弁護士
アソシエイト弁護士とパートナー弁護士の役割・違いは?なり方も解説

アソシエイト弁護士とパートナー弁護士の役割・違いは?なり方も解説

by 大阪弁護士会所属 弁護士M

弁護士(14年目)

担当職種:
  • 弁護士
アソシエイト弁護士とパートナー弁護士の役割・違いは?なり方も解説

こんにちは。弁護士専門の転職エージェント「リーガルジョブボード」です。本記事では、弁護士12年目である私から「アソシエイト弁護士とパートナー弁護士の違い」について解説します。

アソシエイト弁護士のキャリアアップ方法についても触れているので、これからアソシエイト弁護士になる方や、アソシエイト弁護士としてキャリアアップしたい方は必見です。

パートナー弁護士のなり方についても触れているので、将来的に独立や経営を担いたいと考えている弁護士の方もご覧ください。

あわせて読みたい記事はこちら

アソシエイトとパートナーの違い

アソシエイト弁護士は「法律事務所で雇用されている弁護士」、パートナー弁護士は「法律事務所の経営を行う弁護士」を指します。

「雇用される側とする側」というのが、アソシエイト弁護士とパートナー弁護士の違いです。

ここからは、それぞれの詳細や、アソシエイト弁護士のキャリアアップ方法、パートナー弁護士のなり方になどを解説します。

アソシエイト弁護士とは

アソシエイト弁護士とは、前述のとおり「法律事務所で雇用されている弁護士」のこと。

他の言い方で「イソ弁」と言われたりもします。「イソ弁」とは、「居候(いそうろう)弁護士」の略称です。

これは、一般的に弁護士は、司法修習を終えて弁護士になるときに法律事務所で雇われ、パートナー弁護士の指導を受けながら執務して経験を積んで、一定の期間勤務したら独立することが多いことから、「一定の期間、法律事務所に居候する弁護士」というところに由来します。

あわせて読みたい記事はこちら

法律事務所での勤務期間が5年以下のアソシエイト弁護士を「ジュニアアソシエイト」、5年を超えるアソシエイト弁護士を「シニアアソシエイト」と言うこともあります。ただ、ジュニアアソシエイトとシニアアソシエイトに明確な違いがあるわけではありません。

アソシエイト弁護士の業務内容

基本的にアソシエイト弁護士は、法律事務所を経営するパートナー弁護士の部下として執務します。

パートナー弁護士が受任した事件の相談を一緒に受け、書面の下書きを作成し、証拠の整理等、パートナー弁護士の補助がまず一番の業務内容です。

そうしてパートナー弁護士の相談者への接し方を学んだり、パートナー弁護士に自身が作成した書面のチェックをしてもらったりして経験を積んでいきます。

また、パートナー弁護士の顧問先から契約書の作成、チェックを依頼された場合には、アソシエイト弁護士がまずこれらを行い、最終的にパートナー弁護士の確認を受けて顧問先に提出したりします。

つまり、アソシエイト弁護士は、パートナー弁護士の手足となってパートナー弁護士の業務を補助するのが最も重要な業務です。そうすることで自身の経験値を上げていきます。

他には、弁護士会から割り当てられた刑事当番や法律相談等が主な業務です。

アソシエイト弁護士の収入

弁護士の収入は、依頼者からの相談料、着手金・報酬、顧問先からの顧問料等が主で、パートナー弁護士は、その収入が自身の収入となります。

それに対し、アソシエイト弁護士は事務所に雇用されているので、基本的には事務所から一定の給与(月給、年俸)という形での収入が主です。固定給なので、毎月の売上等に関して少し気が楽な面があるかもしれません。しかし逆に、極端に収入が上がることも少ないので、どちらを良いとするかは各々の考えによるでしょう。

法律事務所からの給与額は、各法律事務所との契約なので一概には言えませんが、一般的には年600~800万円程度の法律事務所が多いように思います。

最近は弁護士の増加により経営状況が良くない法律事務所もあり、これよりも少ないところもあるでしょうし、一方で勤務開始当初から年1,000万円を超える事務所もあると聞きます。昇給制を採用している法律事務所もあるでしょう。

こうした法律事務所からの給与の他に、自身が直接受任した事件の着手金、報酬や、弁護士会から割り当てられる国選刑事事件の報酬、法律相談の報酬等もあります。これは、自身がどういう内容の事件をどれだけ受任するかに寄りますので、一般的な金額を出すことは難しいです。

また、自身が直接受任した事件を「個人事件」と呼び、その着手金・報酬の一部を法律事務所の収入とすることを決めている事務所も多いです。よく聞くのは、7対3の割合で、3割を法律事務所の収入とするケースです。法律事務所に所属する際、最初に個人事件の配分を決めることが多いです。

アソシエイト弁護士になる方法

アソシエイト弁護士は、法律事務所に弁護士として採用してもらうので、司法試験に合格して就職活動をすることになります。

司法試験の合格者が少なかった頃は、合格したらどこかの法律事務所から声がかかる、弁護修習先の法律事務所にそのまま就職する、弁護修習先の先生から紹介してもらった法律事務所に就職するなど、積極的な就職活動をせずとも就職できるケースが多くありました。

しかし、合格者が増えた現状では、司法試験の合格直後から修習期間にかけて就職活動を行い、就職試験や面接を経て、採用してもらうケースが増えています。

司法試験に合格したといえ、弁護士としての経験は全くないので、最初はどこかの法律事務所でアソシエイト弁護士として指導を受け、スキルを身につけるのが第一歩かと思います。

また、それまで勤めていた法律事務所を辞めて別の法律事務所に移籍する、中途採用というような形でアソシエイト弁護士になることもあります。

アソシエイト弁護士がキャリアアップする方法

では、アソシエイト弁護士がキャリアアップする方法をまとめます。

まずは事務所の案件を誠実にこなすこと

アソシエイト弁護士は、勤務しながら学んでいる状態です。

所属する法律事務所の事件を処理する中で、先輩弁護士の依頼者・相手方への対応の仕方、書面の書き方などを学んでいきます。自分が作った書面を先輩弁護士がどう修正したか、それはなぜかなどを考えながら執務することがキャリアアップへの近道です。

アソシエイト弁護士は、所属する法律事務所を学びの場だと思い、誠実に案件をこなすことがなによりも重要でしょう。

弁護士会が実施する研修を受けること

弁護士には、必ず所属する弁護士会があります。東京は3つの弁護士会がありますが、他の道府県は一つの弁護士会があります。

その弁護士会では、弁護士や第三者が講師となって研修が行われています。

知的財産、交通事故、破産といった様々な分野で、第一線で執務している弁護士が講師となって研修が行われるので、こうした研修を受けることで、他の弁護士の知識や問題意識を学ぶことができます。

最近では、日弁連のEラーニングもあり、オンラインでの研修受講も可能です。

弁護士会の活動に参加すること

各弁護士会には、消費者委員会や労働者委員会など、分野ごとに弁護士らで構成する委員会があります。

こうした委員会に参加したり、その委員会の弁護士と共同で事件を受任することで、弁護士の案件処理や書面作成などの方法を学べます。

加えて、委員会活動を介して受任する事件は、社会的に注目される重要な事件であることもあります。そのような事件を共同で受任することは、自身のキャリアアップにつながる側面もあります。

パートナー弁護士とは

パートナー弁護士とは、法律事務所の経営に携わる弁護士のことです。

法律事務所の所長弁護士を「ボス弁」(ボスの弁護士)と言うこともあります。

弁護士2人以上が共同して法律事務所を経営している場合は、共同経営者の弁護士全員がパートナー弁護士となります。

会社の社長(代表取締役)と取締役のように、経営者間で上下関係を決めている法律事務所もあるでしょうし、上下関係なく平等にしているところもあるでしょう。

パートナー弁護士の業務内容

パートナー弁護士の業務内容は、弁護士業務全般です。

法律相談を受け、事件を受任して処理すること、顧問先からの相談対応、その他にも講演会や法律関係の本の執筆など、業務は多岐にわたります。新しい事件の受任、顧問先獲得など、いわゆる営業活動も業務の一つでしょう。

パートナー弁護士は、こうした弁護士業務を自由に行えます。

また、アソシエイト弁護士を雇っている場合には、アソシエイト弁護士に仕事を割り振って監督することも業務内容の一つです。

パートナー弁護士の収入

パートナー弁護士の収入は、各々の業務内容により大きく異なります。

受任した事件の着手金・報酬、顧問料、講演料、本の執筆料など、業務内容に応じて様々な収入源があります。それらの収入から事務所の経費(賃料、水道光熱費、人件費など)を控除した分が、純粋なパートナー弁護士の収入です。

業務内容が多岐にわたるので平均を出すのは難しいですが、なかには数千万円や億を超える収入を得ている弁護士もいるでしょう。

ただ、アソシエイト弁護士と比較すれば、アソシエイト弁護士よりも多くの収入を得ている弁護士が多いと思います。

パートナー弁護士になる方法

パートナー弁護士とは、経営者です。

司法試験、修習を経て、すぐに独立してパートナー弁護士となることもできます。これは「即独」(即独立する、の略)と言われています。

あわせて読みたい記事はこちら

あわせて読みたい記事はこちら

ただ、一般的には法律事務所でアソシエイト弁護士として何年か勤務してから、独立してパートナー弁護士となるケースが多いです。

独立する際に、他の弁護士と共同で法律事務所を立ち上げることもあり、この場合は共同経営者としてのパートナー弁護士になります。

また、アソシエイト弁護士として勤務していた法律事務所で経営者側に入り、パートナー弁護士となることもあります。

(補足)オブカウンセルとは

弁護士の役職である「オブカウンセル」について、アソシエイトやパートナーとの違いについて聞かれることがよくあるので補足します。

法律事務所によっては、「オブカウンセル」という役職が設けられています。オブカウンセルとは、パートナー弁護士でもアソシエイト弁護士でもない、顧問のような人のことです。

オブカウンセルになるのは、弁護士とは限りません。専門家にオブカウンセルとして法律事務所に入ってもらい、受任した案件に意見を出してもらったり、アソシエイト弁護士の指導をしてもらうことがあります。

所属弁護士が数十人を超えるような大規模事務所であれば、オブカウンセルが置かれていることがあるでしょう。

オブカウンセルの業務内容

法律事務所が受任した案件について、専門家としての助言や指導を行うのが主な業務内容です。

オブカウンセルの収入

オブカウンセルの収入は、案件の数や意見の質や量により、法律事務所と協議して決められることが多いです。

オブカウンセルになる方法

法律事務所から、「この人は専門知識を有していて、事務所に必要だ」と思われることが大切です。

特許などの知財事件を多く扱う法律事務所では、専門性の高い弁理士をオブカウンセルとしている場合があります。

ただ、オブカウンセルを置いていない法律事務所の方が多く、なかなか難易度が高いでしょう。

この記事の執筆者

大阪弁護士会所属 弁護士M

弁護士(14年目)

担当職種:
  • 弁護士

大阪弁護士会に所属する、登録14年目の弁護士。大阪大学法学部卒業後、一般民事事件を主に取り扱う法律事務所に勤務。弁護士業務に従事しつつ、法的内容を扱う記事監修も行っている。

この記事をシェアする

関連する記事

このサイトの監修者・著者