司法書士

司法書士が年齢関係なく就職に有利である理由や初年度の平均年収

by 司法書士法人グラティアス 志村直也

代表所長 司法書士

担当職種:
  • 司法書士

本記事では、実際に司法書士である私が「司法書士は就活や転職で有利な職種である理由」について解説します。

結論から言うと、「司法書士」は業界から非常に重宝されている資格であり、まだまだ人手不足となっている状況です。

その理由を詳しく掘り下げるために、本記事では

についてまとめています。

司法書士について気になっている方やこれから司法書士資格の取得を目指そうとしている方、就職や転職活動をする方など、どんな状況の方でも参考になる内容になっているのでご覧ください。

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「就職できない」は嘘!司法書士が就職や転職で有利になる理由

「司法書士は就職できない」ことは決してございません。

その理由は、司法書士事務所や一般企業では、司法書士資格を持っている人材が不足しているからです。よって司法書士資格を持っている方だけで重宝される存在となり得るでしょう。

ただしこれは、司法書士資格を活かせる職場に限るお話です。司法書士資格が活かせない職場では、資格を所持していても就職自体が有利に働くわけではありません。

もちろん、「司法書士資格を取得した」という「過程」を評価する企業は一部あると思います。

司法書士事務所に就職した場合の初年度年収

勤務司法書士の平均年収は400万円~500万円くらいです。年収は実務経験の年数によって上がるので、年齢によって初年度の給料が変わるということはありません。
※事務所によっては年齢を考慮してくれる場合もありますが、微々たるものです。

初年度の年収は、都心であれば390万円前後、地方であれば370万円前後が目安になるかと思います。その後の年収ですが、勤務3~5年目で400万円~500万円前後、その後は事務所への貢献度(営業してお客さんを増やすなど)に応じて600万円~700万円前後、事務所において欠かせない存在になれば800万円~1000万円以上が一般的な勤務司法書士の年収の目安です。

それ以上に年収を増やしたいという場合は、独立開業をするか法人役員に就任するなどの必要がありますが、就職・転職がしやすく、平均400万円~500万円前後の年収と考えると、司法書士は士業の中でも安定した資格であると言えるでしょう。

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司法書士補助者の経験があると初年度年収が上がることも

司法書士補助者の経験がある場合、司法書士になったときの年収が上がるケースがあります
リーガルジョブボードの転職事例では初年度年収が「50万円」アップした事例がございます。

司法書士補助者とは、司法書士のアシスタントのような職種です。資格がなくても誰でも就職・転職できる職種でありながら、司法書士に近い実務経験を積むことができます。「司法書士がどんな仕事を行うのか、肌で感じてみたい」「司法書士事務所の雰囲気を体感してみたい」という方にはおすすめです。

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司法書士の求人傾向や求人が多いエリア

司法書士は安定して求人があり、就職しやすい職種です。時期によっての大きな偏りはあまりありません。「合格後に就職活動をしたけれど、司法書士事務所に就職できなかった」という話は、滅多に聞かないです。

求人数が多いエリアは関東圏・関西圏などの大都市。その他の地域では札幌・名古屋・福岡などの栄えている都市が求人が多いです。

エリアによって就職率は異なりますが、なかなか決まらず就職に苦労するという資格者は少ない職業でしょう。少なくとも就職率は高いと断言できる職業です。

特に求人が増える時期は合格発表後の10月

司法書士の求人数が特に多くなる時期は、司法書士合格発表後である10月から年末年始です。

合格発表後は合格者見込みの司法書士が増えるので、それに沿って求人も増えます。また年末年始は転職希望者が非常に増えるため、その時期でも司法書士の求人数は増えます。
※上記以外の時期はあまり求人がない、というわけではないのでご安心を!

都心や大都市の場合、司法書士合格発表の10月~年明け、年度末は非常に転職する方が多いため、それに合わせて求人も増える傾向にあります。

一方で地方は、規模の大きな事務所が少なく通年募集をかけているようなところはあまりないため、退職者の補填や業務拡大のための対策として随時求人を出します。

そのため気になる司法書士事務所は事前にピックアップし、求人情報をウォッチしておくことをおすすめしています。

司法書士の年齢層と40代・50代でも就職できる理由

士業の中でも司法書士の年齢層は高く、実際に司法書士の平均年齢は50代です。また、近年の司法書士合格者の平均年齢は30代後半の為、40代・50代で司法書士デビューする合格者の方はたくさんおります。

では、40代・50代でも司法書士事務所への就職は可能なのでしょうか?

結論から言えば、可能です。

ただ、年齢が若い方が就職において有利なのは事実です。それを前提に若い司法書士が好まれる傾向の事務所と、年齢層が高めの司法書士が好まれる傾向の事務所の特徴を下記にて説明します。

「20代〜30代」が歓迎される司法書士事務所の特徴

「20代〜30代」の司法書士が歓迎される司法書士事務所は「不動産決済」「企業法務」をメインに扱っている事務所です。

これらの事務所は、特に不動産決済であれば体力勝負な部分がありますし、企業法務をメインに扱っている事務所は代表司法書士が若い人が多い傾向にあるからです。

もちろん40代・50代の新人司法書士を全く採用しないということはないですが、例えば数年10年くらい補助者経験がある方であれば、就職には有利に働きます。

年齢の差をカバーする経験や能力がなければ、若い方が採用に有利に働くでしょう。

「40代〜50代」が歓迎される司法書士事務所の特徴

「40代〜50代」の司法書士が歓迎される司法書士事務所は「成年後見業務」「相続関係業務」をメインに扱っている事務所です。

これらの事務所は、お客さんも年齢層が高い傾向にある為、若い司法書士より年齢層が高めの司法書士の方が好まれる傾向が強いです。

特に成年後見業務は、被後見人の全財産を原則その人が亡くなるまで管理するという業務です。裁判所から選任されたとは言え、見ず知らずの司法書士がある日突然その人の全財産を管理するとになるのです。

被後見人の親族からすれば、そのような業務を20代・30代の若い人に任せるよりは、40代・50代、場合によっては60代と年齢層の高い司法書士に任せる方が潜在的な安心感があります。

よって、必然的に採用する側も年齢層が高めの司法書士を希望する傾向があります。

司法書士資格が景気に左右されない理由と将来性

司法書士の主な業務は登記業務です。特に不動産登記を主な業務として扱っている事務所は多いです。

一般的に不動産業界の動向は景気に左右されやすいと言われております。それに連動して不動産登記も景気が良くなるにつれて登記件数が増える傾向にあります。

一方で、景気が悪い時は債務整理業務の案件が増える傾向があります。

実際に、最近のコロナ媧の影響で、債務整理を主な業務として扱っている事務所では案件が増えていると聞きます。

また、現在日本は超高齢化社会であり、今後も高齢化率は上昇していくと予想されています。高齢化率が増えるにつれて、成年後見業務、相続・遺産承継業務の需要も、より増えていくことになるでしょう。特に相続登記は義務化の方向で法改正がなされる予定です。

不動産登記、債務整理業務、成年後見、相続・遺産承継業務は、いずれも司法書士業務です。以上のことから、司法書士は景気に左右されない資格であると言えます。

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司法書士資格が有利に働く就職先

ここからは、司法書士の活躍できる就職先を紹介します。司法書士資格を取得した場合、以下のような職場が就職先の候補となります。

司法書士資格が有利に働く就職先①司法書士事務所

司法書士の勤務先として一番多いのが、司法書士事務所への勤務です。 一番オーソドックスな選択になります。「勤務司法書士」という職種になります。

将来的に独立を考えている方も、まずは司法書士事務所で実務経験や実績を積むために事務所へ入職することが多いです。

事務所によって取り扱いの多い業務の違いがあるため、何度か転職を重ねながらキャリアアップしていくパターンがメジャーとなっています。

ただし、一口に「司法書士事務所」と言ってもあらゆる種類の事務所が存在します。大きく分けると5つあります

  • 不動産登記メインの事務所
  • 商業登記メインの事務所
  • 信託業務メインの事務所
  • 債務整理メインの事務所
  • 満遍なく請負う事務所

「司法書士の就職先」の話から少し脱線しますが、それぞれの特徴やメリット・デメリットを少し解説させてください。

不動産登記メインの司法書士事務所の特徴

一つ目は、「不動産登記メイン」の司法書士事務所です

不動産登記とは、例えば土地を購入した際に土地の登記簿に所有者として名前を記載する手続きです。司法書士業務の多くは、不動産登記です

不動産案件は圧倒的に多いため、不動産登記を生業にしている事務所は多いです。

働くメリット

司法書士のメイン業務である不動産登記のスキルを身につけることが出来ます。

司法書士と言えば不動産登記と言われますので、不動産登記に関連するスキルは必須です。

働くデメリット

不動産のみの事務所であれば決済業務が非常に多く、月末は残業が多くなる傾向があります。

決済とは、不動産の売買の際に売買代金を支払う残代金決済のことです。

多忙であることや業務の偏りから、別事務所への転職を検討する方もいらっしゃいます。

商業登記メインの司法書士事務所

二つ目は「商業登記メイン」の司法書士事務所です。

商業登記とは、例えば会社設立時に商号(社名)・役員情報・資本金額などを法務協で登録する手続きを指します。司法書士業務の1.5割程度は商業業務です。

商業がやりたい!と考える司法書士も多く、人気の業務です。

働くメリット

ワークライフバランスが保ちやすいです。

商業の場合は取引先が企業になるため、アポイントは日中になるからです。

不動産業務のスキルを身につけ、新たな業務を身につけたいという方にもってこいな事務所(業務)です。

働くデメリット

司法書士業務の中で、一番最初にAI化されると言われています。

そのため、商業メインのスキルのみに偏ってしまうと将来的に仕事が減少してしまう懸念があります。

信託業務メインの司法書士事務所

三つ目が「信託業務メイン」の司法書士事務所です。

信託業務とは「民事信託」のことで、自分の財産を信頼出来る人に託し、その財産を自らが定めた目的に沿って管理・運用してもらう制度です。

人口の減少や、AIの導入による業務の縮小の不安から、あらゆる事務所が信託を取り入れ始めています。

高齢化の現代において注目されている、トレンドの業務です。

働くメリット

高齢化が進んでいるため、今後業務の増加が見込まれています。高齢者や親族に寄り添うことが多く、AIではカバーできない領域です。

働くデメリット

今後伸びる見込みのある事業とは言うものの、本当に将来的に伸びるのかどうかは未知です。信託メインで成功し、売上を伸ばしている事務所もまだ少ないです。

債務整理メインの司法書士事務所

四つ目は「債務整理メイン」の司法書士事務所です。CMなどでもよく流れていた「過払い金請求」などの債務整理業務です。

過払いバブル期より減少傾向ではあるものの、債務整理の業務(任意整理・破産・個人再生など)はなくならないため安定しています。

働くメリット

貸金業法の改正で「過払い」の新たな発生がなくなったので、過払いバブル期より減少傾向しています。しかし、債務整理の業務(任意整理・破産・個人再生など)はなくならないため安定しています。

働くデメリット

債務整理事務所を扱っている事務所は、100%業務が債務整理のみのところが多いです。そのため、長年勤めると別分野に転職しにくくなることもあります。どの分野を極めたいのか1年くらいで判断された方が良いかもしれません。

幅広い業務を請負う司法書士事務所

五つ目は「幅広い業務を請け負う」司法書士事務所です。

司法書士に一番人気なのは、さまざまな経験が積める事務所。

しかし、オールラウンドな事務所は数が少なく、人気が殺到することも多いため求人が少ないことも。

働くメリット

さまざまな経験を積めることがメリットです。幅広いスキルを身に付けられるため、偏りなくスキルアップできます。

働くデメリット

事務所としては幅広い業務を請負っていても、部門が分かれており特定の業務しか任せてもらえないことも。また、事務所によっては基本的なことしか学べず「広く浅く」な知識になってしまう可能性もあります。

入社前に業務スタイルを確認しておくのが良いでしょう。

司法書士の就職先②他の士業事務所

弁護士事務所など、その他士業事務所へ勤務する方もいます。

弁護士のもとでパラリーガルとして働く方や、司法書士だけではなく弁護士や公認会計士など様々な法律のプロが所属している総合的な法律事務所で働く方もいます。

多くの士業が所属している事務所は、法律に関するサービスをその事務所だけで完結することができます。

会社設立など企業法務の分野で活躍してる事務所もあり、多くの経験が積める魅力があります。

司法書士の就職先③一般企業

一般企業の「企業法務」として、就職をする方も増えてきました。 

企業法務とは、企業で法律やコンプライアンスに関わる業務をこなす職種です。

まだまだ司法書士事務所の求人数が多いですが、法律に強い人材を一般企業が求める傾向も強くなってきています。

司法書士資格を持っていると法律系に強い人材であると見なされ、企業法務で働くことも選択肢の一つとなります。

また、企業法務を求める企業は大手企業がほとんどのため、司法書士事務所に勤務するよりも給与や福利厚生などの待遇が良い場合があるところも魅力の一つです。

しかし、応募条件は司法書士事務所などで企業法務の経験がある方がほとんどのため、まずは司法書士事務所でスキルを磨くことが必要です。

なお、日本組織内司法書士協会という団体が、「組織内司法書士」を制度として確立することを目的に活動をしております。

弁護士と異なり、企業側から司法書士が法律実務家としてあまり認知されていないことや、事務所設置義務、依頼に応じる義務等の司法書士法との兼ね合いで、制度確立までには現状様々な障壁がありますが、いずれは企業内弁護士のように「組織内司法書士」が企業側から認知される日が来るかもしれません。

興味がある人は、日本組織内司法書士協会に入会してみるのも良いと思います。

司法書士の就職先④独立して事務所を構える

司法書士としてスキルを磨いて、独立開業も選択肢にあげられるでしょう。

司法書士は、独立しやすい職種とも言われていますので他の業種で開業するよりも敷居は低めです。

独立する場合は、司法書士として能力だけではなく、集客のためのコネクションや営業能力も必要となります。

集客面をクリアしているのならば、高収入を得るためのステップとして独立開業がよいですが、仕事面を含め不安があるのであれば事務所や企業に入って能力を高め集客のためのコネクションをつくる方がよいでしょう。

司法書士が就職や転職でさらに有利になる条件

続いては、司法書士の就職や転職の際に有利にはたらく条件についてまとめます。下記でお話していきます。
※下記を踏まえていないと就職できない、というわけではございませんのでご安心を。

より有利になる「他の資格」を持っていること

司法書士資格だけではなく、他の資格を持っていると就職や転職に有利になることがあります。

例えば

  • 行政書士
  • 土地家屋調査士
  • 社会保険労務士
  • 宅建士
  • 中小企業判断士
  • ファイナンシャル・プランニング技能士

など。

司法書士分野に関連性のある資格を持っている場合はアピールポイントとなります。

無理に取得する必要はありませんが、お持ちの場合は書類や面接で触れるようにしましょう。

司法書士補助者としての経歴があること

司法書士補助者として働いていた経歴がある場合、即戦力として重宝されます。司法書士補助者とは、司法書士のアシスタント業務を行うような職種です。

仕事の流れや実際の業務に慣れている方を採用したいと考える事務所は多いので、補助者としての経歴があると有利になると言えます。

資格取得後、働いている事務所でそのまま司法書士として働くケースも。

ちなみに司法書士補助者は、司法書士資格を持っていなくても就職することができます。LEGAL JOB BOARD(リーガルジョブボード)では、司法書士補助者の求人をご紹介しています。

今すぐ転職する気持ちはなくとも、求人を見たり転職可能な求人を紹介してもらうことはできますので、ご興味があればお気軽にご連絡ください。

金融機関や不動産業界の出身であること

金融機関や不動産業界で働いていたことも、アピールできるポイント。司法書士業務は金融機関、不動産業界と関わることが多いからです。

それらの業界に関連する知識があるのとないのでは、業務の理解度も変わってきます。なにより業界にコネクションがある場合、採用側の事務所としては大歓迎です。

司法書士が就職や転職に不利になる条件や原因

一方で、司法書士の就職や転職で不利になるような条件も存在します。

条件に見合っていない事務所への応募

例えば、「経験者を求めている求人」に、「未経験者」が応募する場合です。

こちらは、条件に見合っていないため内定をもらうことは難しいと言えます。

司法書士資格は非常に有利になる資格ではありますが、採用側とのミスマッチが生じると内定が難しくなるため、マッチングが良いかどうかは見極める必要があります。

求人の少ないエリアで就職を希望する場合

司法書士の求人数は、エリアによって大きな差があります。希望するエリアの求人が少ない場合、就職や転職活動が思うように進まないことも。

そのような時は、求人の多いエリアで経験を積んだ後に希望地域に転職する、というような方法があります。

一度就職をするとずっとそこで働かなくてはいけないということはないので、まずは自分がスキルアップできる環境を探すのもいいでしょう。

就職・転職に必要なのは自己分析

司法書士資格を持っていれば、就職できないことはございません。

しかし、求人が求めているものと求職者様側が持っているもののマッチング度合いが強くなければいけないという条件も、もちろん存在します。

そのためには自己分析をすることです。

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上の記事は、司法書士事務所の選び方(自己分析)を詳しく解説している記事です。

自己分析を行い、自身の強みや弱みを理解した上で、どの事務所や企業が自分に適しているのかを見極めましょう。

司法書士は転職エージェントを活用すると就職がさらに有利に

司法書士の就職・転職活動をより有利にするには、転職エージェントを活用することです。転職エージェントとは「あなたの転職活動を全面的にサポートしてくれる転職アドバイザー」です。例えば

  • あなたが活躍できる求人を紹介してくれる
  • 書類・面接選考を徹底してくれる
  • 年収を交渉してくれる
  • キャリアステップの相談に乗ってくれる

など、転職活動を多方面から支援してくれます。

中でもリーガルジョブボードは「司法書士に特化した」転職エージェントなので、就職活動や転職でお困りの際はお気軽にご相談ください。

この記事の執筆者

司法書士法人グラティアス 志村直也

代表所長 司法書士

担当職種:
  • 司法書士

司法書士法人グラティアスの代表所長・司法書士有資格者。司法書士事務所を複数経験しており、業界に関する知識やトレンドを発信中。以前は主に家族信託をメインに生前対策や認知症対策に従事し、現在は売買、相続、民事信託などの不動産登記を中心に、商業登記、裁判業務など幅広く注力。

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