司法書士に「将来性がない」「仕事がない」は嘘!AI時代に活躍する方法も解説
by フラタニティ司法書士事務所 志村直也
代表司法書士
こんにちは。リーガルジョブマガジン編集部です。
本記事では、フラタニティ司法書士事務所 代表司法書士の志村先生に監修いただき、「司法書士の将来性」についてAIの台頭にも触れながら解説します。
業界の動向や将来性だけでなく、今後活躍できる司法書士になるためのヒントを得ていただける内容となっています。
この記事の目次
司法書士に「将来性がない」「仕事がない」とされる要因は?
下記のような一部の事業や業務は、この先需要が小さくなると一部では言われていたり、実際に件数が減ってきていたりもします。
- 不動産登記や会社登記
- 裁判者や法務局に提出する書類作成
その理由を以下にまとめていきます。
人口が少なくなってきているから
近年、「人口減少」により不動産を購入する母数が減少しています。そのため、司法書士のメイン業務の一つである不動産登記の受注も余儀なく減少します。
事実、不動産登記の件数は平成1桁台に2000万件を超えていたものが、近年では1200万件程度となるなど、年々右肩下がりとなっています。
また司法書士の人口は増えているため、事務所あたりの受注件数が相対的に少なくなるとも言えるでしょう。
自分自身で登記手続きをする人が増えてきているから
年々、司法書士を頼らず自分自身で登記手続きをする人が増えています。
その背景としては、インターネットの普及により、手続き方法を調べることが以前に比べ容易になったこと。また、自分自身で行うことによるコスト削減を目的とした方も増えているようです。
マイナンバーやAIなどで自動化される業務が増えてくるから
マイナンバーやAIなどでの自動化も、登記手続きの受注数に影響します。
自動化に任せられる一部の仕事が徐々に増えることで、登記手続きを担う仕事は減っていくとも考えられます。
司法書士の仕事がAIに完全に奪われることはない理由
将来的に、AIにより自動化される業務が増えていくでしょう。
しかし、そうは言ってもAIに完全に仕事を奪われることはないと思われます。下記で詳しく解説します。
登記以外の提案業務が増加傾向にあるから
高齢化社会が進み、家族信託などの需要の高まりによって、司法書士業界ではAIの得意とする登記などの事務的業務ではない仕事が増えてきます。
例えば、家族信託業務などは、家庭ごとの提案を行う必要があるため、AIでは対応しきれません。また、後見業務の際、判断能力が低下した高齢者の後見人として業務を行うため、クライアントのお年寄りへの訪問や、家族との面談や連絡などの業務が発生します。
AIではそのような業務を行うことが出来ず、司法書士が必要とされる場面です。
司法書士業務にはコミュニケーションが必要だから
コミュニケーション能力という面において、AIは人間に敵いません。司法書士は登記を含むすべての業務において、クライアントへのヒアリングをおこないます。
情報を聞き出すだけでなく、クライアントに寄り添う姿勢が求められる場面も多く、AIではなく人間による対応が必要です。
感情も細かに汲み取れなければ、AIが司法書士業務を完全に行うことは難しいでしょう。
決済業務は実務上AIに代替えされないから
決済業務は利害関係人が複数になるため、実務上すぐにAIに代替えされないと考えられます。
自分に登記名義が移らないのであれば売買代金を支払いたくない買主、売買代金が支払われるまで登記名義を移したくない売主、抵当権設定登記が確実にできるとの保証がない限り融資をしない銀行などの利害関係を調整し、それぞれの同時履行を実質的に担保しているのが決済業務における司法書士の役割です。
また、決済現場にて、本人確認、登記意思の確認を通じ、これらを総合して登記の真実性も担保しています。
ブロックチェーン登記はすぐには導入されないから
AIとは話が異なりますが、ブロックチェーンを用いた不動産登記システムの導入がされれば司法書士は必要なくなるのではないか?と聞いたことがある人もいるかもしれません。
確かにブロックチェーン技術を権利登記に用いることで、管理者が分散し、改ざんもされず、権利の移転とほぼタイムラグなく記録されるなどのメリットが想定されます。
しかし、ブロックチェーン登記の実現には、登記法だけでなく関連する法令全ての改正が必要です。
またシステムを一般化するまでの道のりも考えると、ブロックチェーン登記の実現はまだ難しいと言えます。実現するとしても、かなり先の未来になるでしょう。
需要が高まるであろう司法書士業務とその理由
減少するとされる業務がある一方で、今後も司法書士自体の需要は高まると予測されます。
司法書士の需要が高まるであろう業務やその理由を、下記で詳しく解説します。
成年後見制度の導入で代行業務が増加
成年後見制度の導入により、司法書士への依頼数が増加。高齢化が進んでいるため、成年後見制度は今後さらに普及するでしょう。
具体的な業務内容としては、財産の管理や財産分与などの協議や、介護施設など身の回りの必要な契約締結などです。
相続登記の義務化によって依頼が増加する
令和6年4月1日より、相続登記が義務化されました。相続登記が義務化されることによって、司法書士への依頼が増加する見込みです。
なお、改正後は相続開始から原則3年以内に相続登記をする必要がありますが、改正前の相続もその対象となります。すなわち、改正後しばらくは相続登記の需要は増えると予想されます。
財産管理業務への関与
登記業務だけでなく財産管理業務も、司法書士の主力業務になりつつあります。財産管理業務とは、成年後見人、遺産承継、遺言執行者、信託監督人など誰かの財産を管理する業務です。
超高齢化社会の現代の日本において、これらの業務は今後も需要が増えると予想されます。また、定形的な業務でもないため、AIにも代替えされない業務だと言えるでしょう。
AI時代でも活躍する司法書士になる方法
AIが台頭していくと思われる中でも、司法書士として活躍し続けるためのポイントを解説します。
相続・信託のコンサル業務を経験する
AIやテックに取って代わられそうな業務が多い中、これから司法書士に求められるのは、相続・信託のコンサルティング業務です。
例えば、相続に関する仕事を単なる相続登記だけと捉えず、遺言作成からどのように遺産分けをすればお客様の望み通りになるのかを考え、税務、保険、任意後見制度、家族信託、遺言執行なども交えて総合的に提案するといったことです。
コンサル業務には、高い専門性や対人スキルなどが必要です。経験を積むことで、事務所や企業から求められる司法書士人材になれるでしょう。
得意な分野に特化する
幅広い業務経験があるに越したことはありませんが、得意分野に特化し、周囲と差別化を図ることも手段の一つです。
例えば、不動産分野の知識や経験・キャリアを積み、その分野のプロフェッショナルを目指すなど。依頼者は相続登記をお願いする場合、不動産に関する資格を持っている司法書士や、不動産の相続登記の実績が豊富な司法書士を選ぶでしょう。
認定司法書士の資格を取得する
認定司法書士の資格があると業務の幅を広げられるので、司法書士としての将来性や価値を高めたい場合は取得するべき資格でしょう。
認定司法書士になると、簡易裁判所の案件で訴訟額が140万以下の事件の訴訟活動ができるようになります。
認定司法書士になるには、司法書士資格を取得後、特別研修を修了して認定考査に合格する必要があります。
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