
弁護士の平均年収と転職時の提示年収を年齢別・エリア別で解説

by LEGAL JOB MAGAZINE 編集部
編集部

弁護士の転職エージェント「リーガルジョブボード」です。
本記事では、弊社が独自に調査した勤務弁護士61名の年収を、年代別・修習期別や従事している分野など様々な切り口で分析し、勤務弁護士の年収事情を徹底解剖しました。
現役弁護士の方はもちろん、弁護士を志している方や事務所の先生方もぜひご覧ください。
また、本記事では転職時の平均提示年収や年収アップの方法についても解説しています。「転職を考えているので、せっかくなら年収をあげたい」と考えている方も参考にしてください。
この記事の目次
弁護士の平均年収は1119万円だが、中央値は700万円
10年に1度、日本弁護士連合会が行っている「近年の弁護士の活動実態について – 日本弁護士連合会」に掲載されている、平均年収(所得)は1119万円、中央値は700万円です。
平均年収(所得) | 11,190,000円 |
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所得中央値 | 7,000,000円 |
収入平均値 | 25,580,000円 |
収入中央値 | 14,370,000円 |
このデータは「全弁護士」を対象としており、「独立弁護士」なども含まれています。したがって「勤務弁護士」だけに絞った平均年収ではありません。
事務所を経営している「独立弁護士」は、自身の売り上げがそのまま収入に反映されるため、年収が億を超える場合もあります。
しかし、弁護士すべての方が平均程度の年収を得ているわけではありません。
そういった方が平均年収を上げている背景があり、日本弁護士連合会のデータでも年収の中央値は700万円と出ています。
またこちらのデータは「個人受任」での売上が含まれております。
そこで今回、当社(リーガルジョブボード)が保持している勤務弁護士の平均年収データから、純粋な勤務弁護士の「平均提示年収(事務所報酬のみ)」を算出しました。ここからは勤務弁護士に関する年収についてまとめます。
勤務弁護士の平均提示年収の調査方法
ここからは、「勤務弁護士」だけに絞った年収について解説します。
ここでの留意点として、本記事で公開するのはあくまで転職時の平均「提示」年収であり、平均年収ではありません。法律事務所に勤務している弁護士としてのキャリアを積んでいけば、当然年収も上がっていきます。
◇調査対象
2019年3月~2023年5月までの間に、弊社「LEGAL JOB BOARD」を通してご入職された弁護士資格をお持ちの方のうち、提示年収の算出が可能な27歳~61歳までの61名を調査対象としました。
◇提示年収の算出方法
ご入職時に提示される雇用条件通知書に記載された雇用条件をもとに、提示年収を算出しました。
◇調査項目
- 提示年収
- 性別
- ご入職決定時の年齢
- ご入職年
- ご入職された職場が所在する都道府県
これらの調査内容に基づき、各項目ごとの平均提示年収を求め、分析しました。
勤務弁護士の平均提示年収は約660万円
はじめに、上記の前提条件に該当する対象者の提示年収を算出しました。その結果、勤務弁護士の平均提示年収は¥6,623,362円でした。
この数字は事務所・企業からの年収提示額のみを指しています。
日本弁護士連合会が行っている「近年の弁護士の活動実態について – 日本弁護士連合会」に掲載されている、中央値700万円とほぼ同じ結果となっております。
提示年収のレンジレートごとの割合は以下のグラフのとおりです。

600〜699万円にあたる人が21.2%と最多でした。
次点では、400~499万円・500~599万円・700~799万円が17.3%と多いが、それ以外の年収も11.5%などで大差はありません。
一般的に、勤務弁護士の年収は経験年数やキャリア、また取り扱っている分野によって大きく左右されます。
今回の調査対象となる、弊社「LEGAL JOB BOARD」を通して入職した会員様は経験が浅い方が多かったため、中央値と比べると若干少ない結果が出たと考えられます。
そのため、どういった事務所に入るのか、どういった働き方をするのかが年収を上げるためにはとても重要です。
年齢別の平均提示年収
勤務弁護士の年収は実務経験年数に比例するとされています。
年代で変化はあるのでしょうか。

一番提示年収が多いのは40代の約880万円です。今回、調査対象で50・60代の方は、弁護士資格に受かって間もない方も含まれており、提示年収が低い結果がでました。
上記の結果から、弁護士の年収を上げるのに大事なのは年齢ではなく、経験年数やキャリアであるとわかります。
では、修習期ごとの平均提示年収はどのようになるのでしょうか?
修習期ごとの平均提示年収
修習期ごとの平均年収提示年収は下記の通りです。

一番提示年収額が高いのは、30代後半~40代の方が多い60~64期です。
今回この修習期はインハウスや企業法務の業務に従事している方が多く、提示年収1,000万円を超える方がほとんどだったためこのような結果になりました。
一般的に、勤務弁護士の年収は、経験年数やキャリアによって左右されますが、実はどの分野につくかでそのキャリアのあり方が変わってきます。
分野別の平均提示年収
勤務弁護士の勤務先にあたる事務所の分野、またインハウスに分けて集計いたしました。

インハウス、企業法務の分野に従事している方の年収が高い傾向にあるという結果がでました。
企業法務を扱う事務所は5大法律事務所や大手法律事務所が多いので、こちらも給与水準が高いと言えます。
またインハウスは経験豊かな弁護士、特に企業法務経験者を中心に採用していることで年収が高水準となりました。
また総合系(一般民事、企業法務問わず幅広くやっている事務所と定義)は年収が低めというデータが出ましたが、これは事務所の「収益性」の関係かと思われます。
幅広い分野経験できることは弁護士キャリアとしてプラスになる一方、案件ごとのノウハウ、ナレッジの量や事件処理のスピードはある分野を専門的にやっている専門性の高い事務所には及ばない可能性があります。
事件処理のスピードや解決(処理)数の差が、収益性の差、はたまた勤務弁護士の年収の差に繋がっていると考えられます。
男女別の平均提示年収
OECDの統計によると、日本における男女間の賃金格差は22.1%で、世界的に見て格差が大きいとされています(フルタイム労働者の中位所得における男女間賃金格差、2021年)。
では、勤務弁護士の場合はどうでしょうか。

男女間での平均提示年収の差額は385,463円となっており、女性の方が平均提示年収が高い結果となりました。
今回の調査では、経験年数の長い女性弁護士の方が多数調査対象に含まれていたことからこのような結果となったと推察します。
この結果の通り、平均提示年収を基準とした場合、性別による年収の変化はほとんどないと考えられます。
勤務弁護士の最高年収は?
ここまで、勤務弁護士の平均提示年収についてお話ししてきましたが、最高年収がどのくらいなのか気になる方も多いのではないでしょうか。
よく、年収〇億といったお話しもありますが、それはあくまでも独立している弁護士の場合がほとんどです。
勤務弁護士の場合、一般的には年収は600~800万円程度までの方が多いようです。
5大法律事務所で働いたり、支店長や代表社員、役員など、責任の重いポジションに就いたり、事務所の方針によりますが個人受任案件を認められる場合は、自身で案件を受けることで年収をアップさせて年収1000万円を超えるケースもあります。
キャリアと年収のリアルな関係
では、実際に1,000万円以上の年収を提示された方はキャリアにどのような特徴があったのでしょうか。
弊社リーガルジョブボードを通じてご転職された方の具体的な事例で見ていきます。
◇提示年収 1,200万円/経験 約15年/当時40代(法律事務所→インハウスローヤー)
転職前は企業法務をメインの法律事務所で勤務。スキルアップのため、転職か独立かと検討しながら転職活動をしていました。
こちらの方は賠償事故や賠償問題、紛争事案の処理などの業務を得意としており、会社経営をサポートしている企業さまが求めているスキルとマッチしたため高い提示年収額で入職が決定いたしました。
◇提示年収 1,000万円/経験 約5年/当時30代(法律事務所→法律事務所)
この方は弁護士資格を取得後から、同じ事務所で約10年ほど勤務。今後は企業法務をメインにキャリア形成したいと転職をご希望でした。
M&AやIPO、株主総会など企業法務の業務経験と、キャリアを築きたいという意欲から内定をいただき、幅広い経験から自身の希望していたよりも高い提示年収額で決定いたしました。
法律事務所の種類別の年収事情
弁護士の収入は、働く法律事務所の規模や種類で大きく変わります。
年収の違いに特徴がある事務所の年収事情を解説していきます。
五大法律事務所や大手法律事務所(東京)
一般的な弁護士1年目の平均年収は550万円程度ですが、五大法律事務所などの大手事務所は、1年目から年収1,000万円以上が目指せます。
2倍近い収入を得ることができるため、しっかりと稼ぎたい方は大手法律事務所への就職を希望します。
経験を積むほど年収は上がっていきますし、パートナーになればグッと年収が上がることもあります。
小・中規模の法律事務所(東京)
小・中規模の事務所の場合、年収は各事務所の賃金制度に左右されるのが特徴です。
中堅法律事務所で、初年度から年収700~800万円程度を出すところもあれば、年収300万円からスタートする事務所もあるのが事実です。
そのため、小・中規模の法律事務所に転職する際は、様々な事務所の求人を比較するようにしましょう。
都市部の法律事務所(東京以外)
東京以外の都市部の法律事務所では、初年度は年収500~700万円からスタートする事務所が多い印象です。
弁護士の平均的な給与を得られる事務所が多いですが、なかには年収300万円からスタートする事務所もあります。
渉外系法律事務所であれば比較的、高給与が期待できるでしょう。
企業内弁護士(インハウスローヤー)の平均年収
上記のデータは法律事務所勤務の弁護士、そして一般企業内で働くインハウスローヤーを含めた勤務弁護士のデータでした。
インハウスローヤーに絞った平均年収はというと、1,000万円程度です。
しかし詳細に言うと、平均年収は「働く年代や業界・実務年数」などの要因によって変化します。
インハウスローヤーの平均年収や、年齢・業界別の年収が気になる方は、下記の記事をご覧ください。
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開業・独立弁護士の平均年収
開業・独立弁護士の平均年収は1,000~1,500万円程度です。
しかし、年収300万円以下の方や1億円を超える方も混ざっており、年収の幅がかなり広くなっています。
自身の売り上げがそのまま収入に反映されるため、高所得の方ほど労働時間が長くなっている傾向にあるようです。
開業・独立を目指す弁護士の方は多いですが、収入やワークライフバランスなどの条件を比較し、自身に合った働き方を考えることが大切です。
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弁護士が年収を上げる方法
弁護士が年収を上げる方法について、下記で解説していきます。
年収が高くなる事務所への転職
最も多くの方が選ぶ方法は、年収が今よりも高くなる事務所へ転職することです。
何年か仕事をすると、案件のボリュームや年収の上がり方によって、今後どのように昇給していくか、ある程度予想できます。
年収アップを現事務所に交渉しても実現されない場合、自分をより高く評価してくれる事務所への移籍がベストでしょう。
外資系企業でインハウスローヤーとして働く
これまでのデータから、インハウスローヤーは年収が高い印象です。
とはいえ、一般企業で働くため、法律事務所のように一個人で案件を受注しないので、裁量をもって働ける事務所の方が稼げると考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、働く企業によっては、更に高給与を実現することができます。
特に、外資系企業は実力次第で高給与を目指すことができ、なかでも外資系証券会社は給与水準が高いです。具体的には、ゴールドマン・サックス証券、UBS証券、JPモルガン証券など。
企業によりますが、役員クラスで3,000~4,000万円プラス賞与という高収入を得ることができます。
パートナー弁護士になる
今の事務所で働き続けながら年収を上げたいのであれば、「パートナー」に昇格する方法もあります。
パートナー弁護士になれば、給与形態が変わって年収が上がるケースが多いです。
もしパートナーを目指すのであれば、該当事務所で経験を積み、実力を認められる必要があります。
また、弁護士としての実力に加えて、経営知識も必要です。
独立・開業する
独立・開業も、年収を上げる方法の一つでしょう。
独立・開業するには、弁護士としての豊富な経験や案件見込のほか、経営知識や開業準備も必要になります。
自身の案件が収入にダイレクトに反映されるため、頑張り次第で高給与を目指すことができます。
転職エージェントを利用すると年収を上げられる理由
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