
土地家屋調査士はやめとけ?|きつい•仕事がない•オワコンと言われる理由を徹底解説

by LEGAL JOB BOARD 篠原
転職エージェント
- 担当職種:

こんにちは。土地家屋調査士の転職エージェント「リーガルジョブボード」の篠原です。
本記事では、「土地家屋調査士はやめとけ」と言われている理由を解説します。
具体的には、以下のような内容です。
- 土地家屋調査士はやめとけと言われる理由5選
- 土地家屋調査士資格がおすすめな理由3選
- 活躍する土地家屋調査士になるためのポイント
土地家屋調査士業界について調べる中で、「年収が低い」「仕事がない」「つらい」などネガティブなキーワードを見かけて不安に思っている方は、ぜひ最後までご覧ください。
土地家屋調査士とは
土地家屋調査士とは、不動産登記の表題部の登記申請をお客様の代理で手続きを行う職種です。
具体的には、土地や建物の所在、形状、広さ等を調査・測量をして、図面作成を行った後に登記申請を行います。いわゆる八士業(※)の中の一職種です。
土地家屋調査士の仕事内容・業務の流れなど、詳しく知りたい方は以下の記事や動画をご覧ください。
※八士業:職務上、住民票や戸籍謄本などを請求することが認められている士業職種のこと。
土地家屋調査士はやめとけと言われる理由5選
土地家屋調査士は不動産の売買には欠かせない存在で、専門性も高く資格取得の難易度も高いので市場価値は非常に高いです。
では、なぜ「土地家屋調査士はやめとけ」と言われているのでしょうか。理由を解説していきます。
1. 初年度年収が下がる可能性が高いから
土地家屋調査士業務の経験がない方の初年度年収は約350〜400万円(※)です。
※内訳:月給25万円×12ヶ月+賞与 約2ヶ月分(雇用先の事務所・法人によって変動の可能性あり)
土地家屋調査士の合格者平均年齢が40歳前後(※1)ですので、同年代の平均年収である495万円(男女含む)に比べて年収が低くなる傾向にあります。また、受験生の約9割が男性ということを考えると、同年代男性の平均年収562万円よりも150万円以上下がってしまいます。
これには、土地家屋調査士業界は実力主義であるという理由が大きく影響しています。一般企業での社会人経験は基本的に考慮されないため、現職の年収より低くなる可能性が大いにあります。
初年度年収は約350〜400万円ですが、事務所によって残業代の支給方法(固定残業代もしくは残業代全額支給)、資格手当の有無、福利厚生によって支給額に変動があります。そのため、求人票に記載のある給与についてチェックすることをおすすめします。
※1:法務省 令和4年度土地家屋調査士試験の最終結果について を参照
※2:doda 平均年収ランキング(年齢・年代別の年収情報)【最新版】を参照
2. 業務の拘束時間が長いから
土地家屋調査士は、複数の現場を同時に抱えることが多く、長時間労働になってしまう可能性があります。
現場には車で向かうことがほとんどですが、現場が事務所から遠かったり、渋滞に巻き込まれたりすると、移動に2〜3時間を要することも。そのため、通勤・帰宅ラッシュを避けて移動する傾向にあり、事務所を早朝に出発することが多いです。
複数の現場を終えた後、16〜17時頃事務所に戻り、測量を行った現場を図面に落とし込む作業をします。複数の案件を担当していたり、測量現場が広大だと、書類収集や図面作成に時間がかかってしまうため22〜23時頃まで残業をすることもあります。
土地家屋調査士業界の残業時間は月平均30〜40時間程度ですが、忙しい事務所だと月80時間を超える場合もあるようです。
また、土地家屋調査士資格者の重要な業務である「境界立会」は、一般のお客様と平日にアポイントを取ることが難しく、土日に出勤することもあるため休日に丸一日休めないこともあります(※代休取得制度を設けている事務所もあります)。
3. ブラックな事務所も一定数残っている
社員の働き方・就業環境を改善するために尽力されている事務所や法人も多くありますが、すべてとはいいきれません。中には、古い慣習が残っており、いわゆる”ブラック”な労働環境が改善されていない事務所もあります。
労働環境に関するリーガルジョブボードへの相談事例を一部ご紹介します。
- 今まで残業代が支払われたことがない
- 面接時に提示されていた給与と実際に振り込まれた給与が違った
- 法定労働時間を超える残業が半年以上続く
- 理不尽に罵声を浴びせられる
土地家屋調査士事務所もしくは法人へ就職・転職を考えるときは、上記のような事務所へ転職しないようお気をつけください。
ブラックな事務所を避けるためには、雇用されたときに労働条件通知書(※)を必ず発行してもらうことが重要です。労働条件通知書を受け取らないと、後々の金銭トラブルに繋がりますので必ず発行してもらいましょう。
※労働条件通知書:労働基準法で「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と規定されています。
4. 一人前になるまでに時間がかかる
機械操作、測量、図面作成、境界立会、登記申請といった一連の業務を一人前にこなせるようになるまで「一般的に3〜5年かかる」と言われています(※就業地域・事務所の方針・個人のポテンシャルによって変動あり)。
一人前になったと判断される基準としては、下記の通りです。
- 売上を年間2000万円以上あげることができる
- 案件の受注から納品まで2〜3ヶ月で終わらせることができる
- 1ヶ月に確定測量の案件を5件以上できるようになる
※上記は土地家屋調査士事務所・法人の代表から実際にお伺いした内容ですが、事務所によって差があります。
土地の形状や状態がさまざまのため、多くの案件を経験して場数を踏むことが重要になります。5年以上の経験者であってもそれ以上のベテランにアドバイスを求めたり、法務局の方と相談しながら進めるといったケースもあるようです。
5. 独立・開業で必ず成功するわけではない
多くの方は「手に職をつけて独立をしたいから」という理由で、土地家屋調査士を目指す傾向にあります。確かに、土地家屋調査士は士業の中でも、比較的独立をする方が多い職種です。
しかし、近年ではコロナや高齢化の影響で閉業する事務所も増えています。よくある閉業理由は以下の通りです。
- 独立・開業にかかった費用と売り上げが合わず経営維持ができなくなった
- 案件を受注する営業先のパイプをうまく作ることができなかった
- 人を採用したかったが良い人材が集まらなかった
独立・開業を目指している方は、この内容も念頭に置いておくと良いでしょう。
土地家屋調査士資格をおすすめする理由3選
「土地家屋調査士はやめとけ」と言われている理由を解説しましたが、土地家屋調査士には魅力・やりがいなども多くあります。
ここからは、土地家屋調査士資格の取得をおすすめする理由も解説します。
特に高齢化が進んでおり世代交代をしようとしている業界ですので、そのタイミングをチャンスと捉えて資格取得することで活躍が期待できます。
1. 独占業務があるから
土地家屋調査士しか行えない独占業務があるため、他資格などに仕事が奪われることはないでしょう。
独占業務である「境界立ち会い」と「登記申請」について、以下で解説します。
境界立ち会い
土地の境界を明確にするために行われる非常に重要な業務で、関係者(売主・買主・隣地所有者)を集めて、現地で土地の境界を確定します。不動産取引や相続案件の際に必要で、関係者間の紛争を防ぐ目的で行われます。
登記申請
土地家屋調査士が確定測量を行い、土地の所有権や権利を明確にすることで、法的に登記簿上の変更手続きを行います。
2. 独立・開業ができるから
自身で事務所や法人を立ち上げることで、柔軟な働き方や高い収入を実現することも可能です。
技術職のため、スキル・経験次第で年収1000万円以上も夢ではありません。自分の力で稼ぎたい!という方には大変おすすめです。
土地家屋調査士の資格があればすぐに開業することもできますが、どこかの事務所・法人で修行してから独立開業する方が多いです。
また、開業にはそれなりのお金が必要になるため、事前にどれくらいの費用がかかるかを把握しておくのが良いでしょう。
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3. スキルがあれば独立しなくても高年収が期待できるから
実力主義のため、スキル・技術が身についていれば、独立をしなくても高収入が期待できます。
一人前になると複数の案件を受注し、事務所の売上に貢献できます。そうすると代表から評価をしてもらえるので、どんどん昇給をしていきます。
代表から認められる方は、転職先でも同じように評価をしてもらえる可能性が高いので、年収アップや待遇が良くなることが多いです。
具体的には、事務所・法人の役員クラス、新しく出店した際の支店長、支店のマネジメントを任されるリーダーポジションに就くと、ぐんと年収が高くなります。
最近は法人化する事務所が多く、役職に就けるチャンスも自然と多くなってきます。現時点で独立するか決めていないという方は、このようなキャリアがあることを念頭に置いておくと、転職先の幅が広がるでしょう。
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長く活躍できる土地家屋調査士になるには
独占業務があり、将来性のある土地家屋調査士ですが、長く活躍するために押さえておきたいポイントがいくつかあります。
ポイント1. 職場環境が整っている場所で修行する
「土地家屋調査士はやめとけ」と言われている理由でも解説した通り、ブラックな環境の事務所があるのが実情です。
”修行の期間だけ”と我慢することもできますが、その働き方を続けて心身を壊してしまっては元も子もありません。
多少のハードワークが必要な時もありますが、法廷労働時間を超える月が何度もあったり、金銭面のトラブルが発生する場合は、我慢せずに転職を検討するのがおすすめです。
ポイント2. 考え方の合う代表と一緒に仕事をする
土地家屋調査士事務所・法人は、代表によって業務の進め方・事務所の経営方針などが様々です。
特に個人事務所の場合、代表と一緒に仕事をすることになるため、考え方が違うと一緒に働くことがストレスになります。その結果、就職・転職活動をどれだけ頑張っても早期退職に繋がってしまいます。
また、独立を考えている方は、転職先の事務所が「将来的に独立してもOKか」という点も確認しておきましょう。事務所によっては、「できる限り独立はしないでほしい…」ということもあります。
お世話になった事務所とのトラブルを避けるためにも重要なポイントです。業界内で関係性を壊してしまうと、後々の仕事に支障が出る可能性があるので十分注意しましょう。
ポイント3. 業界情報の収集と自己分析を丁寧に行う
就職・転職の面接時に以下の質問に答えられないと、事務所から内定を獲得するのは難しいでしょう。
- 多くの士業資格がある中で、なぜ土地家屋調査士を選んだのですか?
- あなたの強みはなんですか?その強みをどのように業務で活かしていきたいですか?
- 土地家屋調査士としてどのように活躍していきたいですか?
- ご自身のキャリアプランを教えてください。
- 辛いことがあったときはどのように乗り越えますか?
上記のような質問に備え、業界情報の収集と自己分析を徹底的に行うことが重要です。同時に、自分の強みや業界での活躍の仕方も分かってくるでしょう。
業界に飛び込んでから「やめておいた方がよかった…」「そもそも自分には向いていない…」と後悔しないためにも、情報収集・自己分析は行うのがおすすめです。
特に未経験の場合、「知り合いがいなくて業界の情報収集ができない」「自己分析ってどうやって進めていったらいいの?」と不安に思っている方が多い印象です。
そのような方は、まず土地家屋調査士業界に精通しているエージェントに相談してみてください。
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これから土地家屋調査士を目指す方へ
「土地家屋調査士はやめとけ」と言われることもありますが、資格者にしかできない独占業務があり、独立開業など夢のある仕事です。
ただ最初に学ぶ事務所によって将来的に大きな差がつくことがありますので、ファーストキャリア選びは慎重になった方がよいでしょう。
「ファーストキャリアの選び方に不安がある方」「最新の業界の情報を収集しておきたい方」「そもそも自分が土地家屋調査士に向いているかわからない方」は一度エージェントにご相談ください。
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