弁護士|即独に成功・失敗する理由9つと廃業後の転職先
by 大阪弁護士会所属 弁護士M
弁護士(14年目)
- 担当職種:
こんにちは。弁護士の転職エージェント「リーガルジョブボード」です。
本記事では、弁護士12年目の私が「弁護士の即独の成功・失敗要因」について解説します。
即独を検討している弁護士や司法修習生の方は、本記事を読むことで即独のための準備事項を知ることができます。
また、よくある失敗の原因もまとめているので、リスクを回避することが可能です。補足として「廃業後の転職先」もまとめているので、即独に万が一失敗した場合の道も事前に把握できるようになっています。
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この記事の目次
独立する弁護士は多い
司法試験の合格者数は、年に約1,500名です。
そのうち、修習を受けなかったり、検察官や裁判官になる人もいて、弁護士登録するのは約1,000~1,200名となります。
弁護士登録する人の多くはどこかの法律事務所に就職して、いわゆるアソシエイト弁護士(「イソ弁」とも言います)になりますが、アソシエイト弁護士のまま弁護士キャリアを終えるまで勤め続ける人は少ないです。
数年勤務した後に、独立してパートナー弁護士となる人が大半だからです。
また、法律事務所に就職せずにすぐ独立開業する方もいらっしゃいます(即独「即独立する弁護士」の略です)。
勤務している法律事務所の経営者側に入り、パートナー弁護士になる場合もあります。この場合でもパートナー弁護士となるので、初期費用はかかりませんが開業するのと同じです。
つまり、新たに弁護士登録する約1,000~1,200名の方々は、遅かれ早かれ独立開業してパートナー弁護士になると言えます。
2018年に日弁連が全国の弁護士を対象に行ったアンケート調査では、パートナー弁護士の割合は約58%に及びます。
どこかのタイミングで独立開業するのであれば、アソシエイト弁護士にならずにすぐに独立する即独も選択肢の一つにはなり得るでしょう。
弁護士の廃業率
弁護士の廃業率(弁護士総数に占める廃業者の割合)は、0.8%程度と言われています。
現在、全国の弁護士総数は約41,000名ですから、年間約330名の弁護士が廃業しているということになります。
例えば2018年の統計では、登録抹消された605名の内、亡くなられたことによる抹消は215名、請求による抹消は379名となっています。
請求による抹消には、加齢による引退という方も含まれていますが、経営状況の悪化等による廃業の方が多く含まれているでしょう。
弁護士業務の需要と供給について
続いて、弁護士の需要と供給について解説します。
需要と供給を知っておくことで、即独の成功確率や今後の展望を予測することができるでしょう。
弁護士の数は増える一方、受任事件数は減っている
弁護士の数は増えている一方で、弁護士の受任事件数は減っているのが現状です。
弁護士数を増やそうとする司法制度改革により、2004年にロースクールが開設され、2006年より新司法試験制度が始まり、毎年の司法試験合格者は倍増しました。
現在は、年間合格者約1,500名で推移しています。
司法制度改革により弁護士の数は増えましたが、それに反比例するように弁護士の受任事件数は減っているのです。
2009年頃は年間約25万件であった事件件数が、2015年には約15万件にまで減少したというデータもあります。
平均年収も減っている
2018年に日弁連が全国の弁護士に行った調査によると、新司法試験制度が始まった2006年当時の弁護士の平均所得は年収1,748万円でしたが、2018年の弁護士の平均所得は959万円と、半分近くにまで減っています。
弁護士の数の増加と事件数の減少という現状を踏まえ、これからの司法試験合格者数は同程度で推移するとすれば、弁護士の平均所得の減少傾向は続く可能性があります。
供給過多であるのが現状
以上から、弁護士事務所は現状、供給過多となっています。
しかし、ほとんどの弁護士は仕事に追われており、弁護士として「供給過多」という肌感は感じていないと思います。そういうわけで、独立思考の方はまだまだ多いように感じます。
ただ、弁護士報酬が自由化されたことや、旧弁護士会報酬規程よりも低い報酬規程による法テラス経由の事件の増加により、事件の単価が下がっているのは感じている模様です。
※法テラス経由の事件とは、着手金、報酬等の弁護士費用を法テラスが立て替えて弁護士に支払い、依頼者は法テラスに分割で支払っていく制度です。法テラスを利用した事件の着手金、報酬は、法テラスが決めます。
即独を成功させるためのポイント
弁護士数の増加や事件数の減少を踏まえ、即独を成功させるためのポイントを解説します。
顧客確保の見込みを立てる
第一に、顧客確保の見込みを立てることです。
即独弁護士が、他の弁護士やクライアントとの繋がりがないのはやむを得ません。
まずは、繋がりを確保するために下記のような手段を尽くすことです。
- 事務所のHPを作成する
- ウェブ広告で認知度を上げる
- オフラインの交流会に参加する
3点目ですが、異業種交流会でも良いでしょうし、起業家の集まりに顔を出すのも良いでしょう。
特に、日本青年会議所(JC)に参加している若手弁護士は多いです。
できれば1回限りの会ではなく、月に1回や半年に1回等の定期的に行われている会に参加するようにしましょう。
とにかく経験を積む
即独弁護士に経験がないのは当然です。
弁護士会では、即独弁護士や早期独立弁護士向けにOJT(弁護士会が選任する先輩弁護士と一緒に事件を処理したりする制度です)を行っていたり、研修を実施していたりします。
また、弁護士会では一定の専門分野ごとに委員会を設け、委員会活動を行っています。
委員会活動に積極的に参加して、先輩弁護士の話を聞いたり、繋がりが出来てくれば、委員会の弁護士と共同で事件を受任したりできます。
そうしてOJTや、研修、委員会活動に参加する中で、他の弁護士がどのようなことをして、どのような書面を書いているのか、見て、学んで、身に着けるようにしましょう。
ちなみに、独立歓迎を掲げる事務所に就職・転職すれば、独立のノウハウや手続きを学びながら働くことができます。
弁護士の求人サイト「リーガルジョブボード」ご連絡いただければ、独立歓迎の弁護士求人をご紹介をさせていただきます。ぜひお気軽にご連絡ください。
経費は資金の余裕を持って
即独して最初のうちは、仕事はほとんどありません。
収入がほとんどないことを見越して、余裕を持った資金計画を立てておきましょう。
初めは事務員を雇わず、全て自分でやることで人件費を節約することも考えるべきです。
また、事務所として不相応に高額な物件を借りたり、内装にお金をかけ過ぎないように注意しましょう。
独立費用がどれくらいかかるのかは、以下の記事に書かれています。
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旧弁護士会報酬基準に則して料金設定を行う
弁護士報酬は自由化されていますが、今でも多くの法律事務所が旧弁護士会報酬規程をもとにして着手金、報酬を算定しています。
顧客獲得のため、初めは同報酬規程よりも低い設定にするのも方針としてあり得るかと思いますが、基本的には同報酬規程に則った料金設定にしましょう。
低価格にしてしまうと、弁護士間での過当競争が起りかねないということと、低価格にすることで即独弁護士の事務所経営自体が成り立たなくなってしまうことが懸念されるからです。
弁護士会を活用する
実は、弁護士会でも即独弁護士の開業支援を行うため、様々な方策を立ててくれています。
前述したOJT制度がそのひとつです。
2012年に日弁連が「即時・早期独立マニュアル」というものを策定しています。
そこで開業資金や開業準備について説明してくれていますので、まずはこれをよく読みましょう。
各弁護士会により支援制度は異なりますので、自分が所属している弁護士会ではどのような支援があるのか調べてみましょう。
即独弁護士が失敗・廃業してしまった理由
即独しても廃業・失敗となってしまう、よくある原因をまとめます。
顧客確保ができなかったから
顧客やクライアントが確保できず、廃業となるケースはよくあります。
具体的には、
- 事務所の立地が悪かった
- 広告出稿やウェブマーケティングの知識がなかった
- 他事務所とのコネがなく情報が確保できなかった
というような原因です。
顧客確保のため、オンラインからオフラインまで様々な策を行う必要があり、関連した知識や実践力がないと厳しいです。
特に「即独」ということは、社会と何も繋がりがない状態からスタートすることになります。
アソシエイト弁護士は、事務所に勤務しながら、顧問先のスタッフとつながりが出来ていたり、事務所案件として引き受けた事件の依頼者が独立後も依頼してくれるなど、一定の顧客の見込みがある状態で独立できますが、即独はそうはいきません。
弁護士の仕事獲得は口コミ、信頼が大切です。
お願いして良かったから、新しい事件が起きたときもこの弁護士に頼もう、困っている友人・知人にこの弁護士を紹介してあげよう、と思わせることが大事になってきます。
アソシエイト弁護士は、事務所勤務している間にこうした繋がりや信頼を得ていることが多いのです。
一方で即独弁護士は、こうした繋がりや信頼が全くないところからキャリアをスタートさせます。そのため、独立開業当初は仕事が全くないということもありえることです。
仕事がない、事務所の賃料や事務員の給与等の経費を支払えるだけの収入が得られない状態が続けば、廃業せざるを得ないということが起こってしまします。
経験不足・能力不足だった
アソシエイト弁護士を経た人との大きな違いの一つです。
アソシエイト弁護士は法律事務所に勤務しながら、依頼者・相手方への対応の仕方、書面作成の仕方、証拠収集の方法などの業務全般を、パートナー弁護士ら先輩弁護士から教えてもらいます。
即独弁護士はこの指導を受けていないため、我流でやらざるを得ません。
その結果、依頼者の満足を満たせず、顧客が離れてしまい、経営状況が悪化するということが考えられます。
※ちなみに、独立歓迎を掲げる事務所に就職・転職すれば、独立のノウハウや手続きを学びながら働くことができます。
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経費をかけすぎてしまった
これは弁護士のみならず、どの業種でも当てはまることかもしれません。
法律事務所を経営していくには、当然ですが経費がかかります。
事務所の賃料、事務員への給与、コピー機のリース代など、毎月支払わないといけない経費があり、事務所の敷金、内装費用といった初期費用も必要になってきます。
集客のために賃料が高いところを無理して借りたり、内装を立派にするためにお金をかけすぎてしまえば、資金が苦しくなって廃業せざるを得ないということが起こり得ます。
料金設定が不適切だった
かつては弁護士会が報酬規程を定めていて、その規定の範囲でしか報酬が得られませんでした。
しかし、現在はその報酬規程が廃止され、料金設定は自由にできます。
即独して、利益を得ようと高額な料金設定にして依頼者の不満を招き、次の依頼につながらないということもあり得るでしょう。
逆に、良心的な価格設定を重視しすぎれば採算の合わない状態になり、経営状態が悪化するということもあります。
即独に成功した場合の年収
即独した場合の年収は、300万円〜500万円ほどです。
もちろん、売上は事務所によって変わりますので、人によっては大きく異なる可能性があります。
アソシエイト弁護士の初年度の年収よりも低いですが、経営が軌道に乗れば1,000万円はすぐに超えるでしょう。
ただし、一定の割合で廃業に陥るリスクがあることも忘れてはいけません。
即独しない場合の独立開業のタイミング
弁護士数の増加、事件数の減少、それによる弁護士の平均所得の減少という近年の傾向から、即独には一定のリスクを伴うことになります。
即独が不安な場合、アソシエイト弁護士として勤務してから独立する道もおすすめです。
独立のタイミングとしては、「仕事を覚え、一定の顧客確保が見込める時期(弁護士登録から5年後〜10年後)」がベストでしょう。
独立失敗・廃業した弁護士を歓迎する転職先
独立経験や弁護士資格を活かせる転職先をご紹介します。
廃業後の転職先を知っておくことで「失敗しても違う道がある」という認識が生まれ、精神衛生上、良いからです。
即独がうまくいかなかったとしても、それで弁護士が終わりになるわけではありません。
法律事務所
弁護士資格が活かせるのは、何と言っても法律事務所です。
既存の法律事務所では、一定の経験がある弁護士を積極的に採用している事務所もあります。
また、独立に失敗したという背景から、「独立意欲があった・行動力がある」という受け取られ方もするため、むしろ転職活動が有利になる場合もあります。
弁護士求人サイトであるリーガルジョブボードなら、独立経験のある弁護士先生を歓迎する求人をご紹介できます。
任期付公務員
自治体等の行政機関が、弁護士を募集している場合があります。
任期付きであることが多いですが、採用されれば、任期満了後も再更新ということもあります。
弁護士会に求人が出ていることがありますので、募集がないか探してみましょう。
企業内弁護士(インハウスローヤー)
企業内弁護士(インハウスローヤー)も転職先の一つです。
企業の法務部では、弁護士資格を持っている人を優遇して採用している場合があります。
会社勤務経験のない人を採用してくれるかは企業の判断によりますが、実務経験があれば十分に採用を検討してくれます。
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