
弁護士がダブルライセンスを取得するメリットは?相性の良い資格4選を解説

by LEGAL JOB BOARD 青木
キャリアアドバイザー
- 担当職種:

弁護士に特化したキャリア支援を行う「リーガルジョブボード」の青木です。
本記事では、現役弁護士の新井 玲央奈 氏に監修いただき、「弁護士のダブルライセンス」について解説します。
弁護士のダブルライセンスはどのような資格があるのか、どんなメリットがあるのかなどを知りたい方は、ぜひ参考になさってください。
この記事の目次

この記事の監修者
現役弁護士
新井 玲央奈 氏
弁護士のダブルライセンス、どんな資格がある?
弁護士がダブルライセンスを検討する際に、候補になり得る主な資格を紹介します。弁護士資格があれば試験を免除され、登録だけで取得できる資格も複数あります。
組み合わせ次第で他の弁護士と差別化できるだけでなく、業務範囲を広げたり、信頼が増すといったメリットも期待できます。
弁護士であれば登録できる資格
弁護士であれば登録できる資格として、下記のものがあります。
税理士:
税に関する専門家。申告書の作成や納税・節税のアドバイス等を行う。
弁理士:
知的財産に関する専門家。主に特許・実用新案・意匠・商標の出願手続きを代理で行う。登録には実務修習が必要。
社会保険労務士:
労働・社会保険に関する専門家。労働社会保険手続や、労務管理の相談指導等を行う。
行政書士:
行政手続の専門家。役所に提出する書類の作成、提出手続代理等を主に行う。
海事補佐人:
海難審判において、受審人や指定海難関係人を補佐する。
その他の資格
弁護士であれば登録できる資格とは異なり、試験合格が必須となりますが、下記の資格も候補になり得ます。
公認会計士:
監査・会計の専門家。主に監査証明を行うほか、会計、税務、コンサルティング等の業務も可能。
中小企業診断士:
中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家。企業の成長戦略の策定等を主に行う。
司法書士:
不動産登記や供託手続きの代理等を行う専門家。ただし、司法書士資格を取得しなくても、弁護士業務の一環として司法書士が行う業務を行うことは可能。
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弁護士と相性の良い資格とそのメリット
前述の資格の中でも、特に弁護士業務と相性が良い資格4つを紹介します。
税理士:税務面でのアドバイスや申告も可能
税理士は、税に関する専門家です。申告書の作成や納税・節税のアドバイス等を行うことができます。弁護士と税理士のダブルライセンスは、相続や不動産売買等において、法律問題と税務問題を同時に扱える点が大きな強みです。
例えば相続では、遺産分割協議までを弁護士、相続税申告を税理士が担当することが一般的ですが、ダブルライセンスがあれば、相続税申告までワンストップで対応できます。
遺産分割協議の段階でも、税務面を意識したアドバイスや解決が可能になるという意味でも強みを発揮します。また、相続対策の場面では、遺言書作成の段階で節税対策も同時に考えることができます。
事務所経営の面では、紛争性がない案件であれば相続税申告のみ依頼を受けるという形も考えられます。
中小企業診断士:経営面でのアドバイスも可能
中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家です。企業の経営状態を把握し、成長戦略の策定やそれを実行するためのアドバイスなど、専門的な業務を行うことができます。
弁護士と中小企業診断士のダブルライセンスは、特に企業法務系の弁護士や、顧問先を持っている弁護士にとって有利に働くでしょう。
企業が弁護士を頼る場面としては、紛争の予防・解決という法律問題がほとんどですが、中小企業診断士であれば、法律問題以外に経営上の課題等にも関わることができます。
また、弁護士として関わる場合も、経営面も意識した広い視野で関わることができます。
法律と経営に関する相談にワンストップで対応できるため、「法律のことも経営のことも相談できる弁護士」として、専門性の強化や信頼性の向上につながるでしょう。
公認会計士:財務デューデリジェンスの対応
公認会計士は、監査・会計の専門家です。監査を行って財務情報の信頼性を担保するほか、会計や税務、コンサルティングといった業務も行うことができます。
弁護士と公認会計士のダブルライセンスは、M&Aや企業再編などの場面で、法務と財務の両面からデューデリジェンスを行うことができるのが強みです。
クライアントの包括的なニーズに応えられるだけでなく、公認会計士の資格は弁護士としてのブランディングや、他の弁護士との差別化にも活かすことができるでしょう。
前述のとおり、公認会計士資格を取得するには試験合格が必須です。ハードルが高い分、弁護士と公認会計士のダブルライセンスは希少性が高く、M&Aや企業再編を現在取り扱っている、または今後取り扱っていきたい弁護士にとっては大きな強みになります。
弁理士:知的財産分野での専門性
弁理士は、知的財産に関する専門家です。特許・実用新案・意匠・商標の出願手続の代理や、知財コンサルティング等を行うことができます。
知的財産分野は、離婚や相続等などと違って、独自の法律や最新技術も含めた様々な知識が必要となります。そのため、弁護士業務の中でも専門性の高い分野の一つです。
また、紛争対応だけでなく、特許出願や商標登録出願といった権利形成についても取り扱うことで業務分野も広がり、クライアントからの信頼も高まります。
近年ではIT企業やスタートアップ企業でも知財戦略が重視されています。これらの企業の法務を担当する場合、知財関連のサポートまで対応できます。
そのため弁護士と弁理士のダブルライセンスは、知財案件を扱う弁護士はもちろん、企業法務を扱う弁護士にとって強みとなります。
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弁護士がダブルライセンスを取得する理由・背景
弁護士が他の資格も登録・取得する理由や背景として、主に以下の3つがあります。
業務の多様化と専門性の追求
法的ニーズが多様化する中で、弁護士業務は従来の示談や訴訟対応だけでなく、企業法務、知的財産、税務、労務など様々な分野にひろがりを見せています。
相続案件が多い場合は「税理士」、中小企業の案件が多い場合は「中小企業診断士」、知財案件が多い場合は「弁理士」、労働案件が多い場合は「社会保険労務士」といったように、各分野に適した資格を取得することで、より専門性の高い弁護士として活躍できるでしょう。
市場価値の向上と差別化
弁護士資格にプラスしてダブルライセンスを取得することは、他の弁護士との差別化にもつながります。高い専門性や強みを持った弁護士になりたい場合は一つの武器になるでしょう。
効果的に市場価値をアップするためにも、取り組みたい分野、専門性を高めたい分野に適した資格でダブルライセンスを目指すことが重要です。
ワンストップサービス提供のニーズ
ダブルライセンスやトリプルライセンスの弁護士は、クライアントに包括的なアドバイスやサービスを提供することができます。
法律だけでなく、財務や会計、知的財産等の問題を一括して相談できる専門家の需要は高く、クライアントに信頼できるパートナーとして選ばれる可能性が高まります。
弁護士がダブルライセンスを取得した後のキャリア
弁護士がダブルライセンスを取得した後に考えられる主なキャリアパスを解説します。
独立開業によるサービス展開
ダブルライセンスを活かして独立開業することで、クライアントに対して幅広いサービスを提供できます。特に、中小企業や個人事業主を対象としたワンストップサービスは需要が高まっています。
他の弁護士との差別化
すでに独立開業している弁護士でも、ダブルライセンスによって事務所の特徴が明確になります。情報が溢れ、「どの弁護士に相談すれば良いかわからない」という個人や企業が多い中、ダブルライセンスは大きな差別化になり得ます。
複数資格を活かしたコンサルティング業務
公認会計士や中小企業診断士等のダブルライセンスを活かせば、法律、税務、会計などの分野でコンサルティング業務を行うことも可能です。より専門的かつ高度な案件に対応できる弁護士を目指すことができます。
企業内弁護士としての活躍
企業内弁護士として、法務だけでなく、税務や財務の知識を活かして活躍できます。これにより、企業内でのポジションや評価が向上する可能性があります。
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ダブルライセンスの注意点
税理士・弁理士・社労士等などは、弁護士資格を持っていれば登録できるため、ダブルライセンス自体は難しくありません。
ただ「資格を持っている」ということと「その分野について専門性がある」ということは別です。
例えば、税理士資格を取得しても、一から税理士試験に合格し、実務経験を積んできた税理士と同等の知識・経験があるかというと、そうとは限りません。
ダブルライセンスにふさわしいサービスを提供するには、それに見合った研鑽を積むこと、事務所として人的・物的環境を整えることも必須となります。
そういった対応をせずに資格だけを掲げてしまうと、クライアントの信頼を損ねることになりかねませんので、注意が必要です。
裏を返せば、ダブルライセンスにふさわしいサービスを提供できる弁護士は希少ですから、その分市場価値も高まるため、取り組んでみる価値は十分あると思います。
また、資格ごとに登録料や定期的な会費等が発生しますので、その点も視野に入れておく必要があります。
複数の資格登録をしている弁護士はどれくらい?
日本弁護士連合会の『弁護士白書 2024年版』によると、弁理士・税理士に登録している弁護士数は下記の通りです(2024年3月31日時点)。
弁護士数 | 45,808名 |
弁理士登録をしている者 | 457名(弁護士全体の約1%) |
税理士登録をしている者 | 741名(弁護士全体の約1.6%) |
ちなみに、通知弁護士制度によって税理士業務を行なっている者(通知弁護士)は7,981名で、弁護士全体の約17%となっています。
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現在は、弁護士業と並行して法律事務所のHP制作、動画制作、弁護士メディアの記事執筆等も行う(公式HP)。京都弁護士会所属。