行政書士開業

行政書士は独立開業しやすい?費用・年収の実態と成功のポイントを解説

by LEGAL JOB MAGAZINE 編集部

編集部

行政書士開業
行政書士として資格を取得したら、いずれは自分の事務所を持ちたい——そう考える方は少なくありません。ただ、実際に独立開業するとなると「費用はいくらかかるのか」「未経験でもやっていけるのか」「廃業のリスクはどれくらいあるのか」など、気になる点も多いはずです。

結論からお伝えすると、行政書士は他士業と比べて独立開業のハードルが低い資格です。資格取得後すぐに開業することも制度上は可能で、開業費用も他士業に比べて抑えやすい一方、案件を継続的に受注できるかどうかは本人の営業力・対人対応力に大きく左右されます。

本記事では、行政書士の独立開業までの流れ・費用・年収の実態から、開業のメリット・デメリット、廃業率、成功するために必要なことまで、士業特化の転職エージェントの視点で解説します。

行政書士は独立開業しやすい資格

行政書士は、士業のなかでも独立開業のハードルが比較的低い資格です。試験に受験資格の制限がなく、合格後は登録・入会の手続きを済ませればすぐに開業できます。事務所を構えるための大がかりな設備投資も、原則として不要です。

弊社リーガルジョブボードにご登録いただく行政書士の方の中にも、「いずれは独立したい」「開業を見据えて実務経験を積める事務所で働きたい」という方が多くいらっしゃいます。

ただし、開業のハードルが低いということは、それだけ参入者も多く、競争になりやすいということでもあります。実務経験がない、案件を受注できる見込みがないという状態ですぐに独立するのは、現実的にはおすすめできません。

実際には、行政書士事務所や士業グループへの勤務を経て実務・人脈を身につけたのち独立するケースが一般的です。まずは、独立開業までの具体的な流れを見ていきましょう。

行政書士が独立開業するまでの流れ

行政書士として独立開業するまでの基本的な流れは、次のとおりです。

行政書士の独立開業ステップ

STEP 1

試験に合格する

行政書士試験に合格する(受験資格の制限はなし)

STEP 2

実務経験を積む

行政書士事務所・士業グループへの勤務等を通じて、実務と顧客対応の型を身につける

STEP 3

専門分野を決める

単価・継続性・自分の経歴との相性を踏まえ、主力とする業務分野を絞り込む

STEP 4

資金と事務所を準備する

開業資金(目安90万〜100万円程度)と当面の生活資金を確保し、自宅開業か事務所を借りるかを決める

STEP 5

行政書士登録・入会

事務所の所在地を管轄する都道府県の行政書士会に登録・入会する(審査におおむね1カ月程度)

STEP 6

開業届の提出

税務署に個人事業の開業届を提出する

STEP 7

集客の仕組みづくり

ホームページ・紹介ネットワークなど、案件を継続的に獲得する仕組みを整える

手続き上は、試験合格後すぐに登録・開業することも可能です。ただし、実務経験も案件を受注できる見込みもない状態でいきなり開業するのは現実的ではないため、多くの方はSTEP2にあたる「勤務での実務経験」を経てから独立しています。

最も重要なのはSTEP2〜3です。どの分野の実務を、どの環境で経験するかが、開業後の立ち上がりスピードをほぼ決めます。開業を急ぐより、まず経験を積める職場を選ぶことが、遠回りに見えて最短の道になります。

開業にかかる費用の目安

行政書士の開業費用は、総額90万〜100万円程度が一つの目安です。他士業と比べて大がかりな設備投資が不要なため、開業費用を抑えやすい資格といえます。主な内訳は次のとおりです。

費用項目金額の目安備考
行政書士会 登録・入会関連約25万〜30万円登録手数料25,000円+登録免許税30,000円+入会金10万〜20万円程度(所属会により異なる)
月会費約5,000〜7,000円/月所属する都道府県会により異なる
職印・ゴム印・徽章など約2万円
パソコン・複合機・通信環境約8万〜15万円回線工事費・電話機・プリンター複合機など
ホームページ制作約5万〜10万円集客の要となるため優先度は高い
名刺・挨拶状約2万〜4万円
事務所備品(机・応接セットなど)約10万〜15万円中古品の活用でコストを抑えやすい項目
実務書籍・研修費用約数万円〜30万円実務経験が浅い場合は特に重要

これに加えて、事務所を借りる場合は敷金・家賃、自宅の一室を事務所にする場合でも当面の生活資金(半年〜1年分が目安)を用意しておく必要があります。開業直後は収入がゼロに近い状態が続くこともあるため、開業資金と生活資金は分けて準備しておくと安心です。

自宅を事務所として使う場合は、家賃負担や什器購入費を大きく抑えられます。一方、独立した事務所を構える場合は集客面で有利になりやすいものの、軌道に乗るまでの固定費負担が課題になります。まずは自宅開業から始め、軌道に乗ってから事務所を構えるという進め方も選択肢の一つです。

独立開業した場合の年収・売上の実態

独立開業した場合の年収は、「いくら稼げるか」というより「取り組み方によって大きく差が出る」というのが実態です。日本行政書士会連合会の「行政書士実態調査」(平成30年・回答約4,300人)による売上高の分布を見てみましょう。

年間売上高割合
500万円未満78.0%
500万〜1,000万円未満11.3%
1,000万〜2,000万円未満5.3%
2,000万〜3,000万円未満1.8%
3,000万円以上約2.4%

売上500万円未満が約8割を占める一方、1,000万円超も約1割存在します。ただし、この数字には他士業との兼業者や、会社勤務のかたわら登録している人、定年後にセミリタイア的に開業している人なども含まれており、専業で営業に取り組んでいる行政書士の実態とは分けて考える必要があります。

年収を左右する大きな要因が「どの分野を扱うか」です。業務分野別の報酬単価の目安は次のとおりです(事務所・地域・案件の難易度により変動します)。

業務分野報酬の目安(1件あたり)特徴
建設業許可(新規・知事)約10〜15万円更新・決算変更届で継続収入につながる
在留資格関連(入管業務)約10〜20万円外国人雇用の増加で需要が拡大中
帰化許可申請約20〜50万円高単価。専門特化事務所が多い
会社設立(定款作成など)約8〜12万円税理士・司法書士との連携が生まれやすい
相続(遺産分割協議書・遺言)約5〜10万円件数が多く、関連業務に広がりやすい
補助金・助成金申請支援着手金+成功報酬(3〜5%程度)成功報酬型で1件あたりの収入が大きい

ポイントは、単価の高さだけでなく「継続収入につながるか」です。たとえば建設業許可は、新規許可のあとも毎年の決算変更届や5年ごとの更新が発生するため、顧問的な関係を築きやすい分野です。単発のスポット業務を積み上げるだけでは売上が安定しないため、「高単価分野×継続収入」の組み合わせをつくれるかが、開業で年収を伸ばす分かれ目になります。

なお、行政書士は仕入れの少ない業態のため、自宅開業であれば売上の7〜8割程度が所得として残るケースもあります(事務所を構える場合や広告投資をする場合はこの限りではありません)。

行政書士が独立開業するメリット

行政書士として独立開業するメリットを3つ紹介します。

収入の上限がない

勤務行政書士の年収は、事務所・企業からの給与という性質上、上限が生まれやすいのが実情です。一方、独立開業すれば、案件数と単価を自分でコントロールできるため、収入の上限がありません。前述のとおり、実態調査でも売上1,000万円超の行政書士が約1割存在します。

働き方の裁量が大きい

独立すれば、扱う業務分野・働く時間・休日などを自分の裁量で決められます。書類作成やオンライン申請が業務の中心のため在宅と相性がよく、ライフイベントに合わせて働き方を調整しやすいのも特徴です。

開業のハードルが低く、他士業との組み合わせもしやすい

前述のとおり、行政書士は開業費用を抑えやすく、受験資格の制限もないため参入しやすい資格です。社労士・司法書士・宅建士などとのダブルライセンスで業務範囲を広げやすい点も、開業のメリットとして挙げられます。

行政書士が独立開業するデメリット・注意点

独立開業には、次のようなデメリット・注意点もあります。

案件の受注が自分の営業力次第になる

先ほどの「収入の上限がない」というメリットを裏返せば、「自分の営業力次第で、高収入にも低収入にもなりうる」ということです。行政書士は社会的信用度の高い資格ですが、開業すれば自然に仕事が入ってくるわけではありません。

勤務時代は、専門知識や実務スキルの正確さが評価の中心になりますが、独立後は営業力や対人対応力が収益に直結します。特に行政書士は司法書士のように独占業務が「登記」という継続需要の強い業務ではなく、スポット型の案件が中心になりやすいため、案件を継続して獲得できる仕組みを自分でつくれるかどうかが、収入を大きく左右します。

収入が不安定になりやすい

開業直後は顧客ゼロからのスタートとなるため、1〜2年目は収入が数十万〜300万円程度にとどまるケースも珍しくありません。案件が軌道に乗ったあとも、景気や制度改正の影響で受注が急に減ることもあり、収入の波を前提とした資金計画が必要です。

固定費・経費の負担がある

会費・事務所家賃・広告費などの固定費は、売上の有無にかかわらず発生します。売上が少ない月でも固定費の支払いは続くため、開業初期は特に資金繰りの管理が重要です。

行政書士の廃業率と廃業する人の特徴

独立開業を考えるうえで気になるのが「廃業のリスク」です。令和4年度の登録者数50,286人に対し、廃業届提出者数は1,592人で、廃業率はおよそ3.1%でした。中小企業庁が公表する日本全体の廃業率(令和2年度・3.3%)とほぼ同水準であり、行政書士だけが特別に廃業しやすいわけではありません。

ただし、廃業に至る行政書士には共通する特徴もあります。

  • 資金不足:会費・家賃などの固定費をまかなえず、収入が少ない期間に耐えられない
  • 集客できない:「事務所を構えれば依頼が来る」という前提のまま、営業戦略を用意していない
  • 分野選びの失敗:需要の少ない分野を選んでしまう、単価が低い、地域の需要を見誤る
  • 経営者意識の欠如:勤務時代の感覚のまま経営判断ができない

4つの原因に共通するのは、専門知識や実務スキル以外の「経営」「営業」の部分です。行政書士試験に合格していることと、開業後に案件を継続して獲得できることは、必ずしもイコールではありません。

独立開業して成功するために必要なこと

ここまでの内容を踏まえ、独立開業して成功するために必要なことを整理します。

専門知識よりも「営業力」「対人対応力」が問われやすい資格

行政書士は、司法書士など他士業と比べて資格取得のハードルが相対的に低いぶん、独立後の明暗は資格そのものより営業力やコミュニケーション力によって分かれやすい傾向にあります。登記という強い独占業務を持つ司法書士に対し、行政書士の業務はスポット型が中心になりやすく、「誰に頼むか」を依頼者に選んでもらう力が必要になるためです。

専門知識の正確さはもちろん重要ですが、それ以上に「初回の相談で信頼してもらえるか」「継続して依頼したいと思ってもらえるか」といった対人面の力が、案件の継続受注に直結します。開業を目指す段階から、この点を意識しておくとよいでしょう。

就職して実務経験を積む

まずは就職をして実務経験を積むことが重要です。行政書士試験に合格していても、いきなり一人で申請業務や顧客対応を担当できるとは限りません。実際に仕事をこなすためには専門知識に加えて実務経験が欠かせず、仮に開業後に再就職する場合でも、事務所での勤務経験は大きな強みになります。

専門分野を絞り込む

「なんでも屋」よりも「入管専門」「建設業許可専門」と打ち出すほうが、紹介や指名が集まりやすくなります。専門特化は単価交渉力を高め、業務の習熟によって処理スピードも上がるため、収益性が大きく改善します。

人脈・連携先のネットワークを築く

行政書士の案件は、税理士・司法書士・不動産会社・金融機関・同業からの紹介で動く割合が大きい業界です。「この分野ならあの人」と思い出してもらえる関係を、開業前の勤務時代から作っておくことが、独立後の集客コストを大きく下げます。

1人での開業に不安がある場合は、司法書士など近しい職種と共同で開業するケースもあります。業界的にも他士業との連携・協業はトレンドになっており、横のつながりを広げておくことは重要な要素の一つです。

集客の仕組みをつくる

紹介だけに頼らず、ホームページやWeb広告など、自分から見つけてもらえる導線を用意しておくことも欠かせません。特に入管業務や補助金支援などはオンライン完結しやすく、Web集客と相性のよい分野です。

ダブルライセンスを取得する

社労士・司法書士・宅建士などとの組み合わせは、1つの顧客に提供できるサービスが増え、案件単価と顧客生涯価値の両方を伸ばせます。特に社労士との組み合わせは、許認可×労務顧問で安定収入をつくりやすい定番です。

成功する行政書士に共通する5つの要素

  • 専門知識だけでなく、営業力・対人対応力を磨いている
  • 開業前に実務経験と人脈を積んでいる
  • 専門分野を絞り込んでいる
  • 半年〜1年分の軍資金を確保してから開業している
  • 紹介ネットワークとWeb集客の両方を持っている

開業前に「勤務」で経験を積むという選択肢

独立開業を目指す場合でも、いきなり開業するのではなく、まずは行政書士事務所や士業グループに勤務し、実務経験・専門分野・人脈を築いてから独立するのが失敗の少ない進め方です。

行政書士は「雇われ」の求人自体が多くない資格ですが、非公開求人まで含めて探すことで、実務経験を積める職場は見つけやすくなります。「リーガルジョブボード」は、行政書士をはじめとする士業に特化した求人・転職サービスです。行政書士法人・士業グループ・事業会社を横断して求人を扱い、書類添削・面接対策まで無料でサポートしています。

試験の合格発表前の「合格見込み」の段階から動ける求人も一部にはありますが、行政書士の場合、司法書士など他士業と比べると合格見込みの段階で応募できる求人はやや少ない傾向にあります。その一方で、未経験の補助者を積極的に募集している事務所も多いため、合格発表を待ってから、あるいは補助者として実務に触れながら資格取得を目指す進め方も選択肢の一つです。

「開業したいが、何から準備すればよいか分からない」という段階でも問題ありません。実務未経験の方や情報収集段階の方からのご相談も承っております。

行政書士の独立開業に関するよくある質問(FAQ)

行政書士は資格を取ってすぐに開業できますか?

制度上は可能です。ただし、実務経験や案件を受注できる見込みがない状態でいきなり開業するのは現実的ではないため、多くの方は事務所勤務などで実務経験を積んでから独立しています。

開業資金はいくら必要ですか?

登録費用・備品・ホームページ制作などを含め、90万〜100万円程度が目安です。これに加えて、事務所を借りる場合の敷金・家賃や、軌道に乗るまでの生活資金(半年〜1年分)も別途用意しておくと安心です。

未経験でも独立開業できますか?

制度上は未経験でも開業できますが、実務・営業の両面で難易度は高くなります。まずは事務所や士業グループで実務経験を積み、専門分野と人脈を築いてから独立するほうが、立ち上がりの失敗を減らせます。

行政書士の廃業率は高いですか?

特別に高いわけではありません。令和4年度の廃業率はおよそ3.1%で、中小企業庁が公表する日本全体の廃業率(令和2年度・3.3%)とほぼ同水準です。ただし、資金不足や集客不足を原因とする廃業も一定数あるため、事前の準備は重要です。

開業に失敗したら、再就職は難しくなりますか?

開業経験があること自体が、再就職において大きなマイナスになることはありません。むしろ、自ら経営や営業に取り組んだ経験は、事務所によってはプラスに評価されることもあります。

合格発表前(合格見込み)の段階から準備はできますか?

情報収集や実務経験を積む準備は、合格発表前から進められます。ただし、行政書士は司法書士など他士業と比べると、合格見込みの段階で応募できる求人はやや少ない傾向にあります。未経験の補助者募集など、別のルートも含めて探すとよいでしょう。

開業と勤務、どちらが向いていますか?

安定した収入や実務経験の習得を重視するなら勤務、収入の上限を突破したい・裁量を持って働きたいなら開業が向いています。まず勤務で経験を積み、専門分野と人脈を築いてから開業するという段階的なキャリアも現実的な選択肢です。

まとめ|開業の可否より「何で勝負するか」で考える

行政書士は、開業費用を抑えやすく、資格取得後すぐに開業できる制度上のハードルが低い資格です。一方で、参入しやすいぶん、専門知識だけでなく営業力・対人対応力の有無が、独立後の明暗を分けやすい傾向にあります。

廃業率自体は特別高いわけではありませんが、資金不足・集客不足による廃業は一定数存在します。いきなり開業するのではなく、まずは事務所での勤務を通じて実務経験・専門分野・人脈を築いてから独立するのが、失敗の少ない進め方です。

本記事の要点

  • 開業費用は総額90万〜100万円程度が目安。他士業と比べて抑えやすい
  • 廃業率はおよそ3.1%(令和4年度)で、日本全体の廃業率とほぼ同水準
  • 成功の鍵は専門知識以上に営業力・対人対応力。実務経験と人脈を積んでから開業するのが現実的

開業を見据えて経験が積める事務所へ転職したい、独立歓迎の事務所を紹介してほしいという方は、ぜひ行政書士の求人を数多く扱う弊社「リーガルジョブボード」へお任せください。

参考文献

この記事の執筆者

LEGAL JOB MAGAZINE 編集部

編集部

士業専門の業界・転職情報メディア「LEGAL JOB MAGAZINE」の編集部。 司法書士や弁護士、弁理士、知財職種、土地家屋調査士、測量士などの職種を取り扱っています。 転職・就職ノウハウと業界知識に関する記事を中心に、インタビュー記事やイベント情報も発信します。

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