【M&Aインタビュー】中央ライズアクロスグループと土地家屋調査士法人きざしの合併の裏側に迫る
by LEGAL JOB MAGAZINE 編集部
編集部
こんにちは。LEGAL JOB MAGAZINE編集部です。
本記事では、LEGAL JOB BOARDが仲介を担当した「中央ライズアクロスグループと土地家屋調査士法人きざしの合併」の裏側や今後の展望を、インタビュー形式でお届けします。
今回のM&Aに仲介として携わった弊社代表・土屋が、土地家屋調査士法人きざし(株式会社ジャイロおおいた)代表の三宮氏、中央ライズアクロスグループ代表の髙橋氏にお話を伺いました。
この記事の目次
今回の合併の概要
中央ライズアクロスグループと土地家屋調査士法人きざし(株式会社ジャイロおおいた)が2024年10月1日に合併する運びとなり、その仲介をLEGAL JOB BOARDが担当いたしました。
※写真左:土地家屋調査士法人きざし(株式会社ジャイロおおいた)代表の三宮氏、写真右:中央ライズアクロスグループ代表の髙橋氏
土地家屋調査士法人きざし及び株式会社ジャイロおおいたの代表であった三宮氏は、所員の将来を見据えた安定的な基盤の確立と事業拡大を目指す中で、司法書士業界大手である中央ライズアクロスグループとの合併を決断されました。
通常のM&Aにおいては、吸収される側の代表が一定期間経過後、経営及び組織から身を引くケースの方が一般的です。しかし今回の合併では、吸収合併後も三宮氏はグループに残存し、共に発展を目指すという珍しい決断をされています。
三宮氏がM&Aを考えるに至った経緯
人にも恵まれて、右肩上がりで順調に成長を続けてこられたのですが、社員とコミュニケーションを取る中で、自身が目指している社内・社外環境をなかなか実現できていないと感じることがあり…。そのことが気がかりでした。
ちょうどそんな頃に、私の子供と同じ20代前半の社員が入社したことで、「(将来的なことを考えると)本当にこのままで良いのだろうか」という思いがより一層強くなりました。
それ以来、「会社にとっても、社員にとっても、お客様にとっても最善の選択肢は一体なんなのか」を模索し続けていました。
ただ、採用活動においては、同業他社よりも一般企業との比較が重要になります。そうなった時に、一般企業のような労働環境・条件には追いつけていないという自覚がありました。特に有休取得率の向上や(職業柄、休日に仕事が入ることも少なくないため)土日にきちんと休める人員体制の構築などに課題を感じていました。
当初は25〜30名の社員で、土地家屋調査士の資格者も一定数いて、うまく会社を回していけるイメージだったのですが…。
採用関連の課題に加え、資格者は独立志向が強いこともあり、働き続けたいと思ってもらえるような魅力的な会社・組織づくりが思うようにできていませんでした。
そんな中で、課題解決の選択肢としてM&Aを考えるようになり、採用活動でお世話になっていたLEGAL JOB BOARDの担当者の方に相談させていただきました。ただ、当初からM&Aにはこだわっておらず、今後の経営に好影響をもたらす何らかの方法・可能性を探っていた感じです。
私としては、「今のスタッフと一緒に働き続けたい」「まだまだ組織の成長を牽引していきたい」という気持ちが強かったのですが、M&Aや吸収合併となれば、基本的に自分は第一線から退くことになるだろうと思っていました。
しかし、LEGAL JOB BOARDからは、売る・売らないだけではない柔軟な提案をしていただけたのが印象的でした。ディールを行った後も私が組織に残り、一緒に成長させていく選択肢を提案された際には正直驚きましたね。
髙橋氏が感じた戸惑いと気持ちの変化
1,000人規模の事務所とはつまり、社会のインフラ的な存在になるほどのインパクトを持つものです。
弁護士をはじめ、税理士、社労士などの業界では1,000人規模のグループが存在します。しかし、司法書士・土地家屋調査士業界で、そこまでの規模を誇るグループはまだありません。
グループ全体の成長を見据えた際に、1拠点ごとに30〜50人ほどの人員が必要となってきます。そのため、拠点数を増やしていくこと、また同時に司法書士・土地家屋調査士の一社員の中から優秀な拠点長を生み出すことが課題となります。
こうした背景から、中央ライズアクロスグループでは、M&Aや事業承継を積極的に行ってきました。創業から8年2ヶ月で、今回が11回目のM&Aとなります。M&A案件はいつも突然やってくるので、今回も驚きはしなかったのですが…。
大分は土地勘もなければ行ったこともない場所だったので、若干の戸惑いはありました。これまでのM&Aは既存の拠点を強化することが目的でしたが、今回は大分という地理的に既存の拠点から距離もあって。正直少し構えた感じで、LEGAL JOB BOARDから詳細を聞いていきました。
ただ、その時点ではグループの今後の展望などを考え、迷っていた部分もかなりありました。今回のM&Aを前向きに進めようと思った最大のきっかけは、三宮氏に会いに初めて大分に行った時のことでしょうか。
三宮氏に初めて実際にお会いして、なんというか、人として惚れましたね(笑)。
大前提として、三宮氏には(M&A後も組織に)残っていただきたいと思いましたし、逆に調査士部門のメンバー達に色々と教えていただきたいと思うような人柄と経験をお持ちでした。
この日をきっかけに、こちらとしては今回のM&Aをすぐにでも進めていきたいと思うようになりました。
コミュニケーションを重ねるうちに、自分にないものをたくさん持っている人だと感じました。髙橋氏の将来のビジョンを伝える能力や、戦略的かつ柔軟な思考力、数字分析を含むリスクヘッジの能力などを目の当たりにし、「近くで一緒に仕事をしてみたい」という気持ちが強くなっていきました。
両者がディールを決断した理由・背景とは?
通常のM&Aは、第一段階で守秘義務契約などを結び、相手方と会えるのは(M&Aが)ほぼほぼ決まった段階という印象でしたが、今回は最初の段階から髙橋氏にお会いできました。
また、協議も三者間でかなりオープンに進んでいきました。一般的に想像するような仲介というより、LEGAL JOB BOARDに適度にコントロールしていただいたような感覚です。だからこそ要望も伝えやすく、課題解決もスムーズでしたね。
具体的に話が進むうちに警戒心は無くなり、前向きな気持ちになっていきました。
メリット的な部分では、経営者として調査士業界で30人規模の組織を実現するのは、かなり厳しいと感じていて…。ライズアクロスグループに加わることで、九州というエリア規模でタッグを組んで、人員的なパワーも補填できることに魅力を感じました。
司法書士事務所を併設することによる、業務面でのシナジーも感じていましたが、人員強化が社員の労働環境にプラスに働くだろうという期待が最も大きかったです。
先ほどお話しした1,000人規模の組織を実現するには、全国で20〜50人の組織を20〜50拠点設ける必要があると思っています。その一環として、いずれは九州でも拠点を増やしていきたいと思っていましたが、正直大分は想定外でした。
ただ、三宮氏に(M&A後も)残っていただけるのであれば、大分にも拠点を設けたいと考えました。今回M&Aという形ではありますが、私はむしろ、三宮氏にグループの経営に加わっていただいたと思っています。それほどの経験と実績をお持ちですので、三宮氏の力をお借りして、さらなる発展を目指したいと考えています。
三宮氏が唯一悩んだのは「社員への説明」
結果的に、社員はM&Aのことを突如知ることになったのですが…。日頃から社員と「こういう環境をつくりたい」「こういうことを実現したい」といったオープンなコミュニケーションを取れていたので、話を伝えやすかったです。
これまで社員に伝えていた目標を達成する手段として、今回のM&Aがあるというニュアンスで説明しましたね。話を伝えた後の社内アンケートでも、社員から否定的な意見はありませんでした。
場合によっては、合併先の社員への説明に何度も出向くケースや、なかなか理解いただけないこともあります。しかし、今回そういった苦労はほとんどなかったですね。
日常的なコミュニケーションの取り方を含め、三宮氏がいかに社員ありきの経営を徹底されていたのか実感しました。
三宮氏が行っていた経営は、本来M&Aの必要がないほど良好な状況でした。そのような中でもM&Aを決断されたのは、本当に社員のことを考えているからこそだと思います。
LEGAL JOB BOARDの仲介に対する印象は?
一般的なM&Aや仲介の知識を共有いただけたり、ある程度の指針を提供していただいたりと、初めてM&Aを経験する私でも標準を把握した上で、様々な交渉・調整に臨むことができました。
また、LEGAL JOB BOARDは土地家屋調査士業界への理解が深く、業界特有のビジネス構造やそこから生じる課題、経営者の悩みまで、しっかり把握されていると感じましたね。一般的な仲介会社では、業務などにまで配慮した提案はいただけなかったと思います。
客観的に見ても、売主側の相談をしっかりと受け止め、最適な提案ができるのは、業界に精通しているからこそだと感じます。完全に士業専門だからこそ、業界の理解が深く、信頼感があるんだろうなと。
売主側に寄り添う姿勢も、私は(仲介会社の)本来あるべき姿だと思っています。
合併後の現状と今後の展望
また先日、札幌で開催されたグループの全国大会に参加し、九州や全国規模で仲間と協力して、「土地家屋調査士業界で働いてみたい」と思ってもらえるような魅力的な会社づくりをしていきたいと感じました。まずは大分から、着実に頑張っていきたいと思っています。
グループの中でも、九州エリアは50〜60人規模になっており、今後さらに拡大・成長させていきたいと考えています。三宮氏については、大分エリアだけを任せる拠点長という役割ではなく、九州全体、さらには全国的に土地家屋調査士法人で中心的な役割を担っていただきたいと思っています。
グループ全体の経営的な展望としては、「1,000人規模の組織」にどれだけ早く到達できるかを見据えています。時間があるようで無いとも感じています。引き続きM&Aにも意欲的ですし、信頼できる拠点長のいる拠点を少しでも増やして、堅実に成長を続けていきたいですね。
また、先ほど三宮氏がおっしゃったように、働いてみたいと思ってもらえる、憧れられるような業界づくりにも貢献していきたいと考えています。
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