電車の中、お昼休みなど少しでも時間があれば、すかさずテキストを開いていました。公務員の年功序列で縦社会の世界不満があったので、今は司法書士で手に職をつけ、どんどんキャリアアップしていきたいと思っています。
新たな人生が開けたような感じで、これからが楽しみでわくわくしています!
司法書士の合格体験記②女性/30代/元補助者/受験回数9回
司法書士事務所で補助者として勤務しながら受験勉強をしていました。受験勉強に専念するため、残業はなく18時でほぼ帰れていたため、勉強時間は1日6時間ほどですがコンスタントに取れていました。
3年間は独学しましたが、これではダメだと思い予備校へ通い始めました。結構、試験勉強自体を楽観的に考えしまっていたため、全く受かりませんでした。5回目あたりで諦めようかと思いましたが、やはり未練があり引くに引けず、これまでの試験の振返りをし、予備校の先生に相談したりと真剣に向き合い
9回目でようやく受かりました。
結婚や出産、旦那さんの転勤などで環境が変化しても、職に困っていない女性の先輩司法書士を見ているので、やはり手に職をつけることができ良かったと思っています!
司法書士事務所で補助者として働きながら資格取得を目指すことについて
よく、司法書士資格を目指そうとしている方々から
「働きながら目指すなら、司法書士事務所で働きながら勉強した方がいいですか?」
と聞かれることがあります。
※資格がなくても、「司法書士補助者」として司法書士事務所で働けるのです。
結論から言うと「どちらとも言えない」です。司法書士事務所で働きながら資格取得を目指すのは、メリットとデメリットが存在するからです。
司法書士補助者について理解を深めたい方はこちら
メリット1:受験生に寛容
補助者として働きながら受験勉強を進めるメリット一つ目は、「司法書士受験生には理解があり、配慮してもらえること」です。
例えば、
- 残業時間を減らしてもらえる
- 試験1~2ヶ月前に試験前休暇がもらえる
など、一般企業にはないような待遇を受けることができる場合があります。
メリット2:資格取得後のキャリアに有利
メリット二つ目は、資格取得後の就職や転職活動が有利になることです。司法書士補助者としての経験があれば、即独立もしやすく、さらに1年目から支店長クラスのポジションを与えてもらえることもあります。
また、初年度の年収は300万円~350万円が相場ですが、補助者としての経験があれば400万円以上の待遇が受けられることも。野心のある方や早々に独立したいという方などは、司法書士補助者として勤務しておくとメリットが多いかもしれません。
メリット3:司法書士業界の動向を把握できる
三つ目のメリットは、司法書士業界の動向を把握できること。
いざ合格しても「自分はどの事務所を選べば良いんだろう」「どの事務所に転職すべきか分からない」など、不安を抱える方が結構多いです。
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司法書士補助者として勤務しておくことで一足先に業界の中に入り、世の中にどのような事務所があるのか、今後勤めるならどのような事務所が向いているのかなど、事前にリサーチできます。そうすることで資格取得後の転職がスムーズに進むはず。
メリット4:資格取得後に転職活動しなくて済む場合がある
資格取得後、司法書士補助者として勤めていた司法書士事務所で、そのまま資格者として働き始めるケースはよくあります。基本的に資格取得したあとは転職サイトなどに登録し、書類を作成し、面接をし、内定を獲得して初めて司法書士事務所に就職できます。
しかし補助者として事務所で働いていた場合、資格者になったあとも歓迎される場合があります。転職活動をショートカットできるのは良いですよね。
デメリット:司法書士補助者の実務経験は試験に有利にならない
「司法書士の実務経験があることで理解が早まる」「司法書士試験に受かりやすくなる」と思われる方がいらっしゃいますが、試験の点数にはほとんど影響がないと言われています。
確かに登記の申請書や添付書類を触れることができるため、イメージを掴むことは可能です。ただし、試験は不動産登記や商業登記だけではなく民法、会社法、憲法などさまざまな科目を勉強しなければなりません。
また、司法書士事務所は不動産がメインのところが多いため、試験に有利になる点は不動産登記のほんの一部分のみです。実際、司法書士合格者の中でも実務経験のない方が多い印象です。
試験に有利になるかもしれないという理由で司法書士補助者になることは、あまり意味がないため推奨しません。
司法書士資格を持つことの強みやメリット
補足として、司法書士資格の強みを解説します。働きながら司法書士を目指すには、それくらい司法書士資格というものが目指しがいのある資格だということを、理解することも重要です。モチベーションにつながりますから。
司法書士資格をこれから目指そうとしている方は、下記を参考にすることで、目指すべきかどうかの判断がしやすくなるはずです。
転職しやすくなる
司法書士資格を持っているだけで、司法書士事務所から非常に重宝されます。資格があれば全国どこでも転職できる、と言っても過言ではありません。
また経験者の有資格者は重宝されるため、経験があれば50代や60代の方でも問題なく転職できます。
それくらい司法書士資格は転職市場において強いのです。
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独立開業が比較的しやすい
司法書士は他の資格と比較すると、独立開業がしやすいです。必要になるものはあまり多くなく、開業場所が限定されることもありません。
自宅開業も可能なので、基本的な設備(PC、FAX、電話、複合機など)があれば開業できます。
女性でも活躍しやすい
近年では、産休や育休が取得可能な事務所が増えてきています。結婚や出産で退職することになったとしても、数年後に復帰される方は多数いらっしゃいます。
定年がない
司法書士資格に定年はありません。一生続けられる仕事です。65歳以上で活躍している先生が多いのも特徴です。
転職エージェントを活用すると就職がさらに有利に
司法書士の就職・転職活動をより有利にするには、転職エージェントを活用すること。おすすめの司法書士専門の転職エージェントサイトじゃ「リーガルジョブボード」です。司法書士補助者として働きながら資格取得を目指す方は多数いらっしゃいますので、もし転職をご希望される方はぜひリーガルジョブボードに相談してみてください。
転職エージェントサイトに登録すると、司法書士専門の転職エージェントが、
- あなたが活躍できる求人を紹介してくれる
- 書類・面接選考を徹底してくれる
- 年収を交渉してくれる
- キャリアステップの相談に乗ってくれる
など、転職支援を多方面から支援してくれます。
まとめ
以下が本記事のまとめです。
- 大体の方は働きながら司法書士資格を取得している
- 働くなら職場の選び方が重要となる
- 働きながら合格した方はさまざまな工夫をしていた
- 司法書士補助者として働くことは一部メリットがある
- ただし司法書士補助者として働くことで試験に有利になるわけではない