
土地家屋調査士とは?仕事内容や年収・残業・向いている人を解説!測量士との違いも

by LEGAL JOB BOARD 篠原
転職エージェント
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こんにちは。土地家屋調査士の転職エージェント「リーガルジョブボード」の篠原です。
本記事では、「土地家屋調査士の仕事内容や年収、残業、なり方」などを解説します。
具体的には、以下のような内容です。
- 土地家屋調査士の仕事内容・業務の流れ
- 年収や残業時間の目安
- 土地家屋調査士に向いている人の特徴
業界の男女比や年齢層、測量士との違い、文系でも活躍できるのか、といったことも含め、土地家屋調査士の基本情報を網羅した記事となっています。
土地家屋調査士に興味をお持ちの方、具体的な業務や年収が気になる方など、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の目次
土地家屋調査士とは?
土地家屋調査士とは、不動産登記に必要な「土地や建物に関する調査・測量・申請手続」などを行う職種です。
不動産登記は、表示に関する登記(表題部)と権利に関する登記(権利部)に分かれており、土地家屋調査士は前者を扱っています。表示に関する登記とは、土地や建物の物理的な状況(所在、番地、地目、地積、床面積など)を明らかにする登記です。
土地家屋調査士の使命は、表示に関する登記に必要な調査・測量・申請手続を正確に行い、不動産取引の安全を確保する、国民の財産を明確にするといったことにあります。
※出典:日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士とは」
土地家屋調査士の人数・男女比・年齢層
日本土地家屋調査士会連合会によると、令和3年4月時点での会員数は16,141人です。うち3.2%にあたる521人が女性会員となっています。
令和3年4月時点で、会員の年代構成は20~80代までかなり幅広く、40代以上が9割以上を占めています。

一方で、令和2年度に新規登録をした会員は、20~30代が約4割でした。

また、新規登録で最も多かったのが40代で、社会人経験を積んでから土地家屋調査士として登録する(土地家屋調査士になる)方が多くいることが分かります。
※出典:日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士白書2022」
土地家屋調査士の仕事内容・業務の流れ
東京土地家屋調査士会による「土地の調査・測量の作業手順」を参考に、土地家屋調査士の主な仕事・業務の流れを解説します。
- 受託:
依頼者と事前の打ち合わせを行い、委任契約を結びます。 - 資料調査:
役所などで土地要約書や区画整理確定図といった資料を確認し、調査結果を整理します。 - 測量・調査:
資料調査の内容をふまえ、対象の土地や建物の調査・測量を行います。 - 図面作成:
CADというPCソフトで測量・調査で得たデータで図面を作成。 - 境界立会い(土地家屋調査士の独占業務):
隣接する土地の所有者に立ち会ってもらい、境界を確定します。 - 確定測量:
改めて厳密に測量を行う。必要に応じて境界標(鋲・杭)を設置。 - 登記申請(土地家屋調査士の独占業務):
登記申請の書類を準備し、法務局に提出します。オンライン申請も可能。
登記申請から通常1週間ほどで、登記完了証を受領できます。依頼者に測量の成果品(電子データや図面を含む報告書)を納品し、案件完了となります。
境界立会いと登記申請は、土地家屋調査士の独占業務です。土地家屋調査士の有資格者のみが行うことができます。
土地家屋調査士の存在・仕事は、以下のような場合に必要とされます。
- 相続などで土地を分割したい
- 畑だった土地に家を立てたい(地目変更)
- 家を新築・増築したい
こちらの動画でも、土地家屋調査士の業務について解説しています。ぜひ参考になさってください。
土地家屋調査士になるには?
土地家屋調査士になるためには、まず土地家屋調査士資格を取得する必要があります。資格取得の方法は以下の2つです。
- 土地家屋調査士試験に合格する
- 法務省の職員として勤務し、法務大臣の認定を受ける
ほとんどの方は、試験に合格して土地家屋調査士になります。
土地家屋調査士試験について
土地家屋調査士試験には、年齢や学歴、実務経験などの受験資格は定められておらず、誰でも受験できます。ただ、試験の難易度が高く、合格率は例年8~9%程度です。
例年10月に筆記試験が行われ、翌年1月に口述試験が実施されます。筆記試験に合格しないと、口述試験を受けることはできません。試験では、民法や登記申請手続、審査請求手続、筆界、土地家屋の調査・測量などに関する知識が求められます。
筆記試験は午前の部と午後の部に分かれており、午前の部は測量士・測量士補・一級建築士・二級建築士のいずれかの資格を持っていると免除されます。そのため、この中では比較的取得しやすい「測量士補」の資格を取得後、試験に挑む方が多いです。
土地家屋調査士試験について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
※出典:法務省「令和5年度 土地家屋調査士試験 受験案内書」、「令和4年度 土地家屋調査士試験の最終結果について」
試験合格後の動き
土地家屋調査士となるためには、試験合格後、日本土地家屋調査士会連合会の名簿に登録を受けなくてはなりません。これは、土地家屋調査士法第8条によって定められています。
登録にあたっては、必要書類を提出するほか、手数料として25,000円を日本土地家屋調査士会連合会に納付します。
また、試験合格後には、土地家屋調査士としての就職・転職を考える方も多くいらっしゃいます。職場選びは非常に重要ですので、「リーガルジョブボード」のような土地家屋調査士専門エージェントを活用するのがおすすめです。
※出典:日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士を目指す方へ」
土地家屋調査士補助者として経験を積む
土地家屋調査士を目指す場合、土地家屋調査士補助者として実務経験を積む方が多い傾向にあります。
その名の通り、土地家屋調査士補助者は土地家屋調査士をサポートする職種です。しかし、資料調査や測量、図面作成など、資格者が行うほとんどの業務の経験を経験することができます。
土地家屋調査士補助者として経験を積んでいると、資格取得後の就職・転職に非常に有利に働きます。反対に、資格が取得できても、実務経験がないと就職・転職が難しいケースもあるのが実情です。
そのため、土地家屋調査士を目指したい方や興味をお持ちの方は、土地家屋調査士補助者になることも視野に入れるのがおすすめです。土地家屋調査士補助者については、以下の記事をご覧ください。
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土地家屋調査士の平均年収・残業時間
土地家屋調査士の年収や残業時間について解説します。
平均年収
勤務先や経験年数などによりますが、土地家屋調査士の平均年収は500〜600万円程度です。ちなみに、未経験の方の初年度年収は350~400万円程度のケースが多いです。
土地家屋調査士業界は実力主義のため、できる業務の範囲で年収が決まる傾向にあります。中でも「確定測量」と「登記申請」ができるようになると、一人前として評価されるため、100~200万円程度の年収アップも目指せるでしょう。
年収やボーナスなどについて、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
残業時間
土地家屋調査士の残業時間は、月30~40時間程度が目安です。
残業が発生してしまう要因としては、現場が複数あると書類修習や図面作成に時間を要してしまったり、現場の場所や道路状況によって移動に2~3時間かかってしまったり、といったことがあるようです。また、3月・9月・12月は繁忙期で仕事が特に忙しくなります。
しかし、残業を減らそうとしている事務所や、ワークライフバランスを考慮している事務所も増加傾向にあります。詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
土地家屋調査士に向いている人
土地家屋調査士に向いている人や、実際に求められる人の特徴を3つ紹介します。
内勤・外勤バランス良く仕事がしたい方
土地家屋調査士は、資料調査や図面作成、登記申請といった内勤と、測量や境界立会いといった外勤の両方を行います。
資料調査や図面作成は集中力が必要で、基本的に一人でコツコツと黙々と作業を行います。一方で、測量や境界立会いは外で行うことに加え、コミュニケーションが必要な作業です。
内勤と外勤、黙々と取り組む作業とコミュニケーションが必要な作業、どちらも行いたい方は土地家屋調査士に向いているでしょう。
体力に自信がある方
前述の通り、土地家屋調査士の仕事には現場での測量も含まれます。特に夏や冬の測量はハードだと言われています。
また、測量で重い機械を持ったり、確定測量で確定杭というコンクリートの杭を地面に押し入れる作業を行ったりします。プラスチックの確定杭もありますが、耐久性などの観点からほとんどがコンクリート製です。
このような点に加え、複数の依頼を同時に抱えることもあり、体力があるに越したことはないでしょう。男性が多い職業ではありますが、もちろん女性で活躍している方もいらっしゃいます。
コミュニケーション能力が高い方
土地家屋調査士の仕事は、専門性やスキルに加え、コミュニケーション能力も求められます。
それは、境界立会いという業務があるためです。土地家屋調査士の独占業務である境界立会いでは、隣接する土地の所有者に立ち会ってもらい、境界を確定する(了承を得る)必要があります。
立会いをうまく調整できなかったり、境界に関する了承が得られなかったりすると、確定測量ができず、それまでの2~3ヶ月ほどの業務は水の泡です。実際にそのような事例も存在するため、コミュニケーション能力や調整力がかなり重要視されています。
土地家屋調査士になるべきか迷っている方や、自身に適性があるか知りたい方、業界事情を知りたい方は、土地家屋調査士専門の転職エージェント「リーガルジョブボード」にご相談ください。
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土地家屋調査士は文系・理系どちらが向いている?
土地家屋調査士は図面作成を行うため、理系でないと厳しいのでは?と思っている方もいらっしゃるでしょう。
確かに、データや数字を扱う仕事ですが、文系出身の方でも土地家屋調査士として活躍できます。図面作成や必要な計算はソフトを用いて行うため、ソフトの使い方を習得できれば問題なく作業可能です。
ただ、土地家屋調査士試験(の問題)を突破する必要があること、測量やデータ処理、図面作成ではミリ単位の精度が求められることから、人によってある程度の向き不向きはあるでしょう。
自身の経歴で土地家屋調査士になれるか気になる方や、業務の難易度などについて知りたい方は、土地家屋調査士専門の転職エージェント「リーガルジョブボード」までお気軽にご相談ください。
土地家屋調査士と測量士の違いは?
土地家屋調査士と測量士の決定的な違いは、登記ができるか否かです。測量士は登記目的の測量ができず、逆に土地家屋調査士は登記目的でないと測量ができません。
土地家屋調査士・測量士ともに国家資格であり、測量を行う点は同じです。しかし、両者のできる測量が異なるため、専門や測量の種類、依頼主などに違いがあります。
以下の表に土地家屋調査士と測量士の違いをまとめました。
比較項目 | 土地家屋調査士 | 測量士 |
---|---|---|
管轄 | 法務省 | 国土交通省 |
関連する法律 | 民法、不動産登記法、土地家屋調査士法など | 測量法 |
専門 | ・不動産の表示登記 ・表示登記に関する土地や建物の調査および測量 ・境界確認業務 など | ・測量全般(公共・民間不問) ・地積測量 |
測量の目的 | ・境界の確認や復元 ・現況地物や状況等の把握 など | 土地の正確な測量 |
測量の種類 | 一筆地測量 | 公共・民間測量 |
依頼主 | 一般の土地所有者 | ・公共:国や都道府県、地方自治体など ・民間:ディベロッパーやハウスメーカーなど |
専門に関しては、土地家屋調査士が不動産の表示登記や、表示登記に関する土地や建物の調査および測量などで、測量士は公共・民間を問わない測量全般など。測量の種類は、土地家屋調査士が一筆地測量で、測量士は公共・民間測量となっています。
自身が土地家屋調査士・測量士のどちらに向いているか知りたい、土地家屋調査士・測量士についてもっと詳しく知りたい、といった方は「リーガルジョブボード」のエージェントへのご相談がおすすめです。
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土地家屋調査士の将来性
土地家屋調査士は十分に将来性がある仕事です。特に、クライアントとの打ち合わせや境界立会いなどの業務は、AIに取って代わられることはないでしょう。
最近では、ドローン測量やワンマン測量(1人で測量ができる技術)など、人手を削減できる測量技術が発達しています。こういった技術に危機感を感じる部分もあるかもしれません。しかし、最新技術を活用することで業務を効率化でき、より多くの案件を受けたり、高度な案件・業務も行うことができるようになるはずです。
また、最新の知識・技術をキャッチアップしたり、ADR認定土地家屋調査士の認定を取得するなど、自身の市場価値を高めることも重要です。
土地家屋調査士の将来性や、長く活躍するためのポイントについて、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
【体験談】土地家屋調査士がやりがいを感じる瞬間
現役の土地家屋調査士たちは、どのような瞬間にやりがいを感じているのでしょうか?リーガルジョブボード会員の方から、実際にお話を伺いました。
▼45歳・男性 / 経験3年目
土地家屋調査士の仕事は調査から始まり、現場での測量、立会いを経てやっと登記ができます。
お隣さんがわからなかったり、所有者がどこに住んでるのかわからなかったり、スムーズに立会いまで進まないことも多々あります。そのため、確定測量がやっと行われた時には肩の荷が降りるというか、とてもホッとします。
それはお客様も一緒で、依頼を完了した際には「あなたのところに頼んで本当に良かった、ありがとう」と、すごく感謝していただけることが多いです。
やりきれない気持ちになる日もありますが、お客様の喜ぶ顔が見られると、頑張って良かったなと思えますね。
▼30歳・男性 / 経験2年目
遺産である土地を分割する登記の依頼を受けた際、家族間で揉めたり、一旦中断になったりすることがありました。
測量や立会いの予定が伸びてしまい、とても心配だったのですが、最終的には円満な形で完了。最後にご挨拶をした際には、涙ながらに感謝の言葉をいただきました。
お客様の人生に携わることができる仕事だと、改めて実感しました。
土地家屋調査士の適性診断を受けてみませんか?
土地家屋調査士の仕事が気になっている方や、士業の資格を取得してキャリアアップを目指したい方など、以下のようなお悩みはありませんか?
- 自分に「土地家屋調査士としての適性」があるのか気になる
- 土地家屋調査士の業界事情やキャリアパスを詳しく知りたい
- 土地家屋調査士になった場合、どれくらいの年収を目指せるか知りたい
これらのお悩みは、土地家屋調査士専門の転職エージェント「リーガルジョブボード」までご相談ください。
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