商標・特許弁理士によるキャリアイベントの様子を一部公開(中村合同特許法律事務所 北原先生×One ip弁理士法人 澤井先生)
by LEGAL JOB BOARD 三島善太
コンサルタント
- 担当職種:
こんにちは。弁理士の転職エージェント「リーガルジョブボード」の三島です。
2021年3月21日に、令和2年度弁理士試験の合格祝賀会をオンラインで開催。豪華景品抽選会やワークショップ(先行技術調査)、特許・商標弁理士によるキャリアイベントを実施いたしました。
今回の記事は、「特許・商標弁理士によるキャリアイベント」にフォーカスした内容となります。
2人の先輩弁理士にお越しいただき、「弁理士になった直後大変だったこと」「大手・小規模事務所の特徴」等、先輩弁理士だからこそ分かることをお聞きしております。ぜひご覧ください。
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この記事の目次
ご登壇いただいた先生方
商標弁理士 北原 絵梨子 先生(中村合同特許法律事務所)
大学卒業後、広告関連の企業に就職。
その後、中規模特許事務所に転職。
弁理士試験合格を機に、商標専門に弁理士業務を行うべく中村合同特許法律事務所に転職し、現在に至る。
現職では、アパレル、サービス、食品メーカー等幅広い業種のクライアントの代理人として国内外の商標の登録手続、異議や審判対応を中心に、ライセンス契約、商標や不正競争防止法に関連する係争事件対応、税関における模倣品の差止手続等に携わる。
特許弁理士 澤井 周 先生(One ip弁理士法人)
東京大学工学部産業機械工学科卒業、同大学修士課程修了。
その後、大手素材メーカー勤務。
東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻博士課程に進学。機械材料の研究業務に従事して博士を取得。
2014年に都内特許事務所に入所。機械、自動車、金属・無機材料、情報処理、IoT関連分野の国内・外国出願権利化を担当。2016年、在所中に弁理士試験合格。2017年弁理士登録。2017年よりクライアント知財部へ出向。
2019年、出向契約終了と同時に都内事務所を退職。R&Dと事業戦略とに密接した知財支援をさらに進めるべく、One ip弁理士法人に参画。
試験合格後、事務所のやり方に慣れるのに苦労!
ー弁理士になった直後大変だったことはありましたか?
北原先生:弁理士に合格してから今の中村合同特許法律事務所に入ったので、特許事務所で弁理士としての仕事に慣れるのに少し時間がかかりました。
ー具体的になれるのはどれくらいかかりましたか?
北原先生:どのレベルで慣れたと言えばいいのか分からないのですが、大体1人で仕事ができるようなるまで3年ほどかかりましたね。
澤井先生:僕はまだ今の仕事には完全には慣れていないですね。出願権利化の仕事だけではなく、知財とは何ぞやというところのレクチャーからデューデリジェンスまで、仕事の幅はとても広いですし、常に変化しています。さらにいろんな業種のお客様がいるので、技術的にも法律的にも、一生勉強し続けないといけないと思います。
コロナ禍での働き方について!
ー在宅勤務は業務上、問題なくできますか?
北原先生:できていますね。実際、7割くらいがオンラインで業務しています。
オンラインで気軽にお客様とお話ができるになったので、仕事の幅も広がりましたね。
会って話さなくていいということで、たくさんの方とお話ができています。話過ぎて時間が過ぎてしまうのも問題点ですけどね(笑)
澤井先生:現在はほとんど在宅ですね。
コロナ禍になる前からオンラインでのミーティングは多かったですので、在宅勤務にはスムーズに移行できました。今後も全然在宅でもできると考えています。
ーコロナ禍で所内の人とのコミュニケーションはどうやって取られていますか?
北原先生:せっかく大きい事務所で仕事をしているので、個人事務所のようになってしまうと大手事務所のメリットがなくなってしまいます。
ですからなるべく雑談レベルでも、お昼に「ZOOMを繋いで食べようよ」であったり、「判例の勉強会やろう」という声掛けをして、定期的に交流する場を設けるようにしていますね。
澤井先生:所内でSlack等のチャットツールを使って、仕事内容や雑談をしていますね。
また、定期的に顔出しのミーティングをやるというのは非常に重要だと考えています。
一人ひとりが何をやっているの分からない状態というのは、事務所としても管理が出来ておらず良いことではないですし、また、心理的な面においてもそこからメンバーが疎外感を感じてしまって離職とかになると悲しい結末になってしまいます。
ですので定期的に全体のミーティングとか個別のミーティングは開いていますね。オンラインでのコミュニケーションは、意図的に実施しないとすぐにやらなくなってしまうので、そういったことに陥らないように気を付けていますね。
歴史ある事務所の特徴
ー北原先生に質問させていただきます。歴史ある事務所ならではの長所ってどこにあるとお考えですか?
北原先生:この業界で歴史の長い事務所はたくさんあると思うんですけれども、私の所属している弊所は創立から100年を超える事務所なんですね。年数の長さっていう面でのメリットで言うと、私よりもずっとずっと先を走っていらっしゃる先生がいるということですね。
先生方のアドバイスを受けられますし、さらにたくさんの方がいるので自分の経験をシェアできるということがいい点ですね。
また、数々案件をやってきた知識の積み重ねというところに近くで触れられるのは歴史が長い事務所のメリットの1つなのかなと思います。
ー反対に歴史ある事務所ならではの問題点ってどこにあると思いますか?
北原先生:弊所はスタッフを含めて200人弱いて、所帯としてはとても大きい特許事務所になります。歴史のある事務所ならではなのか何とも言えませんが、所帯が大きくなると、案件以外の部分で他の人とかかわる機会が限られてしまうというのがありますね。
その分、事務所の中でみんなが参加できる勉強会をやったりだとかサークル活動をやったりだとかをやっています。
ー澤井先生の事務所は2018年にできたという新しい事務所だと思うのですが、新しい事務所ならではの長所ってありますか?
澤井先生:個人的な裁量が大きいというのがもしかしたらあるかもしれませんね。
まだできて間もないので、人数も少ない事務所ではあると思うんですけど、その分、特許だけではなくて意匠とか商標も担当することができます。
私もこの事務所に入るまでは商標実務を1度もやったことがなかったんですけど、それでも商標実務の経験者に教えてもらいながら実務経験を身につけました。
さらに、業務の幅もが広がると思います。権利化だけではなくて知財の相談の所や、侵害調査など、いろんな所の幅広い業務に携われると思います。
また、一人ひとりの責任というのも結構大きくなるので、やりがいを感じています。
ー反対に新しい事務所ならではの問題点はありますか?
澤井先生:新しい事務所なので特許事務のインフラが整備しきれていなくて、その調整の業務に時間を取られることがあります。大きな事務所のすでに確立されているインフラや体制がうらやましく感じることもありますね。
ただ、このような事務所インフラの立ち上げや運用といった経験ができるのも、大事務所ではなかなか経験が出来ないことだと思います。
また、人が少ないということもあって、知識や知見のシェアが十分にできないということがあると考えています。
そのため、例えば他の特許事務所の先生が行っている勉強会に自主的に参加したりとか、最近だとTwitter等があるのでお互いの知見を気軽に(と言ってもオープンな場所なので限界はありますが)交換したりして、色んな情報を仕入れていますね。
弁理士に必要な能力
ー弁理士に1番必要な能力はなんだとお考えですか?
北原先生:新しいことに触れて学んでいくということが求められる職種なので、積極的に物事に取り組んでいく姿勢と、人に色んな事を聞きに行くコミュニケーション能力が1番大事だと考えます。
澤井先生:プロフェッショナルであるために、貪欲に勉強し続けることがまずは大事だと思います。それと、お客様にしっかり向き合えているのかも重要です。
お客様がどういうサービスを求めているのかをきちんと理解して、期待以上の仕事ができることを意識するのが大事だと思います。
ー弁理士として大切にされていることはなんですか?
北原先生:お客様の目線に立つことを忘れないようにしています。もちろんお客様のすべての意見をくみ取ることはできませんし、全てのお客様が満足してくださっているとは言えないんですけれども、1つメールが来てもそこの背景に何があるのかを考えて行動するようにしています。
ーなるほど。相手の考えていることをくみ取るということを大切にされているんですね。それは弁理士になった直後から意識されていたことなんですか?
北原先生:正直初めは仕事に慣れることに必死でした。大きな事務所の悪い所ではあるんですけど、常に仕事がある状態が続いてしまって、仕事をこなすことがルーティーン化しがちなんですね。
私は完全に独り立ちして、私の名前で頼んできてくださるお客様ができてからひしひしと感じるようになりました。
ー澤井先生はいかがでしょうか?
澤井先生:プロとして仕事するということを意識しています。1つはお客様の期待に応えること。もう1つは自信を持って対応することかなと思います。
うちの事務所の場合は、お客様がスタートアップの経営者であったり、経営陣である人が多いんですね。そういう人たちは多くの修羅場を潜り抜けてきた人たちが多いので、提案する側に自信がないとすぐに相手をしてくれなくなります。
ですから、自分がお客様に提案することが、本当にお客様が欲しがっているものなのかを見極めて、自信をもって提案するようにしていますね。それはお客様が誰であっても変わらないところだと思います。自信がない場合はしっかりと調べて提案できるようにしています。
ー初めからそれはできていたのでしょうか?
澤井先生:前の事務所には未経験で入ったのでもちろん初めは自信がありませんでした。
ですから、自分なりにお客様のことを調べたりだとか、打ち合わせに同行してくれる先輩と、どういうことをおさえなければいけないのか、何を確認しないといけないのか、何を聞かなければいけないのかという所はしっかり打ち合わせをして、がちがちに固めた状態でお客様との打ち合わせに臨んでいましたね。最初のころも今もそうですが、準備が1番大切だったと思います。
弁理士としてのやりがい
ー弁理士としてやりがいを感じるのはどのタイミングですか?
北原先生:自分が出した答えに対して感謝をしてもらえたりだとか、会社が大きな方針で迷っていったときに「これで行きましょう!」と提案した時に納得してもらえた時にやりがいを感じます。
澤井先生:お客様との話の中で方針がスッキリ見えたときや、「これで行きましょう!」とお互いが納得してうまくはまった時というのが専門家としてやりがいを感じます。
どういう特許を取っていくかという知財の方針とお客様の戦略とががっちりあった時に一番やりがいを感じるところだと思っています。
最後に
ー最後にこれから知財業界に進まれる皆さんに一言お願いします!
北原先生:まずは皆さま合格おめでとうございました!
弁理士になって、すでに会社の知財や特許事務所で実務をやられている方も中にはいらっしゃると思います。
資格を取って新しい世界が広がっていくということがすごくあると思うので、是非今は合格の喜びに浸っていただいて、ちょっと落ち着いたら自分の弁理士像を考えながら、それぞれが色々な事に取り組んでいただけたら、この業界全体もますます面白くなるんじゃないのかなと思います。
澤井先生:改めまして皆さん合格おめでとうございます!
今はコロナの影響で世界そのものが新しいフェーズに入っており、知財の業界も変わりつつあり、そういう世界に飛び込まざるを得ない状況になっているのかなと思っています。
その中で弁理士の資格というのは日本の国家資格の中でとてもユニークな資格で、他にはまったくないレアな(ニッチな)資格です。それをどうやって活かしていくのかは人それぞれです。
もちろん知財の専門家として極めていくのもアリですし、「それ弁理士の仕事なの?」という所まで仕事の幅を広げていくのもいいことだと考えています。
資格を持つということは新たなスタートラインに立つということなので、そこから新たな世界を自分の手でどんな風に広げていこうかなというのが非常にワクワクすると思います。
もちろん予想外のことやとんでもないことも起こることはあるかもしれませんが、そんなことで簡単には死にはしないので、怯むことなくどんどん挑戦していってください!
ーお2人ともありがとうございました!
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