
土地家屋調査士とは?仕事内容やなり方・年収・将来性などを徹底解説

by LEGAL JOB BOARD 篠原
転職エージェント
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こんにちは。土地家屋調査士の転職エージェント「リーガルジョブボード」の篠原です。
本記事では、「土地家屋調査士の仕事内容やなり方、年収、将来性」などを解説します。
土地家屋調査士に向いている人の特徴や、現役の土地家屋調査士に聞いた仕事のやりがいも紹介します。
土地家屋調査士に興味をお持ちの方、具体的な業務や年収が気になる方など、ぜひ最後までご覧ください。
土地家屋調査士とは
調査士(土地家屋調査士)は、土地や建物の表示に関する登記に必要な調査、測量、申請手続きなどを行います。
そこまで馴染みのない方もいらっしゃると思いますが、私たちの生活になくてはならない仕事なのです。詳しくみていきましょう。
業務内容
「登記に関する調査や申請」は調査士にしかできない仕事となっているため、
- お隣さんの家との境界線がわからない
- 相続などで土地を分割したい
- 畑だった土地に家を立てたい
- 新築・増築したい
このような時に彼らが必要となってきます。
また、建物を造成するために必要な不動産の範囲を明確にするために境界標を設置する(確定杭を地面に埋め込む)作業も調査士の仕事です。
基本的に、測量のない登記と測量を伴う登記があり、
- 測量のない登記→3週間
- 測量を伴う登記→2〜3ヶ月程度
が目安です。
中々時間のかかる業務であるにもかかわらず、住民トラブルや交渉がうまくいかないと登記まで辿りつかず、収益を得られない場合も少なくはないと聞きます。
大変な仕事ですが、その分登記が完了した際の達成感や住民から受ける感謝は何にも変えがたいものです。
測量を伴う基本的な業務の流れ
❶依頼を受ける
❷法務局や役所での調査(土地要約書や区画整理確定図などの資料を確認)
❸隣地や関係者へ挨拶
❹依頼された土地・建物の調査・測量
❺測量データの整理
❻隣接地で境界の立ち合い(データに基づき境界線決めに納得してもらう)
❼確定測量(確定杭を地面に埋める)
❽書類作成し、法務局へ分筆登記申請
❾登記完了証の受領・測量の成果品作成
調査士は、業務上「測量」を行います。
民間の測量士も実質同じ「測量」をするのですが、何が違うのでしょうか。
詳しい業務内容はこちらの動画でご覧いただけます!
測量士との違い
調査士と測量士の決定的な違いは、登記ができるかできないかです。
両者のできる仕事を比べるとわかります。
【調査士】:土地の測量・データ整理・境界立会い(確認)業務・登記の作成、申請
【測量士】:土地の測量・データ整理
測量士は、調査士同様に測量を行うことはできますが、境界立会いや登記の作成、申請(登記)はできません。
そのため民間の測量会社は、測量の依頼を受け、実際に現場で測量、その後データを作成し、調査士事務所に納品するまでが仕事になります。
調査士も測量をすることはできますが、測量の部分だけを測量会社に依頼することも可能なのです。
また、測量士に比べ「高いコミュニケーション能力」が求められます。
『測量を伴う基本的な業務の流れ』の⑥では、隣接する住民の立ち合いが必須なため、「立ち合いに参加したくない!」となってしまえば確定測量ができません。
そのため、測量の際の挨拶まわりで住民の方の警戒心を解いたり、うまく交渉したりする技が必要だと言えます。
気になる平均年収
勤務地や勤続年数などもあるかと思いますが、平均年収は500〜600万円です。
数値の幅は、300万円〜1000万円近くと非常に幅が広いですが、このくらいが目安でしょう。
国家資格であり、調査士にしかできない独占業務なため、重宝されやすい仕事です。
また、
- 登記ができる
- 確定測量ができる
この2点ができるようになると、調査士として一人前と評価されるため100〜200万くらい年収が上がります。
調査士になるために
調査士になるためには、土地家屋調査士資格を取得しなければなりません。
資格の取得方法は2つあります。
❶土地家屋調査士の試験を合格し、資格を取得
❷法務省の職員として一定年数勤務した後、法務大臣の認定を受けることで資格を取得
試験を受けるために必要な学歴や実務経験はなく、誰でも受験することが可能なため、多くの人が①の方法で資格を取得します。
調査士試験について
試験は2回、10月の筆記試験と翌年1月の口述試験があり、筆記を合格した者のみ口述試験を受けることができます。
筆記試験は午前(9:30~11:30)と午後(13:00~15:30)の部に分かれており、午前と午後、合わせて200点満点のテストです。
試験内容は、
- 民法に関する知識
- 登記の申請手続(登記申請書の作成に関するものを含む。)及、審査請求の手続に関する知識
- 土地及び家屋の調査及び測量に関する知識及び技能であって、次に掲げる事項
ア. 平面測量
イ. 作図 - その他土地家屋調査士法第3条第1項第1号から第6号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力
その年の難易度によって変わりますが、近年の合格率は8~9%と言われています。
合格点に関して、難易度が高い時で60%以上、比較的易しい時で80%以上は求められます。
練習問題をする際は、80%以上を目指して頑張りましょう。
試験を合格した後
試験を無事合格できた方は、各都道府県の土地家屋調査士に登録をします。
登録の際は、登録手数料(25,000円)が必要です。
登録完了すると、土地家屋調査士として働くことができます。
資格をとることは、もちろん大変ですが、調査士としては始まったばかりです。
一人前になるには、更に時間と努力が強いられます。
調査士に向いている人の特徴
調査士に向いている人の特徴は主に3つあり、一つ一つ解説していきます。
コミュニケーション能力が高い人
どんな職業にも言えることですが、調査士は特に高いコミュニケーション能力が求められます。
冒頭の『測量士との違い』で少しお話ししましたが、確定測量をする際に依頼者及び関係者との立ち合いが必須条件です。
測量が必要な登記では全ての工程で2、3ヶ月程かかりますが、もし何らかの理由で立ち合い困難になった場合、確定測量ができず、それまでの業務は水の泡になってしまします。
それは珍しい事例などではありません。
また、クライアントとして不動産会社から登記を依頼されることもあり、企業を相手にしたコミュニケーション力も試されるでしょう。
対人の練習や接客の経験なども活かせる職業だと言えます。
体力に自信がある人
調査士の仕事は、申請だけでなく自ら測量をしたり、1日に依頼を何件もこなしたり、かなりタフな仕事です。
それらをやりくりするためには、体力に自信があった方が良いでしょう。
また、確定測量では「確定杭」と言ったコンクリートの杭を地面に押し入れる作業があり、かなり力の要る工程だと言えます。
現在では、プラスチックの比較的軽い杭などもありますが、耐久性などの観点からほとんどがコンクリートの重い杭です。
1人での作業ではありませんが、いずれにしろ体力には自信があった方がいいでしょう。
数字やデータに強い人
建物や土地を調査する際、細かなデータを処理しなくてはなりません。
特に、土地家屋調査士は人々の所有地を測量するため、ミリ単位での精度が求められます。
もし、数字が少しでも間違っていたら取り返しのつかないことになり得ます。
場数を踏めば、慣れる作業でもありますが、得意に越したことはありません。
パソコンで図面を描く業務もあるため、パソコンにも慣れておいた方がいいでしょう。
土地家屋調査士を目指して補助者として経験を積みたい方、土地家屋調査士としてキャリアを築きたいとお考えの方は、ぜひリーガルジョブボードにご相談ください。キャリア相談のみでのご利用も可能です。
仕事上のやりがい【体験談】
45歳(男性) 調査士歴3年
調査士の仕事は、調査から始まり、現場での測量、立ち合いを経てやっと登記ができます。
中には、お隣さんがわからなかったり、所有者がどこに住んでるのかわからなかったりなど、スムーズに立ち合いまで進まないことが多いです。
そのため、確定測量がやっと行われた時には肩の荷が降りるというか、とてもホッとします。
それはお客様も一緒で、依頼を完了した際に「あなたのところに頼んで本当に良かった、ありがとう」と、かなり感謝されます。
やりきれない気持ちになる日もありますが、お客様の喜ぶ顔をみると頑張って良かったなって思えますね。
30歳(男性) 調査士歴2年
遺産である土地を分割する登記の依頼を受けた際、家族間で揉めたり、一旦中断になったりすることがありました。
測量や立ち合いの予定が伸びてしまって、とても心配だったのですが、最終的には円満な形で完了し、最後にご挨拶した際には涙ながらに感謝の言葉をいただきました。
一つの案件でも、その人の人生に携わることができる仕事だなと改めて感じました。
将来性
調査士の仕事は今後も、なくなることはないでしょう(この業界に詳しい土地家屋調査士の先生方もおっしゃっていました)。
土地家屋調査士の仕事は、クライアントとの打ち合わせや境界立ち合いが必須で、AI化できるものではありません。
最近では、ドローンでの測量やワンマン測量(1人で測量ができる技術)など、人数をなるべくかけずに測量をする技術が発達してきました。しかし、土地家屋調査士の仕事は測量だけではありません。
下記の記事では、土地家屋調査士の将来性について詳しく解説しておりますのでぜひお読み下さい。
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まとめ
- 調査士は土地や建物の表示に関する登記に必要な調査、測量、申請手続きなどを行う仕事
- 『登記』に関する手続きを代理で行うことができるのは、日本で調査士のみ
- 測量の部分は業務内容が測量士と被りますが、確定測量後の申請など登記に関することは調査士にしかできない仕事
- 大量の書類やデータを処理する事務的な仕事もあるが、お客様と対面で関わる仕事も多い
- AIや最新技術に代替されることは考えにくく、将来的な需要も今と変わらない
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