Visionalの知財グループで働く魅力とは?知財戦略や業務内容・働き方を責任者にインタビュー
by LEGAL JOB BOARD 大澤
コンサルタント
- 担当職種:
弁理士・知財職種の転職を支援する「リーガルジョブボード」の大澤です。
この度、Visionalグループの知財活動を牽引する、ビジョナル株式会社 知的財産グループ責任者 米谷仁矩 氏にインタビューを実施いたしました。
ビズリーチやHRMOS(ハーモス)といった事業を中心に、急速に成長を続けるVisionalグループ。
その全事業の知財活動を担う米谷氏に、知財戦略や日々の取り組み、その根底にある考えやビジョンを詳しくお話しいただきました。
また、大手重工メーカーからビジョナルに転職した米谷氏のキャリアや、職場環境などについても伺っています。ぜひ最後までご覧ください。
この記事の目次
米谷氏の経歴・Visional入社前のキャリア
エンジン、フォークリフト、タービン、航空機、IoTなど、さまざまな製品に関する特許・意匠・商標の出願・権利化、ポートフォリオ管理、模倣品対策、紛争対応といった業務を行っていました。
戦略的なポジションに異動してからは、全社の知財戦略やポリシーの策定、知財紛争リスクマネジメント、M&Aにおける知財デューデリジェンスや契約対応、海外グループ会社の知財業務支援なども担当し、幅広い経験を積みました。
また、在職中の2017年には、米国ジョージワシントン大学ロースクールに留学し、法学修士号(知財専攻)を取得しました。海外の知財実務に携わるなかで、日本とは大きく異なる米国の知財法やプラクティスについて、経験豊富な専門家から直接学びたかったためです。
工学部出身でいろいろな技術に触れるのが楽しかったのと、勉強は好きだったので、技術と法律の二刀流で、最先端の技術に携わりながら法律の知識も必要とされる知財の仕事が自分に向いていると感じたんです。
また、大学時代に知財の仕事をしようと決意してから、弁理士試験の勉強も始め、就職後の2012年に弁理士資格を取得しました。
知財での事業貢献に対する強い思い
そんな中でVisionalグループに出会い、法務室が掲げる「事業のための法務」「事業のための知財」という価値観に強く共感し、自分の考えにマッチしていると感じ、ビジョナルへの入社を決めました。
部門間で全くコミュニケーションの壁がないので、部門を超えた一体感を感じながら日々の仕事に取り組めています。「事業のために知財で何ができるか」を考えて実行に移していくということが、すごくやりやすい環境です。
知財関連の業務は、特許制度における先願主義に代表されるように、スピードがとても重要です。変化の激しいVisionalグループでは、いかに事業のスピード・変化に沿った知財活動を行えるかが要になりますが、事業と連携できているので、適切なタイミングで適切な知財活動を行えていると思います。
Visionalグループ全体の知財活動を担う組織
Visionalグループ全体の知財活動を知財グループに集約しており、10以上の事業の知財活動を推進する役割を担い、知財関連のあらゆる業務全体を担当しています。
グループ全体として「モノづくり」をとても大事にしています。どの事業においてもプロダクトやデザインに強いこだわりを持っているので、そこから生まれたアイデアは事業の競争優位性の源泉として、しっかりと知財で守らなくてはなりません。
今は、特許に関する業務が最も多く、業務全体の6〜7割ほどを占めています。直近では、年間40件程度の特許出願を行い、各プロダクトを守る特許ポートフォリオの構築を進めています。
特許出願業務については、現在のところ、明細書などの出願書類作成は、信頼できる外部の弁理士の方に依頼しています。知財グループでは、開発のコンセプトや解決しようとしている課題、提供しようとしている価値をしっかりと理解した上で、特許として守るポイントを検討・整理します。また、紛争対応では、業務委託で参画いただいている弁護士の方とも連携しています。
他社特許クリアランスは、知財グループで主体的に推進しており、事業・プロダクトごとに検索式を作成し、定期的に他社特許をウォッチングしています。
将来的に障害になる可能性のある他社特許や、今後の開発の参考になりそうな他社特許を発見した場合には、フラグを立てて管理しています。そのような特許については、特許情報に加えて、関連する企業やプロダクトの情報も合わせて事業に共有することで、潜在的な競合企業やプロダクトを特許起点で発見できるケースもあります。
商標に関しては、ウェブサイトやSNSを定期的にパトロールし、当社商標の不正利用が疑われるケースには厳正に対処し、Visionalグループのブランドを守っています。
事業フェーズによって知財活動はどう変わる?
例えば、ビズリーチはサービス開始からある程度時間も経っていますが、新機能開発や既存機能の改善が日々行われ、プロダクトは進化を続けています。日々たくさんのプロジェクトが並行して進行する中で、特許でプロダクトの進化を支え、競争優位を守るために、広くアンテナを立てて細かいアップデートも取りこぼさないように事業と密に連携する必要があります。
広い権利を押さえることは難しいのですが、さまざまな新機能や機能改善により、お客様に提供する新たな価値を継続して特許で守ることで、サービス全体を特許ポートフォリオで固めていくイメージを持っています。また、競合するサービスも多く、他社特許も多いため、なるべく広く他社特許を拾って1件1件目を通すようにしています。
HRMOSで言えば、採用、タレントマネジメント、経費などのモジュールによっても大きく環境が異なるため、モジュールごとに知財活動をデザインする必要があります。
新規事業においては、ビジネスモデルのコンセプトに近いレベルで、権利範囲の広い特許を取得できるよう、企画段階から事業に入り込んでいく活動が必要になります。
なかでも、現在のフェーズでは、プロダクトを守る特許の取得が非常に重要です。
最近では、生成AIを活用した新機能の開発が増えてきました。競合企業も似たような開発を始めている可能性は大いにあると思いますし、特許出願・権利化を進めている企業もあるはずです。
他社の特許出願内容は、基本的に1年半後にならないと分かりません。後から「あのアイデアを特許出願しておけばよかった」といった後悔をすることがないよう、知財の専門家として、事業のために今できることに日々精一杯取り組んでいます。その結果、生成AI関連特許の数も近年大きく増やすことができています。
事業部門と同じ目線でのコミュニケーション
また、特許出願の要否判断においては、事業長とやり取りをして、特許を取得する目的や特許で押さえるポイント、将来的な活用のイメージを整理しています。
特許の取得にあたっては、きちんと事業との目線合わせができていないと、特許を取得した後に「なんでこの特許取ったんだっけ?」という反応が返ってきてしまうような認識のズレが起きかねません。
事業が考えていることや解決したい課題、提供したい価値を知財目線で噛み砕き、特許の文章に落とし込んでいくことが、企業における知財部門が提供できる重要な価値であり、知財業務の醍醐味だと思います。
しかし、基本的にはこちらから事業に飛び込んでいくスタンスで動いています。
知財活動を進めるにあたっては、事業との連携が必要不可欠です。事業から声がかかるのを受け身で待つのではなく、知財グループが誰よりも主体的に動き、知財のプロフェッショナルとして勢いを持って知財活動を推進していくべきだと思っています。
仲間として信頼を得るためには、知財グループが事業にどのような価値を提供できるのか、社内でしっかり理解してもらう必要があります。ただ自席に座っているだけでは、信頼は得られません。
日々のコミュニケーションから、知財の必要性や知財活動が中長期視点で事業にもたらすメリットを、繰り返し伝えることを意識しています。
また、より多くの仲間に知財について知って興味を持ってもらうため、社内報「知財NEWS」を毎月グループ全体のSlackチャンネルで発信したり、グループ横断の知財表彰イベント「Visional IP Awards」を開催したりと、社内での啓発活動にも力を入れています。
知財戦略を強化した経緯と今後の方向性
先ほどもお話ししましたが、Visionalグループは創業当初から「モノづくり」に力を入れており、デザインやブランドも重視してきました。
それらを企業の競争優位の源泉となる大切な資産として守るためには、知財の獲得・管理・活用を戦略的に行う必要がありました。
HR Tech事業はVisionalグループの中心事業ですので、知財活動において最も注力してきました。その結果、知財グループの立ち上げから3年で、競合企業を上回る件数の特許を取得することができました。
Visionalグループ全体では、特許出願件数は3年間で80件以上(2023年度は50件近く)、特許登録件数は累計90件を超えています。
今は出願・権利化を着実に行い、知財活動の土台を築くことに注力しているフェーズですが、「このアイデアは特許が取れそうだから出願しよう」というのではなく、1件1件の質にこだわって各事業の成長に必要とされる特許の獲得を進めています。
関東地方発明表彰「発明奨励賞」や、知財功労賞 「特許庁長官表彰(デザイン経営企業)」の受賞が、その成果の一つだと思います。
数年後には構築した知財ポートフォリオをもとに、より具体的な知財活用の戦略を立てられるよう、今は活用可能性の高い権利を地道に積み上げている段階です。将来の各事業の競争優位を知財で担保できるよう、今できることを着実にやっています。
場合によっては、「知財って面倒くさい」といったネガティブな印象を持たれてしまうケースも起きかねません。そういったネガティブな印象の要因の一つには、知財の価値・重要性を知財部門がしっかりと伝えきれていない状態で、知財に関する業務を事業に押し付けてしまっていることがあると考えています。
例えば、知財部門によっては、特許事務所の弁理士の方とのミーティングで、発明に関する説明を発明者に全て任せているケースもあるかもしれません。また、権利化の場面で、特許事務所の見解をそのまま事業に伝言しているだけのケースもあるかもしれません。
しかし、特許事務所の弁理士の方と発明者は、前提知識や使用する用語が異なるため、発明について思うようにコミュニケーションが取れないケースもあります。
知財部門が両者の間に立って円滑にコミュニケーションを取れるようサポートすることはもちろん、アイデアや事業上の位置づけを正確に把握した上で、「事業を成長させるためにどのような特許を取得していくか」を自らデザインし、特許出願書類に落とし込めるように伝えることが重要です。
Visionalだからこそ感じられるやりがいがある
各事業で生まれた素晴らしい権利や知財活動が各事業内だけに留まってしまい、事業の垣根を越えた横展開ができていないことに課題を感じ、このイベントを企画・開催しました。
当日は、さまざまな事業から約80名の仲間が参加してくれました。参加者から「知財は事業を成長させる武器の一つだと感じられた」「いつも事業側と二人三脚で知財活動を行ってくれてありがたい」といった感想をもらい、開催して良かったなと感じました。
また、実際にこのイベントをきっかけに、新たな知財活動に繋がった事例もありました。
仲間を知財活動に巻き込み、協力を得てこそ、事業に伴走する知財活動が実現できます。また、事業から信頼を得て、事業活動に巻き込んでもらえる存在になっていくことも大事です。
そのためには、自ら事業に飛び込み、事業が考えていること・大事にしていること・守りたいことなどの価値観を理解することが必要です。密にコミュニケーションを取ったり、足繁く通ったりできる行動力が大事だと思います。
また、事業の成長・進化に合わせて、知財活動も一緒に変化しなくては、持続的に事業の成長を後押しすることはできません。変化にワクワクしながら、VisionalグループのValueでもある「変わり続けるために、学び続ける」を体現できる方と知財組織をつくっていきたいですね。
また、企業の知財活動全体に(戦略・企画から実行まで)一気通貫で携わることができ、知財活動・知財組織を一からデザインすることができます。
入社いただく方には担当の事業を持っていただき、担当の事業について、主体的に知財活動を進めていってもらいたいと思っています。自由度が高い分、責任もありますが、経営層や社内からの期待があるからこそだと感じています。
入社後の教育体制・働く環境は?
最初は、プロダクト、デザイン、広報などとの打ち合わせに私と一緒に参加してもらい、少しずつ社内で顔を知ってもらうところから始めていくことになると思います。また、知財業務に関するマニュアルも整えていく予定です。
職場環境としては、(知財グループが属する)法務室の雰囲気はとても気さくで、年齢や立場に関係なく、フラットにコミュニケーションが取れます。法務室の他のメンバーにも、会社のことや事業のこと、法務室のことなど、わからないことがあれば気軽に何でも聞ける環境です。
経営層や事業との距離も近く、部門間のコミュニケーションでストレスを感じることはありません。
また、フルフレックス制やリモートワーク制(週3日出社、週2日在宅勤務)をはじめ、効率的かつ柔軟に働ける制度が整っています。有給休暇も取りやすいです。
私自身もわからないこと・悩むことは多くあるので、お互い相談し合い、補い合える関係性を目指したいと思っています。
知財グループは今後も少数精鋭で、10以上の事業の知財活動を担っていく必要があります。私と入社してくださる方で、お互いに背中を預け合って支え合っていけるような関係を築いていきたいです。
少しでも興味をお持ちいただけた方は、ぜひお気軽にご応募いただければと思います!
▼Visional法務室へのインタビュー
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