特許事務はなくなる?本当は将来性がある3つの理由と生き残るためのキャリアパス
by LEGAL JOB BOARD 小笠原
コンサルタント
- 担当職種:
こんにちは。特許事務専門の転職エージェント「リーガルジョブボード」の小笠原です。
本記事では「特許事務の将来性」について解説します。
具体的には、以下のような内容です。
- 特許事務の将来性がある理由
- 特許事務所から求められる特許事務の条件
- 特許事務として生き残るための方法
特許事務への転職を検討されている方、特許事務には将来性がないのではないかと不安に思っている方は、ぜひ参考にしていただきたい内容の記事です。
特許事務は年収が安定している反面、英語力や一般的な事務経験が求められます。
特許事務の業務について詳しく知りたい方、転職相談・診断をご希望の方は、以下のボタンからお気軽にお問合せください。
この記事の目次
【結論】特許事務は将来性あり
結論から申し上げますと、特許事務に将来性はあります。特許事務が属する「知的財産業界」や「特許出願件数」などの動向を踏まえながら、その理由を解説します。
理由1:知的財産業界はこれからも発展していくから
知的財産の業界はすぐに衰退するような業界ではなく、今後も発展が期待できます。
新しい発明・開発が生まれる限り、特許はなくてはならないもの。特許出願を行う特許事務所も必要な存在です。
近年、注目される動向として、スタートアップ企業の知財戦略拡大があります。スタートアップ企業には知財部がないため、特許事務所がコンサルティング的なサポートを行うケースも。これは、特許事務所のさらなるビジネスチャンスとなり得る動きです。
時代による多少の変化はあったとしても、知的財産が産業・ビジネスにおいて非常に重要であることは変わりません。今後さらに発展していく可能性も十分にある業界です。
理由2:出願件数は例年安定しているから
ここ数年の日本での特許出願件数は、おおむね横ばいで安定しています(※1)。
世界的には、新型コロナウイルス感染症によるパンデミック下でも、2020年のPCT国際出願件数が過去最高を記録しました(※2)。このことから知的財産業界は、パンデミックなどの外的な影響を比較的受けにくいと考えられます。
近年の特許出願件数に関しては、日本国内・世界ともに大きな増減は見られず、安定傾向にあります。特許出願件数が安定している以上、特許事務所の仕事が急に激減するといった心配はないでしょう。
※1 参照:日本貿易振興機構「世界の特許出願件数増加を中国が牽引 日本の出願件数は世界3位も伸び悩みが続く」
※2 参照:日本貿易振興機構「新型コロナ禍でも2020年の世界の国際特許出願件数は過去最高」
理由3:すぐにAIに取って代わられる仕事ではないから
特許事務の仕事には、クライアントとのやり取りや郵送など、人による対応が必要な業務が多くあります。そのため、この先すぐに仕事がなくなってしまうことはないでしょう。
社会全体に電子化・AI化が定着すれば、特許事務の業務内容に変化があるかもしれません。しかし、すぐにそのような状況になるとは考えづらいです。現状、電子化が進んでいる事務所は「全体の4割程度」。クライアントがペーパーレス化に対応できず、事務所の電子化を進められないケースもあるようです。
また、クライアントとのやり取りなど、気遣い・気配りが必要な業務はまだまだ人の力が必要。そのため、特許事務はすぐにAIに取って代わられる仕事ではないと言えます。
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特許事務として「生き残るための方法」
特許事務に将来性があるとはいえ、AI化・電子化が進むなかで「絶対に安定」とは言い切れません。特許事務になるのであれば、特許事務所から「この人がいなくなったら困る!」と思ってもらえるような人材を目指したいところ。
そこで、特許事務としての市場価値を高める方法をここから解説します。
英語力を活かしてマルチに活躍する
1つ目は、「英語力を活かしてマルチに活躍する」ことです。
英語力が必要な内外(日本の出願人が外国で出願)・外内(外国の出願人が日本で出願)事務の業務ができれば、強みになります。
日本の居住者による特許出願件数において、外国出願の比率が高まっています(※)。クライアントとのやり取りやコレポンでの細やかな対応、イレギュラー対応などをそつなくこなせる人材を目指したいところです。ハイレベルな英語力があれば、特許事務だけでなく特許翻訳の仕事にも対応できる可能性があります。
チャンスがある方は、英語力が活かせる業務にチャレンジし、マルチに活躍できる人材を目指しましょう。
※参照:日本貿易振興機構「世界の特許出願件数増加を中国が牽引 日本の出願件数は世界3位も伸び悩みが続く」
電子化・効率化を推進できる人材になる
2つ目は、「電子化・効率化を推進できる人材になる」ことです。
特許事務の転職市場で求められているのが、業務の電子化・効率化を推進できる人材。
知的財産業界は比較的、電子化に前向きな業界です。事務所がシステムの利用や業務の自動化を進めるとなれば、一定のITリテラシーが求められます。システム等の利用方法や流れを理解できるだけでなく、電子化をけん引できるとより良いでしょう。
電子化と関連して、業務効率化に自発的に取り組める人材も歓迎されます。具体的には、業務フロー化やマニュアル作成などです。
電子化や効率化は、自身の働きやすい環境づくりにも繋がります。安定して長く働きたい方ほど特に意識したいですね。
特許事務の一連の業務を経験する
3つ目は、「特許事務の一連の業務を経験する」ことです。
大手の特許事務所は「分業制」で、特定の業務を専門的に行うケースが多いです。一方、中小規模の事務所は一連の業務を経験できるケースが多く、幅広く経験が積めます。
一連の業務を経験した方が良い理由は、分業制で担当している業務によっては将来性が危ぶまれるためです。特に、年金管理や期限管理などは、既に電子化・AI化が進みつつあります。そのため、将来的には専門で業務を担う人が必要なくなる可能性も。
年金管理や期限管理など、電子化・AI化しやすい業務の経験しかない方は、できる限り他の業務も経験しておいた方が安心でしょう。
経験している業務内容が将来性を左右する
特許事務としての将来性は、経験したことのある・担当している業務内容によって異なります。
かなり端的に言うと、
- 国内事務だけでなく、外国(内外・外内)事務の経験あり
- 特定の業務のみでなく、一連の業務経験あり
という方が、「将来性」の観点からはベターです。
もちろん、上記2点を必ず満たす必要はありません。ですが、総合的な知識・経験があれば、自身の特許事務としての価値をグッと上げることができます。
特許事務は資格がある職種ではありません。その分、いかにしてスキルや経験を磨くかが重要になります。将来性を高めるために、幅広い業務経験を積んでおきたいですね。
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将来性のある特許事務所の特徴
特許事務として長く働き続けるためには「事務所選び」も重要です。将来性のある特許事務所によく見られる特徴3つを、以下で詳しくご紹介します。求人リサーチの参考にしてください。
取り扱うクライアントが幅広い
1つ目の特徴は、「取り扱うクライアントが幅広い」ことです。
特定のクライアントに限らず、幅広いクライアントから仕事を受けることはリスクヘッジになります。
クライアントに偏りがあれば、そこからの案件が減少したり、なくなった場合に大打撃を受ける可能性が高いです。経営不振や、最悪の場合は廃業に繋がりかねません。
一概には言えませんが、様々なクライアントから案件を受けている事務所の方が、将来的に安心でしょう。
また、出願件数が増加している事務所は経営が好調なことが多いです。取り扱うクライアントと共に、出願件数も確認しておくのが良いかと思います。
トップの高齢化による事務所閉鎖の心配がない
2つ目の特徴は、「トップの高齢化による事務所閉鎖の心配がない」ことです。
「代表の引退が近づいている」「後継者が不在」といった場合、事務所の存続自体が難しい可能性があります。実際に、代表が高齢になったことで、事務所を閉鎖するケースも少なくありません。
そうなれば当然、特許事務も職を失うことになります。弁理士業界は高齢化が進んでいるとされており、特許事務所の代表や経営陣に関しても同様だと考えられます。
代表の進退・後継者の有無を含め、経営は今後も安定していそうか、事務所選びの段階でできるだけ確認しておきたいところです。
電子化などの業務改善に積極的
3つ目の特徴は、「電子化などの業務改善に積極的」なことです。
電子化・効率化にともなうシステム導入や業務の自動化は、作業の無駄を省き、クオリティ向上に繋がります。そのほか、残業による人件費などの削減も期待でき、事務所の経営にプラスに働くと考えられます。
また、電子化などの新しい動きを取り入れることは、所員が働きやすい環境づくりにも関係します。実際、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、在宅勤務・在宅勤務と出社の併用などを実現できた事務所の多くは電子化に対応していました。
電子化に限らず、業務改善に積極的か否かは、事務所の経営や働きやすさに影響します。安定して長く働きたい方は、ぜひチェックしてみてください。
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特許事務の平均年収|将来的にどのくらい稼げる?
ここで、特許事務に転職した場合・転職後に勤務し続けた場合の平均年収をご紹介します。
特許事務の平均年収は、350~400万円程度です。経験年数に応じた年収の目安は、以下の表をご覧ください。
経験年数 | 年収の目安 |
未経験 | 年収300万円 程度 |
3年程度 | 年収320万円 程度 |
5年程度 | 年収350万円 程度 |
10年程度 | 年収400万円 程度 |
10年以上 | 年収450万円~ 程度 |
※フルタイム正社員の場合。残業代は含まない。
また、ここ数年は新型コロナウイルス感染症による不況の危機もありましたが、特許事務の年収相場は特に変動していません。パンデミックなどの外的要因の影響を受けにくい職種だと言えるでしょう。
特許事務の年収について、より詳しく知りたい方は下記の記事をご確認ください。働き方や年齢など、条件に応じた年収も分かりやすく解説しています。
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特許事務のキャリアパスについて
ここからは、特許事務のキャリアパスについて解説します。一般的なキャリアパスのほか、特許事務から関連職種への転職について表にまとめました。
特許事務への転職を考えている方、すでに特許事務として働いている方、どちらにも参考にしていただける情報です。
特許事務の一般的なキャリアパス
特許事務としてのキャリアを積んでいくと、将来的にはチームリーダーなどの管理職になれます。
しかし、多くの特許事務の方は「安定して働ける」ことを重要視しています。そのため、キャリアアップやハイクラス転職を狙うよりも、特許事務としての仕事を極めてスペシャリストを目指すケースが多いです。
特許事務の仕事には国内事務・外国事務があり、その中にさらに様々な業務が存在しています。一通りの業務を迅速かつ正確に行えるようになるのは、容易なことではありません。特許事務の仕事で培われる「英語力」や「ハイレベルな事務処理能力」は、仮にキャリアチェンジをすることになったとしても役立つでしょう。
特許事務から関連職種への転職は可能?
特許事務と関連する他職種へのキャリアチェンジについて解説します。
特許事務としてのキャリアを考えた際、
- 知財・特許関連の他職種への転職は可能なのか
- 特許事務と近しい事務職の「商標事務」や「貿易事務」への転職は有利になるか
といったことが気になる方は、ぜひ参考になさってください。
特許事務を目指す方や特許事務として働く方とお話をする際、実際によく質問される職種について、以下の表にまとめました。
職種 | 解説 |
---|---|
弁理士 | 特許事務と弁理士の業務内容は全く異なります。そのため、特許事務として働きながら、弁理士を目指すのは歓迎されないのが実情です。弁理士を目指す方は、特許技術者として働くのがおすすめです。 |
特許翻訳 | 特許翻訳は明細書の翻訳が主な仕事で、ハイレベルな英語力や高度な専門知識が必要。特許事務として働くなかで、素質を見出されて特許翻訳に転向する方も稀にいます。 |
商標事務 | 特許事務から商標事務・商標事務から特許事務、ともに転職可能ですが、基本的に未経験扱いとなります。ですが、専門的な事務職という点は共通しており、まったくの未経験よりは有利でしょう。 |
貿易事務 | 貿易事務は、貿易に関する事務全般を担います。特許事務から貿易事務に転職する方はあまりいません。逆に、特許事務の方が新しい知識を学び続けられるといった理由で、貿易事務から特許事務に転職するケースはよくあります。 |
特許事務に転職すべきかお悩みの方、特許事務の求人をお探しの方は、特許事務専門の転職エージェント「リーガルジョブボード」にご相談ください。キャリア・転職相談や求人紹介、選考対策など、プロが全面的にサポートいたします。
将来性についてよくある質問
特許事務を目指す方から、特許事務の将来性に関する「よくある質問」3つを下記にまとめました。転職を検討中の方は、ぜひご参考になさってください。
Q.大手の特許事務所に入れば安定でしょうか?
A. 一概に「大手だから安定」とは言えません。
事務所の将来性は規模感よりも、持続的な経営が可能か否かに左右されます。
「将来性のある事務所の特徴」で前述したように、
- 幅広いクライアントから仕事を受けているか
- トップの引退による廃業の心配がないか
- 電子化などの業務改善に積極的か
などを参考にしながら、事務所選びを行っていただければと思います。
また、大手事務所は分業制のケースが多いです。一連の業務経験を積みたい方は、
- 分業制なのか
- 部署・チームの移動は可能なのか(複数の業務を経験できるのか)
といった業務体制を事前に確認できると良いでしょう。
Q.特許事務のモデル年収を教えてください
A. 未経験で年収300万円~、経験5年で年収350万円、経験10年で年収400万円程度です。
特許事務は経験年数とスキル・能力が比例しやすいめ、勤務が長くなるほど年収も上がる傾向にあります。経験10年を超えると、年収450~500万円という方もいます。
ちなみに、特許事務の平均年収は350~400万円程度。年収相場の下限は300万円、上限は500万円程度です。
年収は「経験年数」だけでなく、「勤務形態・働き方」「勤務地・エリア」などによって多少変動する可能性があります。
Q.国内事務から外国事務への転向は可能ですか?
A. 結論から申し上げますと可能です。
ただ、事務所ごとの業務体制や内部状況によっては、不可能な場合も。
- 国内事務から外国事務に移動できる体制ではない
- 人員不足によって当面移動は不可能
といったケースもあり得ます。
「どうしても国内事務から外国事務に移動したいが、今の事務所では無理」となれば、転職も視野に入れる必要があるでしょう。
実際に、「英語力はあるが、未経験だから国内事務から始めて、外国事務に移りたい」という方もいます。しかし、英語力があり、いずれは外国事務を経験したいのであれば、初めから外国事務を視野に入れて転職活動をするのがおすすめです。
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