
バンダイの特許・意匠チームで働く魅力は?「日本発エンタメ」を知財で守り、世界に届ける!

by LEGAL JOB BOARD 正田
キャリアアドバイザー
- 担当職種:

弁理士・知財職種の転職を支援する「リーガルジョブボード」の正田です。
今回、日本のエンタメ業界でも著名な1社である、株式会社バンダイ 法務・知的財産部 特許・意匠チームの2名にインタビューを行いました。
たまごっちやガンプラなどジャパンカルチャーを代表するキャラクター商品を多数生み出してきた株式会社バンダイ。その魅力ある商品は日本だけでなく、世界中で愛されています。
バンダイの特徴は、日本が世界に誇るアニメ・マンガ・ゲームなどの「キャラクターの知的財産(IP)」の魅力を生かし、伝統的な玩具・フィギュアだけでなく、カードゲーム・菓子・日用雑貨・アパレル・スマホ連動アイテムなど幅広い商材を展開していること。
また、IPの魅力を最大限に引き出すため、自社独自の技術開発や商材ブランディングにも力を入れており、その知財活動で特許庁長官表彰(令和3年度 知財功労賞 )を受けています。
今回は特許・意匠チームの方々に、バンダイが考える知的財産の重要性や企業カルチャー、職場環境、仕事の魅力について詳細にお話しいただきました。
この記事の目次
インタビューさせていただいた2名のプロフィール

株式会社バンダイ
北井 秀和氏

株式会社バンダイ
山中 尚子氏
半導体メーカーで知財キャリアをスタート。工場でエンジニアとコミュニケーションを取りながら発明の発掘をメインに7年従事。その後エンタメ分野へ興味があったこと、ガンプラ好きの夫の後押しもありバンダイへ入社し、勤続10年弱。現在は特許・意匠チームでチーフとして、トイ事業を担当。
また、今回特別に法務・知的財産部でデピュティゼネラルマネージャー(DGM:知財部門担当)を務めている、岡崎 高之氏もインタビューに参加していただきました。
「総合エンタメメーカー」へ進化したバンダイと知財部門の役割


なお、バンダイ・BANDAI SPIRITSは兄弟会社であり、我々はバンダイ・BANDAI SPIRITS両方の知財業務を担当していますから、今回は2社をセットとしてお話ししますね。



それだけでなく、ガンプラ・たまごっち・ガシャポン・食玩・カード・一番くじなど、様々な商材を開発し、グローバルに展開。それらが世界中のファンに受け入れられたことが、近年の急成長の背景だと考えています。



外部のライセンサー様からIPをお預かりすることが多い立場だからこそ、「バンダイが商品化すれば、IPの魅力が最大限引き出される」と認めてもらえるよう、バンダイ独自の技術・ブランドを磨いていまして、その基盤になるのが知的財産権です。
アニメ・マンガ・キャラクターといったコンテンツの世界は、昔から海賊版・模倣品の被害が多く、商品化においても例外ではありません。そのため、バンダイ独自の知的財産を開発・権利化して自社ビジネスの独自性を守るだけでなく、知的財産を活かしてIPそのものの世界観や価値を守ることにも取り組んでいます。
バンダイナムコグループには「IP軸戦略」という基幹戦略がありますが、キャラクタービジネスと知的財産権は不可分であり、知財部門はその守り手として重要な役割を担っています。
大企業の「安定性」とベンチャーの「柔軟性」





たとえば、「トイ事業担当」「カード事業担当」など、各事業部の特許業務を一人で幅広く担えるのが特徴です。他の大企業では知財業務が細分化されていることが多いですが、バンダイでは一つの事業を包括的に担当し、また事業に必要な「戦略提案」までも行うチャンスがあるため、大きな裁量を持って働くことができます。
発明発掘から権利化、さらに侵害対策まで、同じ担当者が一貫して最初から最後まで責任を持って進めるため、どのように権利が取得できたのか、またそれが事業にどう活かされたのかをリアルタイムで実感できます。
また、少人数だからこそ相談しやすい環境が整っており、知財業務を進める上での不安を感じることは少ないかと思います。
もともと、若手やキャリア入社社員にもどんどん機会を与えるカルチャーがあり、大手企業の安定性とベンチャー企業のような柔軟な裁量の両方を兼ね備えた環境は、バンダイの大きな強みだと感じています。
担当業務と、1日のスケジュール




案件の状況によっては早い段階で係争業務等を担当することもありますが、まずは知財の基礎をしっかり固めることが、将来的に活躍するための鍵になります。




また、例年1月から3月は年度末に向けて特許出願件数が増えるため、駆け込みでの対応が多くなり忙しくなります。

現在、スーパーフレックス制が採用されており、それぞれの事情や好みで朝早くから業務開始して早く上がったり、一方で私のように10時ぐらいから始業する人もあり、働き方には自由度はありますね。
バンダイの技術分野や、求められる資質は?


その中でも特に力を入れているのはカードゲーム事業とECサイト事業です。この分野は訴訟が多いため、知財の強化により、リスク低減を図るべく、頑張っています。
特にECサイトでは、バンダイナムコグループの公式通販サイト「プレミアムバンダイ」や「一番くじONLINE」等で商品を販売しており、競合他社との競争が激しい分野であるため、特許戦略が非常に重要になっています。


私自身、ゲームをやり込んでいるわけではなく、たまにする程度ですが、それでも対応はできています。
ちなみに、当社の特許業務は必ずしも理系である必要はありません。バンダイの商品は視覚的に理解しやすいため、知財の基礎知識や意欲があれば活躍できる環境です。
一方で、技術分野が幅広いため、入社後に担当事業部の商材やビジネスモデルを積極的に学び、「強い特許」を取得し、さらにそれを活用していくという、主体的に動ける方を歓迎します。



実際にプロトタイプを操作しながら「どこで特許を取れそうか?」と考えています。実際に触れて遊んでみることで、「あ、ここも出願すると良さそうだな」と気づくことも多いですね。
また、エンタメ企業ですから、事業部のメンバーは、常に「人が楽しむ、面白いものを作る」ことに情熱を注いでいます。この「面白さ」を感じ取るためには、自分が過去に経験で得た面白さを感じ取る感性が必要とされ、この点で「自分らしさ」を活かすことができる環境であると感じます。

単なる事務的な業務ではなく、商品価値を高めるための切り口や権利化戦略を主体的に考えることが求められます。
そのため、知財部員も同じ熱量を持ち、事業部と積極的にコミュニケーションを取りながら、「どうすればこのアイデアをより強い権利にできるか?」を考え、事業の成長に貢献しようという意識をもてる人ほど、バンダイの知財部で活躍できると思います。

質とスピードを両立しながら使える権利を創る


前職では、技術の見極めを行いながら慎重に手続きを進めるスタイルが一般的だったため、特許出願から登録まで5年以上かかるのが一般的でした。
しかし、バンダイでは 商品展開のスピードに合わせて、早ければ出願後半年で特許が登録されることもあります。最初は、このスピード感にとても驚きました。
バンダイでは早期審査制度を積極的に活用し、特許手続きをスピーディーに進めることで、市場に出る前から知財戦略を固めています。例えば、特許を出願して 3ヶ月後には商品が市場に出ることもあります。
このスピード感のギャップには戸惑いましたが、経験のサイクルが早いので、特許の価値をより深く理解できるようになり、知財担当者としての成長スピードも格段に上がる環境だと感じています。


前職では全ての案件を特許事務所に外注していました。そのため、特許事務所任せになり、1件1件の特許出願の中身を深く吟味することが少なかったように思います。
一方、バンダイでは 1件1件をしっかり検討し、実際に事業で活用できる特許を取得することに重点を置いているため、各特許の価値が高くなっていると感じています。
例えば、ある業界では 1,000件の特許を出願し、そのうち権利行使できるのは数件という感じですが、バンダイでは100件特許出願すれば、そのうち数件は実際に権利行使に使えます。そのため、出願・権利化・活用までの業務を一貫して経験する機会が多くなるという特徴があります。
急成長するカードゲーム関連事業と知財の役割




特にトレーディングカードゲーム(TCG)は近年人気が高く、ワンピースカードなどのヒット商品が生まれています。紙のカードを活用するため、材料費を抑えつつも収益性が高い事業として成長を続けています。


一方、バンダイではトレーディングカードのようなリアルな製品を出発点としつつ、カードをゲーム機に読み込ませてキャラクターを召喚する「データカードダス」や、メタバース空間上でオンライン対戦が楽しめる「BANDAI CARD GAMES Metaverse Lobby」など、リアルとデジタルを融合させた商品・サービスを提供しています。
もちろんソフトウェア上で完結する特許権も多くありますが、バンダイの得意分野であるソフトウェアと現実世界をつなぎ合わせる独自の技術・構造に関する特許も多数生まれています。
バンダイは、「おもちゃメーカー」と思われがちですが、実態は総合エンターテインメント企業です。フィジカルな体験を出発点としつつ、「面白いものにどんどん挑戦」して商品・サービスの分野を広げてきた会社なので、特定の分野に縛られず、幅広い知財業務に携わることができます。
もともと私は大学時代から知財の仕事を志しており、「あらゆる知的財産権に関わることができ、一番退屈しなそうな会社」という動機でバンダイに入社し、結局20年以上も在籍していますので、知財業界でも面白い体験ができる会社だと思います。


会議後、各事業部と個別に打ち合わせを行い、企画書や仕様書をもとにリスクチェックや特許戦略の立案を進めます。より初期段階から知財の視点を取り入れることで、強力な特許ポートフォリオを築くことができます。


2004年の「たまごっち」リバイバルでは特許権・意匠権・商標権による複合的な権利保全を行い、模倣品に対する厳しい姿勢もPRすることで、国内の模倣品流通をほぼ抑え込んでいます。
さらに現在では、大手ゲーム会社の訴訟事例がニュースで取り上げられることもあり、事業部の担当者もこれまで以上に特許リスクを意識するようになっています。事業部向けの知財研修も積極的に行っていますし、知財が社内で重要視される環境は整っていると感じます。
グローバルに展開する知財業務


特に米国、欧州、中国を中心に特許出願を行っていますが、今後は今まで出願経験のない国々にも出願する必要性が高まってくると考えています。


海外の特許公報や技術資料を確認する機会が多いため、英語の文書を読むことに抵抗がなければ十分に対応できます。
また、海外の代理人が定期的に訪問するため、英語でのコミュニケーションができるとさらに活躍の幅が広がります。とはいえ、現在は社内に英語が堪能なメンバーもいるため、必ずしも高度な会話力を求めているわけではありません。


特に中国では、現地の市場や模倣品の実態を自分の目で確認し、日本に帰国後の戦略に活かすことが重要になります。そのため、今後は半年に1回程度のペースで定期的に訪問する予定です。中国に関しては現地代理人が日本語を話せるので、中国語の問題はそこまで心配しなくても大丈夫です。

私自身も、米国・中国・シンガポールなどに近年訪問し、代理人や海外販社と直接打ち合わせをしています。


具体的には「カプセルステーション」というカプセルトイの機械が中国で大量に模倣され、見た目や機構までそっくりな偽物が出回っていました。そこで、特許権を行使し、行政摘発によって市場から撤去させました。この中国の行政摘発案件は、チーム全員で取り組んだプロジェクトだったので、特に印象に残っています。
我々の商品は海外市場でも人気があるため、今後も海外での特許・意匠・商標出願を積極的に行うことで、単に知的財産権を取得することで終わらせずに、実際に権利行使を行って模倣品対策を強化していく方針です。
キャリアパスと成長機会


また、特許・意匠チームだけでなく、商標・著作権チームもあるため、商標業務や著作権対応、模倣品対策などのキャリアパスを選ぶことも可能です。



特許業務はルーチンワークではなく、新しいアイデアや技術を発掘し、それを知財の視点から価値ある権利に育てていく仕事です。そのため、常に挑戦する姿勢や、柔軟な発想が求められます。
バンダイの知財部門で働く魅力とは


世間では「バンダイ=おもちゃの会社」というイメージが強いですが、実際には多岐にわたる技術分野をカバーしています。そのため、業務が単調にならず飽きないという点も大きなメリットです。
また、バンダイでは、特許を取得した技術が実際に商品に反映されるケースが多く、特許の価値を実感しやすい環境があるのも魅力の一つです。
例えば、ある業界では特許を出願しても、その技術が最終的にどこに使われているのか分からないことも多いですが、バンダイでは商品として世の中に出ることで、自分が関わった技術を確認することができます。

しかし、バンダイでは自分が魅力を感じて特許出願した技術が、実際に世の中に出るため、大きなやりがいを感じます。



毎日3種類の日替わり定食やカレー、麺類などバリエーション豊かなメニューを500円台で楽しめます。有名レストランとのコラボメニューもあり、飽きることがありません。
また、オフィス環境にも力を入れており、最上階にはカフェテラスがあり、1〜2階には商品ミュージアムもあります。会議スペースの改装など、快適に働ける環境が整っています。

応募を検討している方へのメッセージ

実際に、過去にプリキュアが好きで転職を希望された方もいました。自分が好きだったコンテンツに知財の視点で関わりたいという方にとっては、非常にやりがいのある職場だと思います。
また、バンダイでは特許や意匠業務を、発明発掘から権利化、権利行使、さらには事業ごとの知財戦略立案まで一通り経験できるため、キャリアプランの中で強みを築くことができます。さらに関心があれば、商標・著作権分野に携わることも可能です。多様な知財業務を経験したい方には、ぜひ挑戦してほしいですね。

理系・文系を問わず、多様な技術分野に触れながら、知財のスペシャリストを目指せます。大切なのは、新しいことを吸収し、前向きに取り組む姿勢。知財の仕事に興味がある方、好きなキャラクターや作品がある方、一緒にワクワクする未来を創っていきましょう!
電機メーカーで知財キャリアをスタート。入社して1年が経った頃に会社が吸収合併により消滅。転職活動を進める中でエンタメ業界の知財に興味を持ち、バンダイへ入社。以来、20年以上にわたり知財業務に携わり、現在は特許・意匠チームのマネージャーとして、全事業を統括。