企業内弁護士(インハウスローヤー)に新卒で就職する方法|採用条件や初任給は?
by LEGAL JOB BOARD 横山
コンサルタント
- 担当職種:
こんにちは。弁護士の転職エージェント「リーガルジョブボード」の横山です。
本記事では、「新卒で企業内弁護士(インハウスローヤー)になるための条件や方法」について解説します。
司法修習生にも人気の「インハウスローヤー」ですが、具体的な業務内容や年収、就職を有利にするためのポイントなど、全て把握している方は少ないのではないでしょうか。
本記事ではそれらを解説するとともに、新卒向けのインハウスローヤーの求人もあわせてご紹介します。インハウスローヤーを目指している方、興味をお持ちの方は最後までご覧ください。
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この記事の目次
インハウスローヤーの業務内容
企業内弁護士の仕事は、法律が関わる業務全般です。下記では、インハウスローヤーが任される業務を紹介していきます。
契約書の準備やチェック
法務部での主な仕事は、契約書のチェックや準備です。全ての契約に関わる書類に目を通し、法的に違反がないか、契約する内容がこちらの不利益になる条件になってないか、などをチェックします。
契約を結んでしまえば、内容が不利益なものであった場合でも、なかったことにはできません。
また、法改正により法律に変更があった場合は、契約書に変更が出る場合があり、そういったチェックも慎重に行う必要があります。
株主総会対応
株主総会の対応も、企業内弁護士の重要な仕事の一つです。株主総会をスムーズに運営する為に、法律を遵守した株主総会の進め方で、提出する議案が可決されるよう進めなければなりません。
株主総会の対応はとても慎重にする必要があり、法的な誤りが無いよう、提出議案の検討や、想定される質問の予測・それに対する回答のリーガルチェックをします。
コンプライアンス対応
近年、どの企業もコンプライアンス対応に力を入れています。その大きな理由は、個人で情報を発信できるSNSが広く浸透するなかで、その内容による不祥事を起こさないようにするためでです。
企業内弁護士は、研修・セミナーを実施するなど、社員一人ひとりの法的知識・モラルの向上を目指さなければなりません。コンプライアンス違反を防ぐため、マニュアルを作成し、社員教育に努める必要もあるでしょう。
知的財産・特許
自社の知的財産やその権利を守るため、特許出願をおこないます。企業内弁護士は、それに関わるトラブルの対処をします。
例えば、他社や元社員が無断で自社の特許技術を利用しているとき、紛争解決や訴訟手続きなどをおこなって、自社の知的財産を守るのが仕事です。
債権回収
督促状や内容証明を何度送っても債権回収できない場合、企業内弁護士が対応します。多額の金額が回収できなければ、倒産といったことにもなりかねません。
そのような時は、法的に債権回収するために訴訟や強制執行の手続きをします。また、代理人として法廷に立つこともあります。
海外展開準備と海外発の規則対応(GDPRなど)
海外に事業進出・展開をする企業であれば、その準備にも携わります。日本と海外で法律は全く異なるため、海外の法律を理解し、違反や損失が無いように準備します。
大企業の場合は特に、海外支店を出したり、海外と取引を開始することもあるため、企業内弁護士は英語力が求められるケースが多いです。
訴訟対応
通常業務は、訴訟にならないよう慎重におこなっていますが、もしトラブルになって訴訟へ進展してしまった場合のサポートを企業内弁護士が行います。
担当者から事情を聴き、訴訟準備や顧問弁護士に依頼する場合は内容をまとめたり、場合によってはマスコミ対応などを広報とおこないます。
M&A
M&A業務も企業内弁護士の仕事です。買収対象企業の価値を落とさないよう、内密にプロジェクトをおこないます。また、買収企業に重大な債務がないか、雇用関係維持に問題はないのか、といった点を詳細にチェックしていきます。
コーポレートガバナンス対応
コーポレートガバナンスとは、企業の組織ぐるみの不祥事を防ぐために、社外で取締役や監査役を設け、社外の管理者が経営を監視する仕組みです。その対応も企業内弁護士の仕事です。長期的に企業価値を向上させ、株主を守るため、上場企業には社外取締役を設ける必要があります。
新規事業の設立に伴うサポート
新規事業を設立する際、リーガルリサーチとアドバイス業務をおこないます。法的に問題がないかを調べ上げ、法的にサポートしていきます。また、法令改正に伴う経営層への情報提供をおこなうこともあります。
労務問題
企業を守るだけではなく、企業で働く従業員を守るのもインハウスローヤーの仕事。過度な残業・パワハラ・セクハラなどのトラブルに対し、企業内弁護士は対応します。調査も含めデリケートな問題で、従業員と企業とでどちらにも気を遣わなければならない業務です。
新卒でインハウスローヤーになる就職難易度
結論から言うと、新卒でインハウスローヤーに就職するのは比較的難しい傾向にあります。それは、ほとんどの企業が「経験者」を求めているからです。
しかし最近では、コンプライアンス重視・紛争防止のため、社内弁護士を育成しようとする企業も増えています。今後は、新卒採用枠が増加していくのではないかと思われます。
弁護士・司法修習生の専門エージェント「リーガルジョブボード」では、新卒歓迎のインハウスローヤー求人もご紹介できます。ぜひお気軽にご相談ください。
新卒インハウスローヤーの年収・初任給
インハウスローヤーの平均年収は750〜100万円程度です。新卒1年目は大体、年収400万円程度でしょう。
稀に弁護士資格を持っている方を重宝する企業があり、そのような企業は司法修習後すぐの弁護士でも、年収500~600万円を提示することがあります。
ただ、基本的には無資格の法務部員と同等の金額になるでしょう。そのため、法律事務所の弁護士の方が年収が高い傾向にありますが、インハウスローヤーも他職種に比べれば高給与です。
また、企業のルールに従って昇給で給与がアップしていくため、収入が安定しているのがインハウスローヤーのメリットと言えます。
新卒でインハウスローヤーになる場合のキャリアパス例
司法修習後、インハウスローヤーとして就職する場合のキャリアパスを解説します。
企業内弁護士として役職を目指す
企業内弁護士として働きながら、役職に就くキャリアの築き方があります。働きやすさを保ちながら、さらなる昇給が目指せるので、一般企業でキャリアアップを目指すケースは珍しくありません。
年齢・キャリアを重ねていけば、企業内弁護士として年収1,000万円に到達することも可能でしょう。収入が急激にアップするといったことはありませんが、働きやすく待遇が安定しています。
インハウスから法律事務所へ転職する
年収アップなどを目的に、インハウスローヤーから法律事務所に転職するケースもあります。
インハウスローヤーが法律事務所へ転職する場合、民事・刑事事件の対応経験がないため、スタートの年収が下がってしまう可能性があります。しかし、多くの法律事務所は自分の裁量で働けますので、経験を積んで多くの案件を対応できるようになれば、その分収入を得ることができます。
法律事務所は残業が多くなったり、企業よりも福利厚生が整っていない可能性はあるものの、インハウスローヤーよりも高収入を目指しやすいでしょう。
新卒でインハウスローヤーになるメリット
インハウスローヤーになるメリットを解説します。
福利厚生が充実している
インハウスローヤーは一般企業に所属するので、福利厚生が充実しています。
社会保険だけでなく、スポーツジムやリゾート施設の割引、退職金制度など、さまざまな制度があります。安心できる環境で働きたい方にとって、福利厚生が充実しているのは非常に魅力的です。
法律事務所は企業よりも福利厚生が整っていないケースが多く、安定を求める方はインハウスを希望する傾向にあります。
ワークライフバランスが整っている
インハウスローヤーは、ワークライフバランスを大切にしながら、無理なく働ける可能性が高いです。
一般企業では働き方改革が浸透し、残業を減らす動きが主流になっています。そのため、法律事務所に比べて残業が少なく、有休を含める休日が多いです。
フレックス制度を導入する法律事務所は多いですが、残業が多く、特に大手事務所だと早朝から深夜まで働くこともあるようです。
ビジネスを学べる
インハウスローヤーは健全な経営活動を実現できるよう、内部者として企業を支えます。業務の特性上、経営者や役員との関わりが多く、ビジネスの流れや事業の進め方を間近で学ぶことができます。
ビジネス関連の知識・スキルを強化したい方は、特にやりがいを感じられるでしょう。
インハウスと法律事務所どちらに就職すべき?
インハウスローヤーと法律事務所どちらを選ぶべきかは、個人の考えや希望する働き方によって異なります。それぞれにどういった方が向いているのか、下記でお話しします。
「ワークライフバランス」を重視したい方はインハウスローヤー
プライベートを充実させたい、安定した環境で働きたいという方は、インハウスローヤーとして一般企業で働くのがおすすめ。
前述しましたが、一般企業は残業が少なく、福利厚生が充実している傾向にあります。給与面も安定しており、急激な年収アップは難しくとも、年齢・キャリアに応じて昇給していきます。
家庭と両立をしたい、安定した職場がいいという方は、インハウスローヤーとして活躍する道が向いているでしょう。
「高年収や独立」を目指したい方は法律事務所
とにかく高年収を目指したい、将来的に独立を考えているという方は、法律事務所への就職がおすすめ。
法律事務所では基本的に裁量制で働けるので、年齢にかかわらず自分次第で年収の大幅アップが目指せます。インハウスは実務年数をベースに年収が上がる一方で、法律事務所は案件をこなした分だけ高給与を目指せます。
また、独立志向が強い方も法律事務所がおすすめです。パートナー制度があったり、独立支援を行っている事務所であれば、経験を積みながらクライアントを獲得することができ、キャリアの基盤を固めることができます。
ちなみに、インハウスローヤーから法律事務所への転職は少し難易度が高いですが、法律事務所からインハウスローヤーへの転職は比較的難しくありません。そのような実態からも、法律事務所でキャリアをスタートする方が多いです。
新卒でインハウスローヤーになるための必要スキル
インハウスローヤーになるうえで、必要なスキルや素質、条件がいくつかあります。
語学力
企業によっては海外案件があるので、語学力(特に英語・中国語)があると歓迎されます。大手企業ほど海外にも事業展開している関係で、英語力が求められる可能性が高いです。
弁護士資格があっても、語学力がなければ海外案件にはスムーズに対応できません。最近では英語だけでなく、中国語の需要も高くなってきています。
コミュニケーション能力
各部署への法的アドバイスやサポート、顧問弁護士への対応なども業務に含まれます。そのため、周囲の人々と円滑にコミュニケーションを取れなくてはなりません。
各部署の起こりうる問題や実現したい事柄に対し、会社にとってのベストアンサーを法的観点から共に考え、提案する能力・折衝力が求められます。
新しい情報を瞬時にキャッチアップできる瞬発力
世間の変化を敏感にキャッチアップできる能力は必須。特に、法改正により変更したルールを頭に入れていくスキルが大切になります。
法改正に適応できないと、必要な契約内容の変更ができなかったり、経営活動のなかで意図せず法に触れてしまうなどのリスクがあります。
インハウスローヤーは、企業が健全な活動をできるよう、法的なサポートをしなければなりません。世間の変化にアンテナを張り、必要に応じてスピーディーに対応することで、信頼されるインハウスローヤーとして活躍できるでしょう。
協調性がある・会社に尽くしてくれる人かどうか
協調性があり、会社に尽くしてくれる人物を企業は求めています。インハウスローヤーは社内の様々な人と関わるので、協調性があり、人に寄り添える方が向いています。
また、企業の理念・考え方に共感し、会社に尽くしてくれる人材なのかも、採用側はチェックしています。一緒に働きたいと思える人物かどうかが、内定を左右するカギとなります。
新卒でインハウスローヤーになる方法・活用すべきサービス
新卒でインハウスローヤーを目指す場合、活用した方が良いサービスを紹介します。
【おすすめ】エージェントサービス
インハウスローヤーを目指す場合、「エージェントサービス」を活用すると、就職活動が圧倒的に有利になります。
エージェントがあなたのスキルや資質を見極め、活躍できる・ミスマッチのない職場の求人を紹介してくれます。また、以下のサポートも無料で行ってくれます。
- 選考突破のための書類・面接対策の徹底
- 今のあなたが転職で実現できうる推定年収の算出
- キャリアパスの策定やご相談
- 求人の職場口コミやブラック度の情報提供
この他にも、エージェントを活用することで得られるメリットはかなり多くあります。気になる方は、下記の記事をご覧ください。
弁護士・司法修習生の専門エージェント「リーガルジョブボード」では、インハウスローヤーの求人を多数ご紹介いたします。
いま転職活動中の方、転職をうっすらと考えている方、どんなご相談にも乗りますのでお気軽にご連絡ください。
求人サイト
求人情報を集める際、多くの方が利用するのが求人サイトです。特に、ひまわり求人求職ナビのような弁護士専門のサイトは、探しやすく有益な情報を集めることができます。
ただ、サイトによっては募集が終了したものが、そのまま掲載されている可能性があるので注意してください。
司法修習生歓迎の企業説明会・就職セミナーへの参加
企業説明会や弁護士会の就職セミナーへの参加も一つの手段です。
また、求人票に「修習生もご相談ください!」と記載がある企業に応募するのも良いでしょう。
司法修習後の新人弁護士を募集している企業の求人は、すぐに充足してしまう傾向にあります。なるべく早めに、求人検索を行うと良いでしょう。
OB・OG訪問
知り合いを介して、企業で働くOB・OGに会いに行く方もいらっしゃいます。
企業内弁護士という働き方を選んだきっかけ、実際働いてみてどうなのかなど、生の声を聞くことができます。そういったカジュアル面談で意気投合できれば、採用面接に進めるケースも珍しくありません。
新卒でインハウスローヤーへの就職体験談
司法修習後、インハウスローヤーとして就職をした方にお話を伺いました。紹介いたします。
【20代後半男性・修習後、1月入社】
私は司法修習後、企業法務部へ就職しました。
親戚が弁護士でかっこいいなと憧れて弁護士を目指したのですが、昔から体力がある方ではなかったのでハードワークでガツガツ働く姿をみて、自分に務まるのかなと不安に思っていました。
司法修習生の時、法律事務所の求人ばかりを見ていましたが、弁護士会の就職セミナーで様々な企業が出展しており、話をする中で「インハウスローヤー」として働く道もいいな!と考えるように。
しかし、転職サイトなどで求人情報を集めていましたが、数が少なく、なかなか面接までいきませんでした。
その時、転職エージェントから、新しく募集を始めた企業の求人をタイミングよく紹介してもらえ、応募することができ、内定をもらうことができました。
就活の疑問や不安、プロに相談してみませんか?
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- 就職活動に乗り遅れたくないけど、いつから何をすれば良いか分からない
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これらのお悩みは、司法修習生の専門エージェント「リーガルジョブボード」にご相談ください。業界知識が豊富で、高い専門性を持ったプロが、あなたの就職活動を全面的にサポートいたします。
エージェントを利用するメリットとして、
- 自身に適したスケジュールで就職活動が進められる
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