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司法書士の独立開業後すぐに事務所経営を軌道に乗せる方法

by フラタニティ司法書士事務所 志村直也

代表司法書士

司法書士
こんにちは。司法書士の転職エージェント「リーガルジョブボード」です。 本記事では、現役司法書士の私から「司法書士事務所の独立開業後すぐに事務所経営を軌道に乗せる方法」や「失敗するケース・理由」について解説します。 「将来、司法書士として独立したいけど不安がある」 「廃業となってしまったら転職先はあるのだろうか」 そう悩んでいる方はご覧ください。
  • 独立開業までに必要な準備
  • 独立開業後に短期間で事務所経営を安定させる方法
  • 独立で失敗するケースや理由から学ぶ、独立に向いている人材
  • 廃業後の転職先
についてまとめています。 ※独立の前に、独立に必要な知識や経験が積める司法書士事務所に入ってみて、地盤を固めるのも堅実な選択肢です。独立歓迎の司法書士事務所の求人紹介を受けたい方は、お気軽にご連絡ください。

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司法書士は独立・開業がしやすい

実は、数ある職業の中でも司法書士は開業しやすい職種です。

司法書士は試験の合格が難しいとはいえ、合格後は研修さえ受ければ誰でも開業することができます。場所を選ばないので自宅での開業も可能です。

各都道府県にある司法書士会経由で届出を行い、司法書士として登録が完了すれば業務ができます。

司法書士の独立開業した場合の年収

独立した開業司法書士の平均年収をはっきり出すことは困難です。

それは、地域や事務所の規模だけではなく、勤務司法書士と比べ、自分の力量次第で年収の変動が大きいため。

年収1,000万円を超え、業績を大きく伸ばせる可能性がある一方、閉業のリスクもあります。

下記の記事では、司法書士の平均年収と給料を上げる方法をまとめていますので興味のある方はぜひ参考にしてください。

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司法書士の独立開業に必要な実務経験の年数

独立に必要なのは、最低3~5年程度の実務経験年数と言われています。

それは、司法書士が開業する為には実務スキルだけではなく、案件の取り方やクライアントとの関係構築をするための人間力を培わなければならないからです。

また、経験値だけ上げても、すぐには独立できません。独立後の見込みがある程度見えるようになるまでは、スキルだけではなくコネクションも構築していくことが大切です。

司法書士の独立開業に必要なスキル

独立に必要なスキルは下記の通り。

  • 司法書士業務のスキル
  • クライアントと関係を作るためのコミュニケーション能力
  • 案件を受注するための営業力
  • 上司がいないため、なんでも自力で解決する力

また、登記・信託・債務整理となんでも幅広くこなす司法書士は理想のように見えますが、一つの業務のスペシャリストである司法書士は信頼性が高まります。

開業するまでに、自身が得意とする分野を見つけ、売り出しポイントを見つけておくことが独立を成功させる方法の一つです。

勤務時代に身に付けておくと良い実務スキル

ずばり決済業務(不動産売買あの立会い業務)です。
理由は決済業務は不動産登記の基本が詰まっているからです。

決済業務には、住所変更登記、抵当権抹消登記、所有権移転登記、抵当権設定登記等の複数の登記申請が絡みます。2019年度の登記申請件数のうち、全体(権利登記)の半分以上がこれらの登記になります。

従って、所有権移転登記の段取りだけでなく、抹消登記をする為の段取り、設定登記をする為の段取り等、複合的な視点から業務にあたる必要がある為、不動産登記の基本と段取り力・登記における注意力が自然と身に付きます。

また、後述するように決済業務のスキル(最低限の経験)があれば、決済ヘルプを通して独立後の収入確保に一役買う可能性もあります。

以上のとおり、決済業務は司法書士の花形業務でありますし、不動産登記の基礎が身に付くため、勤務時代に経験しておきたい業務です。

独立を歓迎する司法書士事務所に転職する方法

事務所によっては、独立を歓迎している司法書士事務所が存在します。

独立を歓迎する事務所で働くと、独立に必要なスキルや知識が身に付けやすくなります。

そのため独立を考えている方は、独立を歓迎する事務所で下積みをすると良いです。
独立歓迎の求人をお探しの場合は、LEGAL JOB BOARD(リーガルジョブボード)にご連絡いただければ、ご紹介させていただきます。

リーガルジョブボードは司法書士専門の転職エージェントサイトです。
ご連絡いただければ、サイトには公開されていない求人情報もご紹介が可能になるので、ぜひご利用ください。

司法書士事務所の独立開業までに必要な準備

とはいえ、開業するための準備は簡単ではありません。
最低限準備が必要なものについて、以下に挙げておりますので参考にしてみて下さい。

  • 開業までのスケジュールや事業計画、開業資金計画を立てる
  • 資金調達
  • 自宅の一室で事務所として開業する場合の初期費用:50 ~ 150万円程度
  • オフィスを構える場合の初期費用:200万円程度
  • パソコンやプリンター、電話(FAX)、お客様を応対する家具など
  • インターネット環境
  • ホームページやブログといったweb広告作成費
  • 名刺や文具など消耗品
  • 仕事を依頼してくれるクライアント(顧客)

これらが必要になると想定されます。

司法書士の独立開業後に短期間で事務所経営を安定させる方法

独立開業に必要な準備をしたとしても、それだけで仕事が舞い込んでくるということはありません。
その為、顧客を獲得し、報酬を得る為には営業活動は必須です。

とは言え、行う業務や地域によっても異なるので、具体的にどのようにすれば良いのか正解はありませんが、下記を参考にして頂ければと思います。

顧客開拓の方法

司法書士業務のニーズがある業種は主に下記になるかと思います。

  • 不動産会社(不動産登記・決済)
  • 金融機関(不動産登記・担保権設定)
  • 会計・税理士事務所(相続登記、商業登記)
  • 弁護士・行政書士事務所(簡裁案件の裁判業務、相続登記、商業登記)
  • 葬儀社(相続・遺産承継業務)
  • 保険会社(遺言・成年後見・家族信託)
  • 福祉施設(成年後見・家族信託)

等々・・

では、営業しに行くとして、具体的に何をすれば良いのでしょうか?
方法としては、特に面識がない場合は、テレアポ、飛び込み営業、折込チラシを作成してポスティング等の方法になるかと思いますが、これらはあまりお勧めできません。

費やす時間や労力に比して案件を獲得できる可能性は低いですし、やはり関係性がない以上、相手も警戒心を持つでしょう。
その為、独立開業後の顧客獲得方法として、お勧めの方法はとにかく色んな人に会うことです。

具体的には、異業種交流会等に積極的に参加することです。地域の集まりに参加してみるでも良いでしょう。

独立開業をしている司法書士で、最初は交流会等に参加し、そこで知り合った人から仕事を頂いたという話は少なくありません。実際に異業種交流会であれば、士業、不動産営業マン、保険営業マン等、多様な業種の方と知り合える可能性があります。

そこで信頼を得ることができれば、その後も継続的に顧客を紹介頂いたりして、事務所経営を軌道に乗せることができるでしょう。

収入確保の方法

独立開業後、事務所を運営して行く為には顧客開拓と並行して収入を確保する方法も考えなくてはなりません。

司法書士の場合、必ずしも顧客開拓=収入確保ではないからです。
と言うのは、司法書士会から仕事を紹介してもらったり、国(裁判所)からの依頼で成年後見人に就任したり等、顧客から受注する以外の仕事もあるからです。

とは言え、例えば成年後見業務であれば、リーガルサポートの会員になり、数か月研修を受けなければならない等、収入確保という視点においては即効性がありません。

では、即効性があり、かつ、開業後にそこそこの収入になる仕事はないのでしょうか。
実はあります。それは、司法書士から決済業務の外注を受けるという方法で、いわゆる決済ヘルプです。

通常、司法書士事務所は司法書士数名で構成されている事務所が多いところ、特に月末になると決済業務が立て込む傾向にあります。

決済業務が立て込むと、事務所所属の司法書士では回し切れず、決済業務を外部の司法書士に外注を出すことがあります。

単価は2~3万円くらいが相場です。時間は決済に行くだけなので、通常は1~2時間で終わりますし、午前中で終わることが多いです。
その為、午前中は決済ヘルプをし、午後は顧客開拓に時間を費やす等として、開業後の事務所経営をして行くのも一つの手だと思います。

肝心の決済ヘルプの受注方法ですが、司法書士の同期(勤務・独立問わず)や、その他知り合いの司法書士に「開業したから決済ヘルプがあれば教えてほしい」と声をかければ、割とすんなり受注できると思います。または、勤務時代にお世話になった事務所のボスにお願いすれば、しばらくは月に数件決済ヘルプを依頼してくれることもあります。

特に都心・大都市であれば、資格者の数が足りていないので、決済ヘルプを必要としている事務所は沢山あるからです。

司法書士の独立開業で失敗するケースやリスク・理由

次に、司法書士が独立に失敗した際の主となる理由を挙げていきます。
理由を事前に把握することで、独立する際のヒントになるはずです。

営業スキル・人脈が足りていなかった

一番多い要因が「営業がうまくいかず、クライアントが増えなかったこと」です。

開業後に新規顧客を継続的に獲得するためには、営業スキルや人脈が必要です。

顧客のみでなく、同業者・不動産業者などの関連業者との人脈も必要です。営業スキルにせよ人脈にせよ、開業後に短期間で用意できるものではありません。
準備期間中にできるだけの基盤を作っておく必要があります。

他事務所との差別化が出来ていなかった

競合にはない強みがなく、独立に失敗したケースもあります。

他事務所と差別化を図り専門分野をアピールすると、依頼者も選定しやすくなります。

例えば、
「地域密着型で、不動産移転登記・不動産保存登記から相続まで何でもやる」
という事務所は、低価格の報酬など別のメリットが無い限り、これといった特色が無くなってしまい、依頼者からの需要が減ってしまいます。

あまり専門分野を絞りすぎてしまうのも問題ですが、どんな分野に特化した事務所であるかという視点は大事です。

事前の市場調査・マーケティングがとても重要で、十分に市場調査した上で専門分野を決めましょう。

業務過多になってしまった

独立開業後、しばらくは一人で事務所を運営することになるでしょう。司法書士として仕事、営業、集客、雑務をすべて一人でこなすことは時間的にも体力的にも大きな負担です。
忙しすぎて身体を壊し事業を続けられなくなることがあります。

司法書士事務所廃業後の転職先

もし独立に失敗してしまったとしても、司法書士が廃業後に勤務司法書士として出戻るケースは珍しくありません。

そこで下記では、廃業後の転職先を紹介していきます。

司法書士事務所への転職

また司法書士として働くために、他の事務所に勤務司法書士として就職する選択肢があります。ただし、一度独立した司法書士を雇用したいと考える司法書士事務所は少ないのが実情です。
しかし法人であれば、独立経験を活かして支店長として迎えてもらえたり、スキルを買ってくれる事務所は多い傾向です。
また、独立時代のクライアントを引き継ぐことが出来れば、転職先の事務所へのアピールとなります。

司法書士専門の転職サイトであるLEGAL JOB BOARD(リーガルジョブボード)であれば、転職先のご紹介が可能です。

一般企業のバックオフィスへの転職

司法書士は会社経営に欠かせない重要書類の作成も手がけるので、経営や経理などの分野で事務処理の仕事をこなすことができます。

司法書士の業務は正確性が要求されるため、こうした細心の注意が求められるバックオフィス業務が向いていると言えるでしょう。

不動産業界への転職

不動産登記は司法書士の仕事のうち大きな部分を占めます。

司法書士試験の勉強の段階で不動産登記や商業登記に関する知識を十分身に付けているので、不動産会社に転職すれば、専門的な知識や資格を活用することができます。

まとめ

  • 独立に失敗するのは、営業スキル・人脈不足が大きい
  • 廃業後の転職活動は、司法書士事務所への出戻りか、他職種への転職がスムーズ

失敗が不安で独立に踏み込めない方も、独立しているもののなかなか事務所が軌道に乗らず廃業を考えている司法書士の方もいらっしゃるかと思います。

しかし、独立司法書士から勤務司法書士に戻られる方は多くいらっしゃいますのでご安心ください。

もし独立後の転職に不安がある方は、司法書士専門の転職エージェントである私たちにご相談いただければ幸いです。

廃業が転職活動に大きな悪影響を与えることはありませんので、転職をご検討されている方はお声がけしていただければと思います。

この記事の執筆者

フラタニティ司法書士事務所 志村直也

代表司法書士

フラタニティ司法書士事務所の代表司法書士で、業界に関する知識やトレンドを発信中。不動産登記を中心に後見・相続業務に注力している。

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