特許事務所と企業知財部・法律事務所の違いや特徴|転職先の選び方も解説
by LEGAL JOB BOARD 三島善太
コンサルタント
- 担当職種:
こんにちは。弁理士・知財専門の転職エージェント「リーガルジョブボード」の三島です。
本記事では、「特許事務所・企業知財部・法律事務所の違い」について解説します。
具体的には、以下のような内容をまとめています。
- 業務内容の違い
- 働き方の違い
- 得られるスキルの違い
- 収入の違い
- 福利厚生の違い
特許事務所・企業知財部・法律事務所のうち、どこで働こうか悩んでいる方はぜひご覧ください。
※本記事で紹介する違いはあくまで「傾向」の話であり、事務所や企業によって実情は異なります。具体的に気になる職場があった場合、求人票や転職エージェントなどを活用しての情報収集がおすすめです。
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この記事の目次
違い①業務内容やコミュニケーションの取り方に違いがある
まずは、特許事務所・企業知財部・法律事務所の「業務内容の違い」からまとめます。
特許事務所の業務内容
特許事務所の主な業務内容は以下です。
- 特許明細書の作成
- 拒絶理由通知対応(意見書・補正書の作成)
- 特許調査
- 鑑定
- 異議申立て、無効審判
- 訴訟
- 事務処理
- 営業
特許事務所の6〜7割は、以上を主な業務としています。
他の3〜4割の事務所は、発明の発掘に関わる一部の業務をしたり、企業知財部と似たような業務をするところもあります。
特に「明細書作成」と「拒絶理由通知対応」の業務がかなりのウェイトを占めますが、事務所の規模によっては分業しているところもあるため、担当によって業務内容が変わってきます。
また、特許事務所は未経験の人が入りやすく、一からの教育体制が整っている場合が多いです。
企業知財部の業務内容
一方で、企業知財部の主な業務内容は以下です。
- 発明の発掘
- 特許明細書の作成、確認
- 拒絶理由通知応答書類の作成、確認
- 他社特許の調査、分析
- 係争対応
- 知財関連の契約書の作成
- 知財戦略の策定や予算管理などの企画業務
会社の規模によって働く内容はかなり異なりますが、一般的には上記に挙げたような業務内容です。
知財部は基本的に、自社の製品・サービス・技術などの知財関係を取り扱うことが多いです。
また、企業が知財部を設けるのは「特許にまつわる仕事をスピーディーに行うため」であることがほとんどなので、「即戦力になる経験者」の人材を募集していることが多いです。
法律事務所の業務内容
法律事務所の業務は特許事務所と同じく
- 特許明細書の作成
- 拒絶理由通知対応(意見書・補正書の作成)
- 特許調査
- 鑑定
- 異議申立て、無効審判
- 訴訟
- 事務処理
- 営業
発明の発掘に関わる一部の業務をしたり、企業知財部と似たような業務をするところもあります。
法律事務所勤務であれば上記の業務に加え、訴訟対応を弁護士と一緒におこなったり、知財の法律相談などをおこなう弁理士もいます。
業務の内容は入所する法律事務所の方針が大きく関わっています。
組織内のコミュニケーションの取り方が違う
特許事務所と企業知財部、法律事務所はそれぞれの業務内容をまとめると以下です。
- 特許事務所:各クライアント(会社)がまとめてきたものを元に、事務所で話し合って出願
- 企業知財部:エンジニアや開発と一から話し合って書類などの作成
- 法律事務所:各クライアント(会社)がまとめてきたものを元に、事務所内で話し合い出願をしたり、弁護士など他業種と一緒に業務を行う
それぞれにおける大きな違いは、「コミュニケーションの取り方」にあります。
特許事務所の場合、特に小さい規模の事務所ですと「1人で最初から最後まで担当することが多い」ですが、知財部の場合はチーム間との連携が発生します。特に大きい企業の知財部ですと、50〜100人のエンジニアを相手に対応することになったりすることもあり、かなり複雑になります。
特許事務所は、もちろんクライアント対応はあるものの、基本的には「黙々と一人で業務に取り組む」ことが多いです。知財部はその逆です。
法律事務所に関しては、多職種との関りも多くどちらにしろコミュニケーション能力を求められます。
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違い②働き方に違いがある
働き方においての違いですが、特許事務所・企業知財部・法律事務所でも違いがありますが、規模によって働き方に違いが出る職場があります。
例えば「大規模の特許事務所」と「小規模の特許事務所」でも違いがありますし、「大手の企業知財部」「中小の企業知財部」それぞれにおいても違いがあります。
簡単に言うと大きい規模は分業制で業務にあたることが多く、小さい規模ですと一人や少人数での対応がメインとなります。
そこで以下では、「特許事務所」と「企業知財部」の違いに加え、「それぞれの規模による違い」にも触れます。
特許事務所の働き方の違い(規模別)
まず、規模の大きい特許事務所は、国内出願、海外出願、技術分野(科学、機械など)、クライアントの種類によってチームごとに分けられている場合が多いです。
かつ、担当チーム内でもさらに分業されていることもあり、自分の得意分野に着手できる可能性があるのが強みです。
一方で規模の小さい特許事務所は、基本的に「1案件を1人で対応」します。
あらゆる分野を、国内外問わず対応しなければならないので、専門分野だけでなく顧客対応なども含めた総合的なスキルが上がるのが特徴です。
まとめると、特許事務所は規模によって「分業制」もしくは「一貫性」になる点が大きな違いです。
以下の記事では、特許事務所の大小・中小による特徴の違いについて詳しくまとめていますので、あわせてご覧ください。
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企業知財部の働き方の違い(規模別)
続いて、企業知財部の働き方の違いを規模別に解説します。
まず大企業や大手の企業知財部の場合、分業制を採用していることがほとんどです。
例えば「明細書作成の役割を担う人」「権利化の分野を専門で行う人」など。
一方で中小の企業知財部は分業で業務を行わず、1~3人程度の弁理士と一緒に業務を進めることが多いです。技術数などもそこまで多いところは少なく、立ち上げたばかりの場合もあるため、自由なイメージです。
法律事務所の働き方の違い(規模別)
法律事務所についてですが、働き方としては大きく2パターンあります。
- 特許事務所と同じような業務を請負うことが多いパターン
- 弁護士と訴訟問題や特許侵害において法律相談のサポートなどを行うことが多いパターン
規模別でというよりもその事務所の請負う業務で大きく差が出ます。
ここまでお話してきましたが、どの職場が働きやすいということはなく、自身に向いているかどうかが重要になります。
自己分析をしながら、自分はどのスタイルが適性なのか見極め、職場選びの参考にできると良いですね。
自分に合っている職場が分からない方や、具体的な求人の紹介を受けたい方は、弁理士・知財専門の「リーガルジョブボード」にご相談ください。キャリア・転職相談や求人紹介、選考対策など、プロが全面的にサポートいたします。
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違い③キャリアステップや得られるスキルに違いがある
特許事務所か企業知財部によって、キャリアステップや得られるスキルは変わります。
企業の大小でできることはそこまで大きな違いはないのですが、事務所の大小だと働き方の体制によってかなり違うため注意しましょう。
特許事務所は「明細書作成のスキルが身に付く」
一般的な企業であれば、明細書作成の業務はほぼないでしょう。
そのような実務的な作業は特許事務所に外注するため、文章を作ったり、特許庁に出したりする業務は特許事務所が行います。
どのように文章を書いたら特許が取りやすいかなど、明細書作成能力がつくのは特許事務所です。
出願書類をさばいたり、実務的な業務をこなすことがご自身の理想とする働き方に合っていれば、特許事務所を推奨します。
企業知財部は「発明発掘のスキルが身に付く」
一部の事務所では扱っていますが、発明発掘は特許出願をする前の段階で行うもので、企業知財部が主に行います。
社内のサービスや商品をどうやって権利化するか、どうやって他社で使われないよう独占していけるのかといった「知財戦略」に興味がある場合は、企業知財部をおすすめします。
法律事務所は「侵害訴訟や無効審判の審決取消訴訟等の経験を積める」
法律事務所の方針にもよりますが、侵害訴訟や無効審判の審決取消訴訟等の業務に携わることができる事務所ではこのような貴重な経験を積むことができます。
特許事務所や企業知財部ではそのような業務を行うことが少なく、法律事務所で働くメリットの一つです。
特許権が実際に機能する段階に関与できるため、特許請求の範囲を書く時などに慎重になることができます。
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違い④年収や給与体制に違いがある
特許事務所と企業知財部における4つ目の違いは「年収」です。
特許事務所は「実力に応じて評価される」傾向がある一方で、企業知財部は「年功序列による昇給」が主に取り入れられています。
特許事務所は成果主義で、企業知財部は年功序列というわけです。
序盤からどんどん年収を上げたいという方は特許事務所を、安定を求める方は企業知財部を推奨します。
それぞれの年収については以下で詳しく解説するので、ご覧ください。
特許事務所の年収
特許事務所にはいろんな職種が存在するので、職種によって年収は異なります。
ここでは「弁理士」を例にしましょう。
弁理士の年収は、スキルや実務経験によって変動しますが600万円〜1,000万円の間を推移します。
ほとんどの事務所の評価制度は「売り上げ連動性」で、「出願件数をどれだけ対応したか」によって決まります。
業界では、売り上げの30%が年収になると言われていますが、事務所によっては40%支給率のところもあります。
また、国内出願より海外出願の方が単価が高いため、海外のものを主に受け持つと年収が高くなりやすいです。
その理由として、国内(特に大手)の場合、コスト削減のために依頼の予算を低くする傾向があり、逆に海外の場合、ライバルが国外の大企業である可能性があるため金額を上げるからです。
中には、国内でもベンチャー企業はお金をかけて特許を取りたい会社が多いため、大金を叩くところもあります。
特許事務所の年収や知財職種ごとにおける年収は以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
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企業知財部の年収
企業知財部の場合、その他総合職、一般職と同様のシステムで給料が上がっていきます。
専門職であるため、同じ会社の営業マンに比べると年収は高めかもしれないですが、特許事務所ほどではないでしょう。
規模の大きいところの方が年功序列で上がっていくケースが多く、安定を求める場合は企業知財部の方がおすすめです。
ですが、小さいベンチャー企業とかだとチームによって報酬の仕方が変わる可能性があるため、会社によっては上記の内容と異なります。
法律事務所の年収
正社員で勤務する場合、法律事務所勤務の弁理士年収は特許事務所と同じで600万円〜1,000万円の間を推移します。
中には有資格者が個人事業主として業務委託契約している方も多く、その場合だと年収水準がプラス200万円程度上がります。
ただ業務委託となるため交通費や保険料などが自己負担となり、実際は特許事務所と同じくらいの感覚のようです。
自分に合っている職場が分からない方や、具体的な求人の紹介を受けたい方は、弁理士・知財専門の「リーガルジョブボード」にご相談ください。キャリア・転職相談や求人紹介、選考対策など、プロが全面的にサポートいたします。
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違い⑤福利厚生・ワークライフバランスに違いがある
5つ目の違いは「福利厚生・ワークライフバランス」です。
結論から言うと、福利厚生が整っているのは企業知財部で、ワークライフバランスが整っているのは特許事務所です。
企業知財部は福利厚生が整っている
福利厚生を考える場合、企業の方が平均的に整えられています。
そういった面で士業の世界は遅れており、育休制度や保険関係など、なかなか整っていない事務所が多いのも事実。
もちろん特許事務所によりけりなので、気になる特許事務所の求人要項をしっかりと確認してみてください。
働きやすさを考えるなら特許事務所や法律事務所
大きな企業だと社内制度や規定を変えないといけないため、「融通が利く」といった点に関しては事務所より劣っています。
小さい事務所だと、周りが助けてくれて休みが取りやすかったり、突然子どもが体調を崩してしまった場合に柔軟な対応をしてくれたり、違った働きやすさがあります。
実際に、在宅勤務や、時短勤務OKなどの求人もあるため、子どもが生まれて復帰しやすいのは特許事務所や法律事務所です。
「働きやすさ」を求めるなら特許事務所・法律事務所への転職がおすすめです。
ベストな勤務先が分かる「転職チェックリスト」
以下のチェック項目を確認することで、あなたに合った勤務先がある程度判断できるようになります。
大手の特許事務所が向いている人の特徴
以下に当てはまる方は、大手の特許事務所や規模が大きい特許事務所が向いているでしょう。
✅指導してくれる人が多く、しっかり一から学びたい方
✅狭く深く専門知識を掘り下げたい方
✅比較的安定志向で、研修制度・教育体制を求める方
✅案件をこなしてスピーディーに働きたい方
小規模の特許事務所が向いている人の特徴
以下に当てはまる方は、小規模の特許事務所が向いています。
✅幅広い業務経験を一から自分でやりたい方
✅将来独立を考えている方(経営的な部分を近くで見れる)
✅誰かの下に働くというよりは、裁量持って主体的に働きたい方
✅歩合性や成果主義で働きたい方
※かなり忙しいかもしれないですが、厳しい環境に身を置いて成長したい方におすすめです。
大手企業や大企業の知財部に向いている人
大手企業や大企業の知財部に向いている方の特徴は以下です。
✅安定志向で福利厚生などに重きを置きたい方
✅プライベートの時間を大切にしたい方
✅できあがった組織・役割の中で、着実に業務を行いたい方
✅日本や諸外国にて、売上インパクトが大きい製品の知財業務に携わりたい方
※実務経験3年以上の経験者がより採用されやすいです。
中小企業やベンチャー企業の知財部に向いている人
中小企業・ベンチャー企業の知財部に向いている方は以下です。
✅知財部の立ち上げに参画することで、実績を残したい方
✅ストックオプションや賞与、大幅な昇給や昇格をモチベーションに仕事をこなしたい方
✅少人数でのコミュニケーションを好む方
✅経営に近い領域で知財業務を行うことで、経営にインパクトを生み出したい方
✅知財領域だけでなく、法務領域、商品の企画領域、広報領域まで幅広く経験をしたい方
※こちらも実務経験3年以上の経験者の方で、企業知財部出身者が好まれます。
法律事務所が向いている人の特徴
以下に当てはまる方は、法律事務所が向いています。
✅訴訟や無効審判の審決取消訴訟等の経験を積みたい方
✅コミュニケーション能力をいかしたい方
✅誰かの下に働くというよりは、裁量持って主体的に働きたい方
✅歩合性や成果主義で働きたい方
自分に合った職場に就職・転職する方法
ミスマッチのない就職・転職先を見つけるためには、「自分がどんな働き方をしたいのか」「どういう業務に力を入れたいのか」をしっかり理解することが必要です。
そうすることで、自分に合った・やりがいのある職場を見つけることができるでしょう。
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また、エージェントを利用するメリットとして、
- 自身に適したスケジュールで転職活動が進められる
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